二十歳
「二十歳の原点」を読んでいます。高校生の頃、同じ部活動に所属していた女性からもらったこの本には、彼女が鉛筆や赤インクで引いた線が残っています。彼女の冷たく美しい表情ときちんと折り目の付いた青い制服を、この本を読み返す度に思い出します。
「二十歳の原点」を書いた作者も、この本を勧めてくれた女性も既に亡くなりました。
けれどあなたは生きた。結果として生きることを選んだのです。運命があなたを限りなく死に近づけた時、あなたは思いませんでしたか? このまま死んでしまったらどんなにか楽になるだろうと。
あなたのように実際に経験した人でなければ、一途な恋が破れる辛さはとても分からない。優しくて一途な人ほどその苦しみは大きいのです。
だから…… あなたは苦しんでもいい。あなたには苦しむ資格があります。苦しまなければ決して知ることのできない美しいことがこの世にはたくさんあるのですから。
そしてあなたは既に苦しみの向こう側にある世界も知っています。それはきっと本当の愛なのだと思います。おそらく、それこそが『苦しまなければ決して知ることのできない美しい世界』なのでしょう。
いろいろなことを打ち明けるにはとても勇気がいったはずです。
あなたの胸の内を思うと、僕は胸が熱くなって泣いてしまいました。