ナイフと鉄棒
ショーンがそれに気づき、金持ちってのはそういうへんなことするからこわいよな、と同意をもとめるようにうなずく。
「 消防隊の特殊器具じゃないと壊せないらしい。 ―― もちろん、ふつうの銃器の弾じゃどうにもならねえってことだ」
まるで、おれたちをなぐさめるように、トッドの肩をたたいた。
部屋からでてきたゲイリーはピンク襟の上着をきておらず、ぴったりと首まであるスポーツ用のアンダーウエアのうえに、黒いベルトが背中と胸前をわたっていて、よくみれば両脇に革製のホルスターがさがっている。だがそれは、銃をいれる形をしていない。
―― ナイフだ
そのホルスターからとびでた鈍く光る『持ちて』の部分に見覚えがあった。
賭博場にいたとき、負けた金が払えないという男がテーブルにおいて開いた指の間に突き刺さっていた、あのナイフの『持ちて』だ。
「これが気になる?ただの護身用だからきにしないで」
「ジャンが来たら貸してやれよ。おまえから身をまもる『護身用』にな」
ショーンがわらって先に歩き出す。くちをまげたゲイリーが、そしたらおれはどこかの誰かさんがぶらさげてる、鉄の棒でも借りようかな、と後ろからショーンのだぶついたTシャツをまくりあげた。
―― 鉄棒だ
サイズのあってなさそうなデニムパンツをとめているベルトに、見たことがないかたちのみじかい鉄の棒がさしてある。
あのでっぱりはなんだ?




