大正解
「ほら、《警備官》は《警察官》とちがって所持する武器に規制がないから、本人がいちばんつかいやすいもの持っていいわけ」
はおったシャツをひらいたゲイリーは、脇を通るベルトにナイフをおさめたケースをつける。
「職業病ってやつ?どこに行くにも、その『つかいやすいもの』もいっしょに持ってちゃうんだよね。ウィルも持ってきてるんじゃない」
「『でっかい銃』を?」
「とりあえず明日来るコルボクは、ぜったいに弓矢をもってくるとだろうけど」ジョーもきっと勝負しようっていわれるはずだから、と背をたたくと厨房をでていった。
「ちなみに、おれは銃は持ってねえし、明日来るジャンも持ってこねえだろ」
「 っ!?」
すっかり存在を忘れていたケンが、冷蔵庫によりかかりながら、にやけておれをみていた。
「なあ、マックス、 ―― もしなにか困ってることがあるなら、おれたちにはなしてみないか?」
棚にグラスをきれいにおさめるのをあきらめたジョーが、声をおとしてふりむく。
「・・・いや、べつに。困ってない。日々の暮らしがどうしようもねえっていうのはいまさらだし、おれたちはこれからもそういう暮らしをしていかなきゃならねえっていうのはわかってる。 それが困ってるかってきかれりゃ、たしかに困ってるようなもんだけど、それはあんたたちに関係ねえし、話したってどうにかなるもんじゃねえだろ?」
「そうか?とりあえず、話して楽になるっていうことだってあるだろ?」
ジョーは太い腕をくみ、おれではなくケンに確認した。
ケンはまだおれをみて言った。
「話したってクソみたいな状況が変わらないなら、おれだったら黙ってる」
この返答は、大正解だ。




