一緒に写る男
いいか、と突然声をひそめ、まわりをみわたすと、雑誌のきりぬきをテーブルに並べだした。
「みろ。こりゃ、あのマフラー男だ。そんで、いっしょに写ってるこの金髪はなんと、貴族の男なんだと!知ってたか?貴族なんてまだいるんだな」
トッドは鼻で笑おうとして失敗したようなむせかたをして、重なった切り抜きを両手でひろげだす。
「みてみろ。この、ウィル・デ・サウスとかいう貴族の記事をさがすと、こんなふうに、マフラー男といっしょのところを何度も撮られてる。って、ことは、このマフラー男の『アルゴスの息子』だけじゃなく、おれたちは『貴族』とつながることもできるってことだ」
「・・・・なにできるって?」
「マーックス、おまえは『アルゴスの息子』を助けたんだ。まずは、あのマフラー男のところへ見舞いで顔をだして、慰謝料をひきだして、 ―― いやまてよ。親父であるアルゴスに直接会いに行った方が早いかもな。息子さんの様子はどうですか、って」
「むりだ」
「なに?」
にやけた顔のまま、ききかえしたトッドに、もういちど、むりだ、と告げる。
「警察官たち・・・は、 ―― おれたちに依頼した女と、おれ、が、いっしょになってこれを仕組んだと考えてる」
「なんだって?だって、おまえは、マフラー男を助けたんだぜ」
「だめなんだ、 ―― あの女が、自分が突き飛ばすのに、その罪をなすりつける用に、白い毛糸の帽子をかぶる男をやとったって、自白してるんだ。だから、おれははじめからあの女の仲間で、マフラー男を助けたのは、すんぜんで気が変わったからだって、刑事たちは考えてる。 今だって、まだ警察官がおれのあとをつけてるかもしれないんだ」最後だけは本当のことだ。
えっ!とさけんだトッドはあわててあたりをながめまわし、雑誌の切り抜きをつかんでポケットにいれた。
「なんだよ、クソ!」
「あの女、ちょっとイカレてるみたいだぜ。マフラー男と実際にはつきあってないみたいだし、捕まってもおかしなことくちばしってるみたいだし。ああ、でもそのおかげで、女が金をわたして尾行を頼んだ男とおれの特徴がちかってても、警察は疑わなかったんだから安心しろよトッド。おれは、おまえのことは警察官にはなにもしゃべってねえよ」
グラスをかかげてみせると、口をまげたトッドはくやしそうに残った酒をあおり、テーブルにたたきつけるようにグラスをおいた。




