初めてのお客たち
ショーンはゲイリーの手をはらい、おれのことをみた。
「 五階のもうひとつの部屋はジョーとジュニアだろ?この階には、ジャンとコルボクが明日くる。三階には、ケンとウィルとレイで、ちょうど満室だって言ってたぜ」
Tシャツをなおしながら、階段へむかう。
ゲイリーがバートはこないの?ときくのに、レイに怒られるからしかたなく親父さんの警護に行ったんだろ、とショーンがこたえる。
そうか、あの男はこないのか
これですこし、おれたちが逃げられる確率があがったような気がした。
―― 気がしただけだが。
「あんたら、このホテルに何度来てるんだ?」
トッドが先に階段をおりはじめるショーンにきく。
「おれたちは初めてだ。けど、たしかあいつらもはじめて呼ばれたっていってなかったか?」
確認するようにゲイリーをふりかえる。
「うん、ザックがぜったい行きたいって大騒ぎして、ウィルがしかたなくみんなを呼んだっていってたけど。 でも、そのザックが病欠なんてかわいそうね」まったくかわいそうとおもっていないようにわらう。
「ルイがザックからうつされて、いっしょに病欠ってほうがかわいそうだろ。 ―― ウィルはなんだか、だいぶ渋ってたらしいな」
「そりゃこんな女っ気のない集まり、彼は楽しくないんじゃない?」
「なあ、あの貴族さま、そうとうな女好きだって記事にあったが、ほんとか?」
トッドの野次馬的質問に、ゲイリーが顎に指をあてて、なにかいいかけたとき、先に三階におりたったショーンがいきなり足をとめた。




