病室にドーナツと
5.
そうして事故の『負傷者』として病院に運ばれたおれをまっていたのは、いままで数回捕まったときにはありえなかった、刑事の数の多さだった。
まず、髭面の白髪頭の男が、病室にドーナツをもってはいってきて、おれを見張っていた赤い髪の女としゃべりだした。説明のあいまにおれのことを目でさす女にいちおう、きいた。
「・・・あんたも警察官なのか?」
あの看護師の恋人だからって、あそこに来たわけじゃなさそうだった。
「サリーナもおれも警察官だが、まあ、おれらは主に、ギャングとか売人とつきあってる。おまえさん、クスリはやってないみたいだから、あとは正直にはなしたほうがいいとおもうぞ」
口ひげに砂糖をつけながら、白髪がわらい、サリーナに箱の中のドーナツをすすめた。
「けちな窃盗と暴行で何回か逮捕してるみたいだよ」
ひとつをとりあげた女は、また目で、ベッドのおれをさす。
「ああ、じゃあ、酒場なんかで声をかけられたんだな?安い酒をちびちび飲んでるときに」
白髪が同情するようなめをむけてきた。
「 おれじゃねえよ。じかに仕事を受けたのは。 ―― そういう酒場で、偶然いあわせたやつから、『こういう仕事をやらないか』って誘われたんだ」
トッドをかばう義理はないが、面倒なのでそういった。




