VECTOR
レビュー執筆日:2020/6/20
●多彩な楽曲とある種の「ストーリー性」を感じられる構成で、「フェス向きのバンド」というイメージとは少し違った一面を見せる。
【収録曲】
1.灯せ
2.Waaaake!!!!
3.コンパス
4.VS
5.RUN
6....FEEL?
7.ハンプティダンプティ
8.résistance
9.虹
10.グッバイ。
11.coffee, sugar, instant love
12.「77」
13.さよなら
14.こたえ
BLUE ENCOUNTはフェス向きのバンド……そう思っている方は少なくないでしょう。現時点での彼らの最新のフルアルバムである本作、その中で特に前半の部分においても、そう思わせるような曲が多く収録されています。『Waaaake!!!!』や『VS』には観客との掛け合いを意識しているかのような箇所がありますし、アップテンポでキャッチーな楽曲群からは強い「即効性」を感じられます。私はこれまで何度も彼らのライブをフェスで直接見たり、その映像を視聴したりしたことがあるのですが、そういう「分かりやすく盛り上がれる曲」を中心に演奏している印象を受けました。
ですが、このアルバムの収録曲を全体的に見てみると、彼らの音楽性はそういった単純なものではないことが分かるのではないでしょうか。ミディアムテンポで叙情的な雰囲気を持つ『虹』といい、跳ねたリズムに乗せたコミカルなラブソングの『「77」』といい、スローテンポで歌詞をじっくりと聴かせる『さよなら』といい、いわゆる「フェス的」ではない曲も多く収録されています(『虹』に関してはフェスで聴いたことはあるのですが)。また、「フェス的」な曲に関しても、『VS」では和風なメロディを聴かせたり、『...FEEL?』や『résistance』では歌詞がほぼ英語で構成されていたり、『ハンプティダンプティ』ではラップを織り交ぜたりと、彼らの「引き出し」の多さというものがうかがえます。そういう意味では、個人的には10-FEETに近いものを感じられました。
また、アルバムの曲順も良く練られているように思えます。1曲目の『灯せ』から5曲目の『RUN』までは日本語詞中心のアップテンポなナンバーを配置し、6曲目の『...FEEL?』から8曲目の『résistance』までは洋楽のテイストが強めで、9曲目の『虹」以降はミディアム・スローテンポの楽曲を中心に据え、ボーカル・田邊駿一の噛み締めるように歌うさまが印象に残る『さよなら』と『こたえ』で締めるという構成をとっているのですが、これによってアルバム全体を通してある種の「ストーリー」が構築されており、それゆえに、多彩な楽曲が収録されておりながらも、一つの「作品」として上手くまとまっている印象を受けました。
「ライブバンド」という印象が強い彼らですが、「アルバム」という単位で聴くとまた違った魅力が感じられる、そんな作品になっているのではないでしょうか。
評価:★★★★★




