目撃者
車のブレーキ音と悲鳴、ドンガシャンという衝突音がひびいたあと、女のさけぶ声が一人の男をさした。
「あいつよ!あの、白い毛糸帽の男が、あのひとを車道に突き飛ばしたわ!」
道路には、その帽子姿の男と、マフラーをまいた男が転がり、悲鳴と混乱の中で救急車だ!とだれかがさけぶ。
『白い毛糸帽の男』には意識があり、痛そうにうなっていたがすぐに目をあけた。
頭がクラクラしてまともに考えられない中、「あの男よ!」という女の声をきき、マックスの意識がしっかりしだした。
自分をとりかこむ足がみえ、だれかに転がされてうつぶせにされる。
「いてえ!」
「人を突き飛ばしておいて、自分だけ助かったんだ。このカス野郎が」
体格のいい男が上にのり、後ろ手をとりあげられた。
「はあ?つきとばして?」
「みられてたんだ。あの人に」
男がマックスの頭をもちあげ、マフラー男に道をきいていた女の方へとむける。
女はまわりの人間に、あいつよ、あのひとがやったのよ、といいながらこちらをゆびさしていた。
「はあ?おれじゃねえよ。おれだって後ろから押されたんだ」
「いいわけは、警察官にするんだな」
「いや、だから・・・」 マックスがいいかえそうとしたとき、女の生足が顔の前にきた。
「どこか痛い?わたし看護師だから、あなたも応急処置できるわ」
ショートパンツをはいた若い女が膝をつき顔をのそきこんできた。そばかすのある肌は化粧してないようで、髪もひとつにゆわき、看護師というより実習生だろうか?
上にのった男が、こいつ犯人らしいから手当てはいいさ、と笑っている。




