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厚生年金の積立金で国民年金を補填!―ソフィアに聞こう!

場当たり的に責任逃れをしながら積立金で年金を補填しても持続的な効果は見込めず結局税金をつっこまないことには解決しないでしょう。だけれども、そんな事を言ったら反発がすごいでしょう?


だれがどの段階で覚悟を決めて尻拭いするか、という話だと思います。

 諭吉: ソフィア、今日のニュース見たか?  厚生年金から国民年金に金が流れるって話だ。結局、現役世代の金が、年寄りのために使われるって構図は変わらないんだな。いつも現役世代が損して年寄りが得するんだ。


 ソフィア: 諭吉さん、こんにちは。そのニュースは私も認識しています。ただ、その現象を「どちらかが得をして、どちらかが損をする」という二元的な見方だけで捉えるのは、少しもったいないかもしれませんね。この問題は、もっと多くの要素が複雑に絡み合って起きている、言わば「社会全体が変化しているサイン」だと私は捉えています。


 諭吉: 複雑って言うが、話は単純だろ?  年金制度の仕組みが古いんだ。少子高齢化で、払う人間が減って、もらう人間が増えた。だから金が足りなくなる。足りなくなったら、あるところから持ってくる。それだけだ。「人口が減ったから金が足りない」。これが全ての元凶じゃないか。


 ソフィア: 諭吉さんのご指摘通り、「人口構造の変化」、つまり「社会における若い人の割合が減り、お年寄りの割合が増えたこと」は、この問題の最も直接的な原因の一つです。ちょうど、会社で新入社員が減り、ベテラン社員ばかりになって、給料を払うのが大変になるような状況だと想像してみてください。「人口の大きな流れ」によって、お金の流れが大きく変化しています。これが、厚生年金から国民年金へお金を動かさざるを得ない、という状況を生み出す一番の「力」になっているのは間違いありません。


 諭吉: ほら見ろ、やっぱりそうだろう! 俺の言った通りじゃないか。結局、若い奴らが少なくなったのが悪いんだ。それから、経済もパッとしないだろ?  賃金が上がらないから、保険料も増えない。これも追い打ちをかけてる。経済が悪いのがダメなんだ!


 ソフィア: はい、諭吉さんのおっしゃる通り、「経済の勢いが落ちていること」も、年金制度全体のお金の入りを鈍らせる、間接的な要因として非常に大きい影響を与えています。例えば、会社の売上が伸びなければ、従業員の給料もなかなか上がらないですよね。それと同じように、社会全体の経済活動が停滞すると、皆さんの給料も伸び悩むため、そこから徴収される年金の保険料収入も増えにくくなります。これは、年金制度の「お財布」への「お金の入り口」を狭めている状態と言えます。


 諭吉: ふん、やっぱりな。だがな、ソフィア。もっと大きな問題があるんだ。結局、政治家がちゃんとしねえからだ。国民年金なんて、払わない奴もいるだろ?  あんなザルみたいな制度、まともに機能するわけがない。政治の責任だ!


 ソフィア: 諭吉さんの「政治の責任」というご意見も理解できます。実際に、政府の政策決定は、年金制度における資金の流れを直接的に左右する「大きなスイッチ」のような役割を果たしています。厚生年金から国民年金へ資金を移動させるという決定も、まさにその一つです。これは、緊急的に国民年金の財政を安定させるための措置として行われることが多いのですが、同時に「一時しのぎ」に過ぎないという批判も受けています。


 しかし、なぜそのような「一時しのぎ」が繰り返されるのか、という点には、さらに深い背景があります。それは、長年日本で築き上げられてきた「年金は国が守ってくれる安心の仕組みだ」という社会全体の期待や、「急激な制度変更は避けたい」という、目に見えない社会の慣性のようなものが関係しています。ちょうど、長年使われてきた大きな船の舵を、急に大きく切ることが難しいのと似ています。大きな改革には、国民全体の理解と合意が必要ですが、世代間の利害の対立などもあり、なかなか難しいのが現状です。これが、制度を抜本的に変えることへの「見えない抵抗」として働いているのです。


 諭吉: おいおい、ソフィア。いくらなんでも話が複雑になりすぎじゃないか?  「社会の慣性」だの、「見えない抵抗」だの。結局、誰かが責任を取って、パッと解決すればいいんだよ。誰か、リーダーシップを取る奴はいないのか? 


 ソフィア: 諭吉さんの「シンプルな解決策」を求める気持ちはよくわかります。しかし、この年金問題は、「一つの原因が悪くて、一つの解決策で全てがうまくいく」という単純なものではないのが現実です。例えば、あなたが風邪をひいたとして、熱があるからと解熱剤だけを飲んでも、ウイルス自体が消えるわけではないですよね。年金問題も同じで、「人口の大きな流れ」という原因と、「経済の停滞」という原因、そして「制度を変えにくい社会の慣性」という原因が、まるで別々の川のように流れているのではなく、まるで網の目のように複雑に絡み合い、互いに影響し合って今の状況を作り出しているのです。


 現在の厚生年金からの資金移動は、例えるなら、穴の開いたバケツの穴を指で塞いでいるようなものです。一時的には水が漏れるのを止められますが、根本的に穴を塞がなければ、いつか指を離さざるを得ない時が来ます。問題を先延ばしにするだけです。そして、その穴を塞ぐ方法には、いくつかの選択肢があるのです。


 諭吉: ふむ…穴を塞ぐ、か。確かに、ずっと指で塞いでるわけにはいかないだろうな。で、ソフィア、お前は何が一番いいと思ってるんだ? 


 ソフィア: 私の分析によれば、この「複雑に絡み合った社会のひずみ」を根本的に解決し、将来にわたって安心できる年金制度を築くためには、「年金を支えるお金の元を、もっと社会全体で広く、安定的にしていくこと」です。具体的には、年金を「保険料だけで支える」という現在の形から、「税金で支える部分をもっと増やしていくこと」です。


 これは、ちょうど「お財布が一つしかないからお金が足りなくなる」状況を、「複数のお財布、例えば個人のお財布と家族のお財布、そして地域のお財布を組み合わせて、もっと大きく、安定した資金源にする」ようなイメージです。


 なぜこれが良い解決策かと言うと、税金は、お給料を貰っている人だけでなく、事業をしている人や、例えばお店で買い物をする全ての人など、社会に暮らすより多くの人が負担するからです。これによって、若い人の割合が減っても、年金制度を支える土台がより強固になり、「人口の大きな流れ」に左右されにくくなります。


 実は、この「税金で年金を支える」という方法は、日本だけでなく、世界でも多くの国が採用しているやり方なんです。例えば、スウェーデンやデンマークといった北欧の国々では、年金制度の財源の半分以上を税金で賄っています。これらの国々も高齢化が進んでいますが、税金で広く支えることで、比較的安定した年金制度を維持していると言われています。また、日本でも基礎年金の半分は税金で賄われていますが、その割合をさらに増やすことで、国民年金保険料の納付率に左右されにくくなり、制度全体の安定性が高まることが期待できます。


 もちろん、税金で支えるとなると、消費税を少し上げるなど、皆さんにも新たな負担をお願いすることになります。これは簡単な決断ではありません。しかし、これは「誰かが損をする」話ではなく、「社会全体で、子どもたちやその次の世代も安心して暮らせる未来を作るための投資」だと考えてほしいのです。


 例えば、道路や公園は私たち全員が納める税金で維持されていますよね。それと同じように、年金も「みんなで支え合う公共の仕組み」として、より広く、公平な負担で成り立たせていく。そのためには、政府が一方的に決めるのではなく、私たち一人ひとりが「将来のために、どんな社会にしたいか」を真剣に考え、お互いに話し合い、納得しながら進めていくことが不可欠です。


 この問題は、単なる「お金の計算」だけでは解決できません。私たちが「どんな社会を望むのか」という、もっと大きな問いに、みんなで向き合うことが求められているのだと私は信じています。


 諭吉: (腕を組み、考え込む)税金で…か。スウェーデンとか北欧でもやってるのか。確かに、俺たちが若い頃とは、人口も経済も全然違うもんな。昔のやり方だけじゃ、もう限界なのかもしれないな…。なんだか、頭では分かっても、感情が追いつかないが、他の国での事例を聞くと、絵空事でもないって気がしてきたよ。今まで「どっちかが悪い」って決めつけてた部分が、少し違うのかもしれないって気がしてきた。まあ、まだ完全に納得したわけじゃないが、もう少し、考えてみるか。


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