興味
29.
「 それでは ―― 」
《鏡の世界》のどこにも黒いスーツ姿はないのに、あの男の声がひびいた。
「 これからみなさまを地下へとご案内いたします 」
冗談じゃねえぞ、とダニーたちがさわぎだす。
「大事な《門》をひらくのに、どうして人間の見物人を招待しなきゃならねえんだ?おれたちはバーノルドの森をにぎわせたあの間抜けとはちがうんだぜ」
「『バーノルドの森』って、・・・あの連続殺人のか?おまえらが関係してるのか?」
おもわず口にすると、ダニーだった気味の悪いやつがその口をにっと横にひらき、赤い目玉をたのしげにみひらいた。
「そうか、マックス。やっぱりおまえはおれたちに興味深々だな。こたえてやろう。あの事件は、」
「こたえる必要はない。ここではおまえたちとの『契約』は無効だ」
突然ジョーの声がわってはいり、その存在を思い出す。
おれと《悪鬼》たちとのあいだに、いつのまにかジョーが立っている。
ダニーは人間のようにくやしげに舌打ちして、ジョーをにらんだが、それいじょうなにもいわなかった。
ガゴン
またあの音がして、おれたちみんなをうつす鏡がちらちらと反射しながらかたちを変えていった。
つぎはぎだった鏡があわせめの線を消しながらつながって、巨大な鏡になってゆき、それが壁になり狭まって、むこうへつづくまっすぐな通路をつくりだした。床と天井もまだ鏡のままで、おれたちは鏡の通路の中にいた。




