下見の予定
おれたちの計画では、まずきょうは『別荘』を外から下見して、もしものときにそなえて逃げる方向を確認する。『別荘』はステラの森のそばにあり、逃げる方角をまちがえると、森に迷い込むことになる。外からみて、逃げられるドアがいくつあるかも確認しておく。
おれが図書館に通ったおかげで、なんとこの別荘が『ホテル』だったころの見取り図を手に入れることができていた。《芸術品》にもなると、こんなどうでもいい情報が、《買い手》といっしょに雑誌に紹介されるらしい。だがその《芸術品》には、外につながるドアが二つしかないと『見取り図』は示していた。
こんなでかい建物なのに?
だが、『別荘』になってから、ひょっとしたらドアがふえているかもしれないので、確認だ。
《買い手》であるサウス卿は、ホテルだったころ『歓談室』につかわれていたという部屋のごてごてした金色の椅子に座り、まるでその部屋の付属品みたいな雰囲気で写真に写っていた。その目もとから上あたりが、ゴシップ雑誌にのっていた息子とよく似ていた。
これを紹介した雑誌というのは、おれがいままで存在すら知らなかった定期購読の雑誌で、どうやらサウス卿親子は、これにたびたび載るらしい。
さらに、古い見取り図によれば、一階と二階には、『食堂』や『歓談室』に『パーティー会場』など、人があつまる場所がつくられ、客室になっているのは三階から上で、五階建ての建物だった。
トッドにいわせれば、これじゃあ商売にならねえだろ、というほど、一つの部屋がでかい。おまけに一つの階には四部屋しかなく、五階にいたっては、物置になっている部屋もあるようで、客をとめていたのは10部屋だけらしい。
そんな『別荘』へ、レイたちは何人でゆくのかは知らないが、おれたちは無理やり、そこに客としてどうにか加わることに決めていた。
正直、おれはこんな作戦がうまくいくとは思っていない。 だが、夜中に忍び込むよりは、ましだと思えた。
トッドもおれも、覚悟をきめて直接『別荘』に行く気になっていた。なにしろもう、ダニーが加わった時点で、おれたちはこれを《やりきる》しかなくなっている。




