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かくれんぼ  作者: 飛鳥
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"人間もどき"

この世界には三種類の生き物が存在する。それは人間、動物、そして”人間もどき”。

人間もどきとは人と動物の間に生まれた半分動物半分人間という中途半端な生き物である。かつて、”人間もどき”は人間から慕われていた。人間と動物を繋ぐ象徴であった彼らは動物の言葉を訳して人間に伝えて生活を成り立たせ、この二つの生命体が理解しあうのを望んでいた。


しかし200年前ごろ、関係性はひっくり返った。人間は、彼らが想像したよりだいぶ頭のいい生き物だった。彼らは機械などを使い動物と言葉が交わせるようになっていった。そして動物が自分たちより頭が悪いことを理解するとあの手この手を使い騙し、都合の良いようにコントロールし始めた。そこでもどきはそれを阻止しようとしたが逆に人間から危険視され、命を狙われることとなった。だが動物もどきは動物と同じで夜行性である。昼は隠れに隠れて生き延びることを試み、夜になれば各々本能を発揮し反撃していた。対し人間は夜は眼が効かないがためにもどきと鉢合わせればやすやすと殺される。そこで人間は夜に隠れて過ごすようになった。隠れ、襲撃。隠れ、襲撃。これを繰り返してきた世の中が、今変わりつつある。一人の”半もどき”によって。


私が生まれて最初に見たものは父の顔だった。父は私と目が合うと嬉しそうに顔をほころばせて私の頭上を見た。そこに目を向けると母がいて、父と同じくらい嬉しそうに笑って涙をこぼしていた。父には角が生えていた。私はレンと名づけられた。後で知ったが生まれた瞬間からの記憶を持つものは珍しいらしい。

父と母は私にたっぷり愛情を注ぎながら育ててくれた。そのころにはもう人間ともどきの争いが始まっていたため、私たちは森の奥深くに隠れ住んでいた。父と母は争いを嫌っていた。実際父はもどきで母は人間。本来は憎みあう存在だがお互いを愛し合っていた。母はいつも私に言っていた。

「いーい?もどきとは仲良くしなきゃダメよ。人間のほうが賢いなんてことは絶対にないんだから。」

すると横にいた父さんも口をはさんでくることが多かった。

「かといって人間に乱暴するのは絶対にダメだ。もし人間がレンに何かよくないことをしたとしても。笑って流してあげるんだ。分かったね?」

私はこくりとうなづきながら思った。私はもどきと人間、どっちなんだろう。


このままずっと親子三人で今のまま幸せに暮らせればそれでよかった。他には何も望んでいなかった。それなのに。

悲劇が起きたのは私が6歳のころ。その日はいつもと何一つ変わりなかった。私たちはいつも通り朝の散歩を兼ね、木の実などの食べ物を探しに出かけていた。その時から私は誰かに見られているような感じがしていた。だがこんな森の奥深くに人がいるわけはないので気のせいだと思っていた。だがそれは間違いだったことに気づくことになる。

キノコを見つけ家に持って帰り、朝ごはんにしようかと話していた時に、お母さんの悲鳴が聞こえた。お父さんと私が慌てて駆けつけるとそこには銃を持った人間が3人お母さんを囲んでいた。奴らは振り返って父と私を見た。右目の横から口にかけて大きな傷跡がある男が鼻で笑う。

「でたなもどきが。殺せ。」

母が私たちを見て叫ぶ。

「逃げてっ!」

一人が母の髪をつかみ上げた。それを見たお父さんがその人間にとびかかる。

「サヤから手を放せ!!」

その直後銃声と母の悲鳴が聞こえた。足元に血を流しながら倒れた父を呆然と眺める。お母さんは泣き崩れた。しかしその直後男につかみかかった。

「よくも!私の夫を殺してくれたな!!」

顔に傷のある男が反応した。

「あれはお前の夫か。愚かだな。もどきなどに心を奪われおって。」

「黙れ!!」

母は近くにあった包丁を手にして振りかぶる。だが振り下ろす前に銃声が響き父と同様に力なく崩れ落ちる。何が起きたのかわからなかった。

「お父さん?。。おかあ。。さん??」

そこでようやく私の存在に気付いたように男が顔を私に向けた。その冷たい目にびくっと身をすくめる。

「ガキか。これは売れるな。連れていけ。」

男二人が私を縄で縛っている間も私は父と母から目が離せなかった。

「行くぞ。」

連れていかれそうになり始めて私は抵抗した。

「やだ。お父さんとお母さんと一緒にいる。」

「お前の両親はもう死んだ。」

冷たく放たれた一言に心が空っぽになっていく。ショックでもう何も感じることができなかった。早く歩けと殴られた。だけどもう何もかもがどうでもよかった。



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