動物には優しい
「なにを片付けられるって?」
おれたちの間にいきなり顔をわりこませたのはケンだった。
「 ―― その、雪を、・・・おれたちが雪かきして、どけておこうかと思ったんだ。タダで世話になってるのから、それぐらいやるかって、いまトッドとはなしてたところで」
「そうなんだよ。とくに犬小屋のほうなんて、でるとき犬も大変だろ?」
おれたちこうみえて、動物には優しいんだぜ、とふたりでわらってみせる。
ケンはにやけた顔でおれたちの肩をつかみ、ゆすぶった。
「まあ、雪かきはあとでいいって。それよりまず地下へのいりぐちと、ケビンをさがしだすほうが先だろ?」忘れてたか?というように顔をのぞきこまれた。
もちろん忘れてねえさ、とトッドはおれの顔をみながら、「あの犬小屋の掃除もおれたちがやるぜ」などともうしでた。
「なんだよ?あんたほんとに犬好きか?」
「だからいったじゃねえか。 ―― あの犬小屋の鍵を渡しておいてくれよ」そしたらあとでやるさ、と残りのベーコンをつつきはじめた。
「『あとで』?」 一度、にっとした顔をもどし、そうだな、とうなずいた男はおれたちふたりのの肩をつかみなおすとあいだに突き出した顔をひくくした。
「犬小屋の鍵は、フロント奥にある小さな机の引き出しにはいってる」
ひそめた声で教え、意味ありげな笑みをむけてから、食べ終えた皿をもち、厨房へときえた。
「よけい疑われたか?」
フォークの先でトッドは厨房をさす。
「いまさらだろ。あいつはおれたちを信じたことなんて一秒もないだろうしな」




