衣裳部屋
鳥の脚をした悪鬼がダニーからうけとった鍵を扉にさしこみまわした。
扉が勝手にひらいてゆき、中がみえると、鳥脚は一歩さがった。
「 ―― あら、なにかご用ですか?」
その扉の中はいがいと広い部屋で、大きなテーブルに布をひろげている女が鼻にかかった眼鏡をおしあげてきいてきた。
床にもテーブルにも巻かれた布がつみあがり、壁には舞台衣装のような豪勢で手の込んだ服がびっしりとかけられている。
「こちらのかたたちが、地下をみたいとおしゃるんだよ」
《管理人》の首が説明する。
ああ、とわらうようにうなずいた女が布に針をうちながら、ここは衣裳部屋でございますよ、とそっけなくいう。
「お預かりしたお洋服の裾や袖のおなおしからボタン替えまでいたしますし、いまはパーティー用の衣装をおつくりしているので、いそがしくって」
見てわかるでしょう?というように広げた布をしめした。
「あなた方のお洋服は、・・・こちらではお預かりできないわね」
《悪鬼》たちに片眉をあげた女がそういうと、バタンと扉はとざされた。
「なんだあの女?腹がたつぜ」
鳥の脚をした男がダニーにむかっていうのを相手にせず、ダニーは次の鍵をえらんでつまみあげると、また「扉をだせ」と命令した。
先に閉まった扉の横に、またしても普通の大きさの扉があらわれる。
またしてもダニーは仲間のひとりを指先でよび、あけるように命じた。
「なんでおまえに命令されなきゃならねえんだよ」
「うるせえなあ。いやだっていうならおれがあけるが、これが『門』とつながる扉だとしてもあとで文句をいうなよ」
「まてよ。あけねえとは言ってねえだろ」
そういってダニーから鍵をうけとる《悪鬼》は、じぶんがうまく操られていることにきっと気づいていない。酒場に古くからいるやつらもダニーに反感をもちながら、こうしてうまく操られている。




