11/168
警戒
そんな施設や観光の目玉である中央劇場のほうへとむかっている男は、ときどき後ろをふりかえったり、交差点のてまえでいきなり立ち止まってあたりをみまわしたりする。
・・・やっぱりこいつ、あとをつけられるのを警戒してるんだ
すこしばかり、こちらも気持ちをきりかえ距離をとる。
あんな顔してて、まさかこいつが『教祖』を殺してるとか?それで追われてる?
いやいやまさか、とおもわずわらいがでる。あんな顔で・・・・
そこで、初めて気が付いた。
おれは、あいつが《ついてるやつ》なのかどうか、わからない・・・・
いつもだったら、顔をみればすぐに《ついてる》か《ついてない》かが、わかるのに、こいつの顔はその区別がつかない。
「おかしい・・・」
おもわず、むこうからながれてくるやつらの顔を、かたっぱしから確認すれば、全員の判別できた。なのに、むこうでマフラーをなおすやつだけ、わからない。
なんだ?どういうことだ?
いままでこんなことない。目がおかしいのか?
いちどつよく目をつぶり、ひらいた。だが、おなじだった。




