『ない』と断言する男たち
「どうやら、骨董マニアでもあるみたいだな」
おれはいちばんしたまでのひきだしを順にあけてたしかめた。タンスとひきだしの大きさは合っていて、おかしな点はない。
「まるであれじゃねえか、博物館ってやつだ」
トッドが頬のひげを嫌そうな顔でなでながら、壁に横倒しにつけられた『武器』たちをみあげると、むこうの壁までつづくその『展示』がとぎれた横のドアがひらき、ケンが顔をだし、こっちはとなりの部屋だぜ、と今でてきたむこうをさす。
「なるほどそうか。《使われてない部屋》ってのは、宿泊につかわれてないってことか。それをぶちぬいて、ここの持ち主が専用の博物館にしてるってわけだ」
どうりでひろいわけだぜ、とトッドは『展示物』にあきたらしく、ウィルの部屋の方へともどってゆく。
ケンもおれを振り返って、たんすは全部見なくていい、と手をふった。
「おれは最初から、この階には入口はねえとおもってる」
「なんだよそりゃ」
おいかけてウィルの部屋にもどると、ショーンとジャンも入ってきた。
「次の階にはあると思うか?」
ケンがさっき言ったことを聞いていたように、ジャンがきく。
「ない」
断言したのはショーンだ。
「そんな隠した入口があったら、すぐに気づいてる」そうだろ?とジャンにききかえす。
まあな、と頭をかいた男はだとするとやっぱり五階か、とおれたちをみる。
「え?おれたちの、あのスイートルームにってことか?」
おれよりもトッドのほうがいやそうな顔をしている。
ジャンが手を打ち、でも念のため四階からみよう、と部屋をでようとすると、こんどはショーンがいやそうな顔をした。
「まて。言わずにおいたが、さっき二階からここにあがるときも、鉄が、・・・音をだしてる」
いいながらTシャツの背中をまくりあげ、ベルトに突っ込んである鉄棒をとりだした。
「『おと』?」と眉をよせたトッドとおれは耳をすますが、なにもきこえない。
「その鉄棒、ジョーが祈ってくれたんだろ?それなら安全ってことじゃねえのかよ?」
それともなんの効果もねえのか、とケンがジャンを追い越しドアをでてゆく。
ジャンがしかたなさそうにショーンにわらってみせ、あとに続いた。




