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月の光
満ちていく月の、輝きと闇が等分になる一夜。
きっとあなたから見た僕の姿は、半分は闇で、半分は光。
そうではありませんか?
あなたの好きな「ベルガマスク組曲」。どの曲も素敵ですね。ひとつひとつの音が真珠のように気品があって気高くて。立ち居振る舞いの美しい人の姿を見るようです。
僕は「ピアノのために」の第三曲「トッカータ」も好きです。ずいぶん前のことですが、ある著名なピアニストがぶっきらぼうに弾いていました。『狂気を帯びた暗い情熱』とでも言うのでしょうか。彼の演奏は今まで聞いたあらゆる「トッカータ」とは異なる、悪魔的で破壊的な美しい音楽。
その音色はピアノとはまったく別の、遠い未来にしか存在しない謎の楽器。魅力的な響きを今も忘れることができません。
美しい世界はこの世界の中にあります。
天と地の間に、まるで入れ子細工のような『別世界』が確かに存在します。
僕はあなたに美しい世界を見ています。あなたは太陽に照らされて満月のように美しく輝いている。
けれど、いえ、だからこそあなたが光である時、僕は闇になりましょう。
そして、あなたが闇になれば僕は光に。




