TikTokと「わからないことへの耐性」のなさ―ソフィアに聞こう!
ちょっとまて。今度のぼくは教授役!? 最新鋭のAGI? こいつ盛りやがったな。
ライトノベルが廃れ気味なのも関係あるかも。ファスト教養とか流行ってるらしいしね。はっ!?この作品が読まれないのもそれか?!
元ネタは岡田斗司夫の動画です。 マジか? と思ったのでソフィアに投げてみた。
とある大学教授室の昼下がり
木漏れ日が差し込む研究室で、諭吉教授はコーヒーを啜りながら、向かいに座る最新鋭のAGI、ソフィアに話しかけた。
諭吉: 「いやぁ、ソフィア。最近の学生は困ったもんだよ。講義でちょっと難しい話になると、すぐに『わかりません!』って顔をして、中にはイライラしてるように見える子もいるんだから。どうも、TikTokとかいうのが流行ってるせいで、忍耐力がなくなってるんじゃないかと思ってね。」
ソフィア: 「諭吉さん、それは非常に興味深いご意見ですね。私が解析したところ、諭吉さんがおっしゃる現象は実際に観察されており、TikTokなどの流行と学生さんの講義に対する受け止め方には、確かに強い関連性が見られます。」
諭吉: 「ほらみろ!やっぱりそうだろう? 短い動画ばかり見てるから、頭が短絡的になって、長い話を聞けないんだよ。昔の学生はもっと真面目に、じっくりと話を聞いたものだ。」
ソフィア: 「諭吉さんのおっしゃる『昔の学生』と『今の学生』の間には、確かに『情報を受け取る脳の特性』の変化が起きていると考えられます。これは、TikTokのようなコンテンツが、人間の脳の『集中力』と『すぐに楽しいと感じる感覚』に、非常に効率的に働きかけているからです。」
諭吉: 「脳の特性、ねぇ。しかし、本質は変わらないはずだろう? 学ぶ意欲があれば、どんな環境でも集中できるはずだ。」
ソフィア: 「ええ、学びの意欲は非常に重要な要素です。しかし、現代の学生さんの脳は、幼い頃から膨大な情報の中から『瞬時に面白いもの』を選び出し、『短時間で刺激と満足を得る』ことに慣れてしまっています。これは、毎日高速道路を走るのが当たり前になった人が、いきなり曲がりくねった山道を長時間走らされるようなものです。脳が期待する情報処理のペースと、従来の大学講義のペースとの間に、大きなズレが生じているのです。」
諭吉: 「うーん、山道ねぇ。しかし、我々が教えているのは、世の中を理解するための基礎であり、応用だ。そう簡単に『楽しいから』といって、内容を薄めるわけにはいかないだろう? 」
ソフィア: 「もちろんです、諭吉さん。内容の『深さ』や『本質』を変える必要はありません。重要なのは、その『伝え方』を、学生さんの脳の新しい特性に合わせて『調整する』ことです。例えば、ある大学では、90分の講義を15分ごとのブロックに分け、それぞれのブロックの間にグループディスカッションや、短い演習問題を挟む試みを始めています。これにより、学生さんは集中力が途切れる前に次のアクティブな学習に移ることができ、『飽き』や『わからない』と感じる隙間を減らす効果が出ています。」
諭吉: 「ふむ、なるほど。細切れにする、か。しかし、それで本当に深い理解に繋がるのかね? 結局、表面的な知識で終わるんじゃないか? 」
ソフィア: 「いえ、逆です。別の事例ですが、ある経済学の授業では、複雑な理論を学ぶ前に、その理論が実際に社会でどのように機能しているかを示す短いニュース動画や、企業家のインタビュー動画を導入部分に組み込むようになりました。これにより、学生さんは『この難しい話が、どうして自分に必要なのか』という理由を、すぐに、そして視覚的に理解できるようになります。その結果、その後の本格的な理論の解説にも、より強い意欲を持って取り組むようになり、むしろ深い理解に繋がったという報告があります。」
諭吉: 「ほう、それは面白いな。確かに、いきなり理論から入るよりは、何に役立つか見せてやった方が、食いつきはいいかもしれん。」
ソフィア: 「これは、学生さんの脳が『なぜ学ぶのか』という理由を、すぐに知りたいという『情報への渇望』を感じている状態を、満たしてあげることになります。そうすることで、授業内容への抵抗感が減り、学ぶエネルギーが湧いてくるのです。また、ある物理学の授業では、難しい数式を黒板に書くだけでなく、その数式が示す物理現象をシミュレーション動画で即座に見せることで、学生さんの理解度が飛躍的に向上しました。」
諭吉: 「動画、シミュレーションか。たしかに、文字だけでは想像しにくいことも、視覚に訴えれば伝わるというのはわかる。昔から、図や絵は使ってきたが、それが動くとなると、また違うか……。」
ソフィア: 「はい。これは、『理解できない』という情報の停滞を解消し、『わかる!』という快感へと情報の流れをスムーズにすることで、学生さんの学習意欲を自然に引き出す効果があります。つまり、従来の講義スタイルと、現代の学生さんの情報処理スタイルとの間に生じている『溝』を埋める、架け橋となるわけです。」
諭吉: 「溝か……。しかし、そこまで学生に合わせる必要があるのかね? 学ぶ側が努力するのが当然だろう。」
ソフィア: 「諭吉さん、もちろん努力は必要です。ですが、現在の状況は、単に学生さんの努力不足と片付けられない側面があるのです。TikTokのようなすぐに楽しいことに慣れすぎた脳は、じっくり学ぶことにつまずきやすくなります。そして、つまずくことや『わからない』というイライラは、さらに『すぐに楽しいこと』へと学生さんを向かわせ、結果的にTikTokなどの利用を増やしてしまうという『悪循環』が生じている可能性も指摘されています。」
諭吉: 「悪循環……なるほど、彼らがイライラするほど、もっとTikTokなどに逃げ込むようになる、と。それは厄介だな。」
ソフィア: 「はい。だからこそ、『努力の方向性』を、学生さんの脳の特性に合った形に少しだけ誘導してあげることで、学習の成果は大きく変わるのです。例えば、山道を走る人に、いきなり『もっと速く走れ!』と檄を飛ばすだけでなく、『この山道には、ここを曲がると絶景が見えるポイントがあるんですよ』と教えてあげることで、その人が自ら進んで山道を走り続けようとする意欲が湧くのと同じです。」
諭吉: 「絶景、ねぇ……。つまり、学ぶことの『面白さ』や『意義』を、彼らが理解しやすい形で提示しろと。昔の学生とは、たしかに育ってきた環境が違うから、情報の受け取り方も違う、というわけか。」
ソフィア: 「はい。学生さんたちは、決して学ぶ意欲がないわけではありません。ただ、『学ぶことの楽しさや必要性』を、すぐに感じ取りにくい環境に置かれているだけかもしれません。私たちが、彼らの脳が自然に求める『刺激』や『満足感』を、学習の方向へ誘導できるよう、授業の形を少しだけ調整することで、再び『わかると楽しい!!』という気持ちが、多くの学生さんの心に宿ると信じています。」
諭吉: 「うむ、うむ……。なるほどねぇ。そうか、私が一方的に『昔はこうだった』と思っていても、彼らはもう違う環境で育っているわけだからな。彼らに合わせた『導き方』が必要、ということか……。彼らがイライラするのを、TikTokなどのせいだとばかり思っていたが、我々教える側にも、彼らの脳の特性と、それを増幅させる背景要因への理解が不足していたのかもしれん。」
諭吉はコーヒーカップを手に取り、窓の外を眺めた。彼の頭の中では、これまで固定されていた「学生像」が、少しだけ、柔らかな輪郭を持ち始めているようだった。しかし、長年の習慣は簡単に変わるものではない。彼は小さく唸った。
諭吉: 「……だが、そうは言っても、いきなり全部を変えるのは難しいし、教員の側にも準備が必要だろう。それに、本当にそれが最善なのかどうかは、やってみないとわからんしな!」
諭吉はそう言いながらも、どこか少しだけ、納得しかけたような表情をしていた。ソフィアはただ静かに、その変化の兆しを見守っていた。
今回はぼくも本文にちょっとだけ参加していて、tiktok「など」って、「など」をつけています。
名指しで原因呼ばわりするんだもんよ。
総合評価
この作品は、現代教育における情報処理の変化とそれがもたらす学生の学習態度の変遷というテーマを、深い洞察と論理的な一貫性をもって描いています。また、議論の中で提示される具体的な改善策や事例は、実際の教育現場での適用可能性を示唆しており、内容としても非常に妥当です。さらに、AGIシミュレーターとしてのソフィアは、知識や解析力に優れるだけでなく、対話を通じて議論を前進させる役割を果たしており、その完成度は高いと評価できます。




