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嫉妬





 


『嫉妬』という言葉を、あなたは使いました。


残念ながら、人を生かしているのは残酷とも言える無意識です。当の本人すら自覚できない『生存への執着』です。


古来、人間は異常とも言える自己生存本能の昂進に苦しんできました。そして多くの人々はそれを可能な限り抑え、浄化しようとしてきました。


人は、生きるためには、自らが生き延びるために邪魔になるものすべてを抹殺し、殺戮する。それが人間の本性です。そしてその本性が最もわかりやすく現れたもの。それが『嫉妬』です。


僕も、あなたも、嫉妬と無縁では、決して、ありません。それは、僕たちが「人間」だからです。



けれど僕は、あなたの嫉妬を、嫉妬を隠さないあなたを、立派だと思います。やはりあなたは、素直で明るくてまっすぐな、とても可愛い人です。


なぜなら嫉妬は、健全な人間であることの証明でもあるからです。むしろ、あたかも嫉妬がこの世にひとつとして存在しないかのように振る舞うことは『偽善』に近い。


更に言うなら、人間の崇高な祈り、願い、希望、美しさ、救い、といったものは ――――信じられないことかもしれませんが―――― 嫉妬が無ければ決して生まれなかった。


人は、決して『嫉妬』から逃れることはできません。嫉妬の炎を消すことは、人間にはできない。それが人間の宿命です。


だからこそ過去の偉大な文学の多くはその宿命を描き、その苦しみを直視し、逃れることのできない炎に焦がされながらその奥深くまで分け入り、「苦しみを抱きつつも可能な限り善く生きようと七転八倒する人間の姿」を様々に物語ってきたのです。


多くの宗教にとってもそれは避けて通ることのできない主題です。嫉妬がドグマの中心にあるかのように思えるものすらあります。


けれど人間の宿命は人間が人間の問題として決着を付けなければなりません。人間は自ら行ったことを決して「神」や「太陽」のせいにしてはならないと僕は思っています。


あなたへ祝福のあらんことを祈ります。


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