こたえる犬たち
「やだ、いまのおっさんみたいな笑い声って、ジュニアの?」
ゲイリーが半分笑うようなひきつったかおでジョーのあしもとをゆびさし、ショーンにきいた。 でも、ショーンもおなじようなかおをしていて、ジョーをみながら背中にてをのばす。
ジョーがそれをとめるように片手をあげ、我慢してくれ、とみんなをみた。
「 今度の《契約》には、《制限》をかけていないし、緊急事態だから、彼は自由にしゃべる。少し前からここの『門』が緩み始めているという『噂』が流れているらしくてな。それに動かされて《悪鬼》が来るかもしれないからすこし下見しておこうと思っていたら、ウィルたちもここで過ごすときいて、日程をあわせたんだ」
「なんだよ、こんどはギャングとの銃撃戦の体験ツアーでも組んだのか?」
ケンはまだサンドウィッチを食べながら、ばかにしたようにジョーとジュニアをみた。
ジュニアが怒った顔でケンを睨みかえしたとき、窓のそとで犬たちがいっせいに遠吠えをはじめ、窓にはしりよったジャンが、コルボクからの合図に犬がこたえたんだろうと山のほうをゆびさした。
「ええと・・・」遠慮がちにゲイリーがみんなの視線をあつめ、指をたてた。
「現時点で、おれがショーンからきいて理解してるところをいうと、つまり、この別荘には《幽霊》がいて、マックスを脅してもぐりこませたギャングもここにやってくるから、 ―― 休暇中だけど、仕事する感じになるわけ?」
ゲイリーが脇にさがったナイフをゆびさし、班長の男をみる。
「簡潔にするとそういう状況だ。きみたちは理解がはやくてたすかる」
ジョーが足もとのジュニアをだきあげながらほほえむ。
おれはまったく理解なんかしていなかったが、犬たちの遠吠えの意味はわかった。
「・・・ダニーが来るのか」
それなら、もうすぐ外にいる男たちが先に、攻撃を始めるだろう。
たしかさっき、『自動小銃』を持っているといわなかったか?




