おい まさか
中央通りと並行しているこの通りには小さな店が多く、中央通りぞいの店が荷受けするためのトラックやバンはここにとまる。中央通りほどではないがそれなりに渋滞もするが、いまは通勤時間からもはずれていて、車は流れていた。ここを劇場方面までまっすぐむかい、突き当たって国道へぬける車が多いのだが、速度はわりとのんびりしている。
ところが突然、中央通りとここをつなぐ横道から、すごい音をさせた車がまがってきた。
みんながそのエンジンとブレーキの音にいっせいに顔をむける。
こんな遠くからでも、運転してるそいつが《ついてないヤツ》だというのがしっかりとみえた。
必死の形相で運転する男をのせこちらへやってくるメタリックグレーの車は、古そうだが丈夫そうだった。タイヤを鳴らすガクガクした走行で、かなりの速度でむかってきている。
そのときだった。
みんながその車に視線をうばわれていた、そのときに、あのマフラー男に道をきいていた女だけが、 ―― こちらをむいた。
あ
声がでるよりさきに、いきなりうしろから押されたマックスはのめるようにして何歩か足をすすめ、そのよこを追い抜いたのは、さっきもマックスを追い抜いた《ついてない》男だった。
おい まさか
マックスを追い抜いた男は、そのまま、マフラー男へと突進した。




