テーブルの準備
17.
「そうそう、こういうテーブルだったよ。おれがこの魚料理を食ったのも」
食堂にある白いクロスのかかった細長いテーブルをたたき、トッドは嬉しそうにウィルをふりかえった。
「でかい家に住んでると、みんなこういう細長いテーブルで食うのかい?」
「さあ、趣味の問題だろ」
肩をすくめた貴族の男は、両手にもっていた皿をテーブルに置き、先に置いてあった細長い蝋燭のたつ燭台を、邪魔だ、と断言してもうひとつ隣のテーブルに移す。
「ほら、ケンも運ぶの手伝えよ」
「おれ、さっき野菜切った」
えらそうにいいかえしたケンは、背もたれがやたら高い椅子をテーブルからはなれた場所にすえて、だらしなくこしかけている。
「じゃあおまえ、食っていいのは野菜だけだからな」
オーブンからとりだしたメイン料理を両手で大事そうにはこんできたショーンがわらうと、ケンはしかられたこどものような顔でゆっくりと立ち上がった。
厨房と食堂を往復するのは警備官の男たちだけで、トッドとマックスはなんとなくそれをながめている。
「あいつらなんてなにもしてねえのに、食っていいのかよ」
ケンがふてくされたこどもらしい意見をだすのに、マックスとトッドはお客様だよ、とレイがさけんだ。
さすがのトッドも居心地悪そうな顔になり、そばでナイフとフォークを置きまわっているゲイリーに、手伝うぜ、と申し出る。
眉をあげてから微笑んだあいては、じゃあ飲み物でも運んだら?と提案した。
厨房にはいい匂いがただよい、いくつもの料理がもられた皿が置かれ、レイがテーブルに運ぶものを指示していた。
こちらをみたレイがなにか言う前に、おれたちは細いビンがつっこまれた氷のはいったバケツと、そばにあったグラスの載るトレーを運ぶことにした。
男たちはどうやらこういう食事様式に慣れているようで、あっというまにテーブルに食事がならんだ。マックスが運び置いたバケツの氷から抜いた瓶をケンがさっさとあけて、細いグラスに注ぎだし、勝手に飲み始める。ずるい、と騒ぐゲイリーがそれを奪い、並べたグラスにつぎつぎに注いでゆく。
マックスとトッドにも、その泡をだす薄い色の酒がはいるグラスがわたされ、食前酒だからあまり飲むなよ、とウィルに注意される。




