どん詰まり
暴言、飲酒はもちろん、薬物などの表現など多々あり。ごちゅういを
1.
その道は、その建物のためだけにつくられた道といってもいいものだった。
両脇に続く雑木林はこの先、大きな森とつながっている。
つまりはこのさき『どん詰まり』ってことで、おれたちにぴったりだ。
「いいか。あいつらはぜったいにここを通る」
トッドは自信ありげに火のついていない煙草をふってみせた。
こちらは窓にへばりついてゆく雪をにらみながらの運転中だ。何度目かわからないその予言にこちらも飽きてなにも言わずにいたら、きいてるのか?といらだたしげにきかれたので、しかたなくうなずいてみせる。
「わかってる。ここしか道がないんだから、そりゃ通るさ」
下調べしたのはおれなんだから、それはたしかだ。
なのに、さも自分がすべてを準備したかのようにトッドはうなずき、通るんだ、とこちらにいいきかせるようにくりかえした。
「いいか。ようやく運がむいてきたんだ。これをつかまねえとおれたちにはもうなにもねえんだよ」
おまえだって、これ以上クソまみれになりたくねえだろう?とトッドはおれのことをわらう。
おれは、てめえほどまだクソまみれじゃねえんだよ
ほんとうはそういいたかったが、ここまでのじぶんのおこないをふりかえったら、やっぱりおれもおなじだと気づき、窓をあけて言葉のかわりに唾を吐く。最後に吸った煙草の葉が口に残っていた。
「なんだよマックス、クソまずい煙草をまだ吸ってるのか?せっかくもらったんだから、《ポップ》にかえろよ。もうあがいたってしかたねえんだからよ」
トッドは上着の内側に手をつっこみつぶれたボックスの蓋をひらいてこちらへふってみせる。
そこにおさまっている紙煙草は、《ポップ》とよばれるこのごろ急にひろがりだした《クスリ》入りの煙草だ。
売人は若いやつばかりで、値段も粉や錠剤のクスリを買うのに比べればずっと安く手にいれやすいし、クスリがきれたときの症状も他からみるとわかりにくい。が、その症状がほかではないようなものだと噂がひろがり、一部ではすでに、《悪霊》という別名でよばれている。




