トッドに感心
あまりに予想外で、うまく頭がまわらなかった。
写真でみたよりもがっしりした体格のウィルは、トッドは無視してこちらにより、どこからきたのか、ときいた。
「あ・・・いや、おれたちは・・・」
目の端でまた荷台の幌がまくられ、だれかがおりたのがわかった。
女か?
「ウィル、どうしたの?」
っつ!?
その声に、じぶんでも驚くぐらい耳が反応した。
「 れ、 レイ!?」
幌をまくっておりたのは、なんとレイだ。だが、きっとまたあの黒髪のいやなガキがでてくるだろう。
ところが、おれに名をよばれたレイが、驚きをもった笑顔をうかべ、ウォーレンさんじゃないですか、とこちらへくるのに、あのガキはでてこない。
ブランケットで首から膝までをおおった姿は着ぶくれしている。サウスの横まで来ると、どうしたんですか?とおれと車を見比べた。
「あー・・その・・」
「あんたが、あの、レイを助けたウォーレンさん?」金髪を払いながら、サウスがおれのことをあらためてみた。
ああ、とおれがこたえるのと、むこうのトッドが「そうだ」と答えるのがかさなった。
「 いいか、おれはマックスの友達なんだが、あんたら、ちょっとマックスにたいしてあつかいがひどくねえか? 別荘にあそびにいこうってレイがさそってくれたのに、まわりがそれを邪魔するなんてどういうことだよ?しかもその別荘ってのは、サウス卿の別荘なんだろ?おれは、友達としてあんたらのそういう態度が許せねえんだよ。だからマックスといっしょにじかに別荘に行って、あんたらの、えっと、そう、『誠意』ってやつを、たしかめようとおもってよ、こうして雪道をきたんだが、運悪くガソリンがもれて、車がとまっちまってな」
ここでひどくいい笑顔をおれにむけ、いやちょうどよかったぜ、とそばに立つ眼鏡の男の太い腕をたたいた。
「あんたらがそのままおれたちをのせて連れて行ってくれりゃ、はやいもんなあ。 それともまさか、ここにおれたちだけおいて別荘にいくなんてしねえよなあ?なにしろここだともう携帯電話もつながらねえし、車の移動すら頼めねえんだ。 ―― だからよ、こういう《おもしろいこと》が起こったら載せてくれそうな雑誌社にも、ここだと連絡がつかねえんだよ」
こういうときのトッドは、おれも感心するほど、小悪党くさい。




