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美術館にて
夢を見ました。
吹き抜けのエントランスに大理石の水盤。清らかな水が溢れ、誰も居ない広い空間に静かな水音が満ちています。
僕は白い石のベンチに腰掛けてあなたを待っています。白いワンピースを着たあなたが現れて、僕たちはベンチに並んで座ります。
手を取り合って高い天井に響く水音を聞いているうちにあなたと僕はいつのまにか十七歳の頃に戻ってしまいます。
ふたりは互いを見て微笑む。
「これからは夢の中をどこまでもふたりで旅をしよう。それが僕たちの真実だから」
そして僕たちは夢の中で口づけを交わしてさようならをする。遙か遠いあの日のように。
そんな他愛もない夢でした。けれど本当にあなたに会ったような気がしています。この手にあなたのぬくもりが残っているような気がするのです。