ギルフォード家 前
書きためと投稿を続けるためにひとつ上げます。ただ次は遅いです。
眠気のせいか、階段で派手に転んだ私ミラは、前世の記憶を思い出してしまった!
まず記憶から国名を確認し、年齢を確認しよう。前世と同じ公国、私は…成人直前。だから、最近は多くの騎士の様子を見ている。今日も外出である。
「エリー、今日はどちらに向かう予定でしたか」
「お嬢様、今日は’膂力’のギルフォード家でございます」
「四大騎士ね」
「はい、おっしゃる通りです」
〜四大騎士の家系はそれぞれ「感覚・敏捷・繁栄・膂力」に優れるとされている。私の前世では、感覚の家系は未来を予知するような行動で危機を退けていた。敏捷の家系は行軍が恐ろしく早かった。繁栄の家系は、当主には毒が効かないという。膂力の家系からは、国内最強の武勇を誇る者が多く出る。今代の騎士たちは三百年前以来の凄腕揃いというから、彼らも同じような事ができるかもしれない〜
私が望む騎士は、守護能力でトップクラスで、指揮統率もそこそこできる方。後は、悪い噂のある第三王女の騎士に有利な方がいい。高望みに聞こえるが、私ならば相応ともいえる。
なぜならば、私も王女なのだから!ただし五人目だけれど…
さて、今まで語った四大騎士の能力は表面上のもので、巷の評価でしかない。私は、前世のおかげでそれ以上の知識を持っている!
一騎打ちの強さを考えてみよう。‘繁栄‘は真っ先に除外してしまうけど、私が選んだ騎士が毒殺されないよう気をつけないと。解毒の手段もあるはず。また、彼らの持つ財力も厄介で、前世で見た宝剣はきっとまだ彼らが持っているのだろう。あ、あと、前世の最後の方に‘残酷’と呼ばれる家系が派生していた。彼らはその名の通りの方々だが、精強な軍隊を保持していた。あまり相手にしたくはない。
他は、家系だけだと判断しきれない。大差ないとしかいえない。こうなると個人の能力次第である。見て確かめなければ。まずは今日のギルフォード家である。
「ミラ様、あちらで剣を振るわれている方が『メリアム・ギルフォード』様です」
「やはり背が高いわね」
「彼は既に兄より大きいそうですね。こう見ると迫力があります」
切れ長の瞳に伸ばした黒い髪を後ろで束ねている。筋骨隆々、既に敵国の将をひとり葬ったという。彼は首にかかった宝石を見つめる。裏にはおそらくギルフォード家の紋章が刻まれているのだろう。宝石は、くすんだ赤だ。見つめる顔が不意に曇った気がする。
私には、彼の秘密が推測できる。これはギルフォード家の秘密なのだが、『資格』をもつ者の宝石は赤く輝くという。私も前世で立ち聞きしただけだけれど。彼もそれを手に入れようと腐心しているのだろう。