こわい気分
「・・・ある、けど、それはまあ、マイクとの約束で話せない」
「マイクって?・・・あの、重犯罪部のマイク・ベネット?あんた知り合いなのかよ?すげえなあ。それで?なんで話せねえの?」
「それは、・・・まあ、マイクのことをおれが助けてやったなんて、噂になると困るだろ?おれは軽犯罪部だし、あっちはおまえみたいなファンも多いしな」
「あんたが?たすけた?マイクを?」
若い男がすこしの間をおいて、「うそをつくなよジャスティン」と半わらいの声をだす。
「あんたがいいかげんなこと言ってるとき、おれはわかるからな」
「嘘じゃねえって。おれとマイクは・・・・。ま、いい。これはおれとマイクだけが知ってればいいんだ」
「すねるなよ。ほかのはなしはすこしは信用してるから」
「ほかのはなし?」
「ほら、《貴族の警備官)と知り合いだとかさ。このまえの店で紹介してくれただろ?」
「ああ、ウィルな。あいつ、おれがむかし《警備官)に偏見もってたころのこと、まだ根にもってるんだぜ?」
「ああ、だから誘われなかったんだ、別荘に」
「誘われたっていかねえよ雪山なんて。まああいつらは今年、はずれるらしいけど、ほら、《生誕祭》の警備があるから、どっちにしろ、おれたちは行けねえんだって」
「え~?いやだなあ。それ当番制だっけ?」
「ああ、うちはきっと13日あたりから、一週間近くだな。ちょうど、あいつらが行く日程とかぶってるし、マイクは警備官と警察官、両方に指示だす役だからな。今回おれたちは行かれないってレイに言ってある」
「ああ、レイってさあ、―― あ、連絡きた。もどらないと」
コーヒーをのみほしてでていった警察官二人を、おれは感謝の気持ちをこめて見送った。
顔がみえた二人とも、ツイてるかどうか、またみえなかった。
だが、レストランをでて、通りの店のガラスに映ったじぶんは、《ツイてない》やつのままだった。
なのに、こんなにツイてていいのか?
こわいような、うれしいような気分で足早に信号を渡った。




