だれでもする勘違い
「これって、『ダンスホール』なんじゃない?」ゲイリーが指をさしてから眉をしかめ、ショーンをみた。
「 ああ。だから確認したんだ。ダンスホールだか《パーティー会場》だとかいう広い場所は、たしか・・・二階だっていってたが・・・」
おれとトッドも、ショーンをみてうなずく。
「まって、こういうときはまず落ち着いて。 もう一度階段をのぼってみるっていうのはどう?」
ゲイリーが提案するのに片眉をあげたショーンは背中にいれた鉄棒をなぜかさわってから、うなずいた。
「先頭はおれがいく。ゲイリーはうしろだ」
《警備官》にはさまれたおれとトッドは、顔をみあわせながら、ショーンをゆっくり追う。
階段をのぼりきったそのフロアには、ショーンたちがいた階と同じように、廊下を挟んで二部屋ずつドアがある。部屋番号のプレートは、ドアの真ん前に立たないとみえないほど小さいので、ここからだとわからない。
「 ―― みてくる」
ショーンが一歩ふみだしたとき、右側の手前のドアがひらき、黒髪のあのガキ、『ケン』がでてきた。
「なにやってんだよ?集団で迷子みたいな顔して」
「まあ、ちょっと当たってるが、ケン、ここは、何階だ?」
「はあ?なんだよ、そいつらともう飲んでるのか?」トッドをみて、もしくはへんな煙草をもらったんだろ?といやなわらいをうかべる。
「 ―― ってことは。きっとおれたち、しゃべってるあいだに二階分おりてたんだね」ゲイリーがケンの部屋についたプレートをさしてうなずく。
「二階分?しゃべってるあいだに?」
ショーンがうたがわしげにききかえすのに、じゃあ、もういちど上にいってみたら?とおこったようにゲイリーは腕をくむ。
おれたちは、そのまま階段をあがった。
ついたフロアは三階とかわらないが、ドアについたプレートを確認し、ショーンもゲイリーも自分たちがでてきた部屋をあけてみてさらに確認。階段を一階ぶん、みんなでおりる。そこでもドアプレートを確認し、また来たのかよ、というケンの部屋もあけてさらに確認して、また階段でおりる。
「ほらー、ちゃんと『ダンスホール』は二階にある」
ゲイリーがほっとしたようにわらい、そのひろい空間へダンスをするようにはしりだす。
ショーンはまだ腕をくんで階段をふりかえり、おれとトッドをみたが、トッドも勘違いだったな、と認めておれの顔をみた。
納得いってないのは、ショーンとおれだけだ。
だがおれは、これいじょう問題をふやしたくなかった。
「気にするなよショーン。勘違いなんて、誰でもするさ」
ショーンは肩をたたいてわらいかけたおれに、裏切り者をみる目をおくってきた。




