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忘れない理由
ロマンチストというより、ただ単に空想家、夢想家なのでしょう。本を読んでもストーリーを追うのではなくストーリーの中に自分を紛れ込ませて新しい夢を見るのです。
あなたの好きな夕暮れの空に茜色に浮かぶ雲の中にも私は夢を見てしまうのですあの雲の彼方にいつか置き忘れた私の気持ちと、私を思ってくれた人の気持ちが今もそのままの姿で存在している。そんな夢を。
それはきっとあの魔法の言葉たちと同じです。
私はあなたの作品にそのような言葉を見つけると心が浮き立ちます。
私はもう決して若くはありません。けれど、いえ、だからこそ、あの日夢見た美しい世界を再び目にしたいと願うのかもしれません。
美しい世界……
それは誰もが心の中に持っています。もちろんあなたの作品の中にも。そして私が書く物語の中にも。自分のすべてを捧げるために。自らの全存在をかけて描くからこそ美しい。
たとえば互いが自身の真実をかけて求め合ったからこそ深く傷ついた恋。自分のすべてを捧げ、相手のすべてを奪う恋を人は忘れることはないでしょう。
なぜ忘れることはないのか。それはあなたがあなた自身の恋を忘れない理由と同じです。
私は、あなたと同じように真実へ向かって物語を書きたいと願うのです。
真実を尊ぶあなたへ、尊敬と感謝の気持ちを捧げます。




