Q.E.D
レビュー執筆日:2021/2/10
●分かりやすいロックサウンドとアルバムとしてのバランスの良さを感じられる、「器用」な一枚。
【収録曲】
1.STAY HOPE
2.バッドパラドックス
3.ポラリス
4.FREEDOM
5.棘
6.VOLCANO DANCE
7.HAPPY ENDING STORY
8.あなたへ
9.ユメミグサ
10.ハミングバード
11.喝采
ミニアルバム『SICK(S)』以来約1年半ぶりとなるBLUE ENCOUNTのアルバム。『SICK(S)』ではあえて音楽性をハイテンポなロックナンバーに絞っている印象があり、今作でも序盤においては『STAY HOPE』や『ポラリス』のように前作の延長線上にある曲がメインとなっているのですが、中盤以降になるとラテン音楽の要素を取り入れた『VOLCANO DANCE』やR&Bの風味が強めの『あなたへ』、8分の12拍子のバラードの『喝采』と曲のバリエーションが増えていく印象があり、そういう意味では直近のフルアルバム『VECTOR』に近い印象を受けます。
全体的にメロディは覚えやすいですし、サビで上手くファルセットを使ったり、印象的なギターフレーズを随所に織り込んだりと、キャッチーな要素は多め。今作は収録曲の約半数がタイアップ付きのシングル曲となっていますが、それが原因でアルバムとしてとっ散らかってしまうようなことも無く、一つの作品としてよくまとまっているように思えました。
ただ、曲のバリエーションに関しては『VECTOR』と比べるとそこまで振り切っている印象は無く、個人的にはもっと様々な音楽性の「引き出し」を開けた方が面白いんじゃないかな、と思うところもあります。まあ、先程挙げた『あなたへ』や『ユメミグサ』はストリングスを入れてスケール感を出しており、そういう意味では「新しい引き出しを開けた」と言えるかもしれませんが、アレンジや歌詞が「分かりやすい」を通り越して「ベタ」な印象があり、やや物足りなく感じられるところも。
ライブやフェスで盛り上がりそうな分かりやすいロックサウンドを聴かせながらも、アルバムとしてのバランスも考えられており、彼らの「器用さ」というものを大いに感じられる一枚になっているのではないでしょうか。バンドとしての個性はやや薄めかもしれませんが、全体的にキャッチーな楽曲群を色々と楽しめたアルバムでした。
評価:★★★★




