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突然竜の王の妃になりましたが、溺愛がひどいです  作者: ルーシャオ


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第17話 おばちゃん襲来

 それから、何か問題があったらしい。


 翌日、私のもとへ、しらつゆの代わりにやってきたのは——見知らぬおばちゃんだった。いかにも高級クラブのママさんとばかりの風貌にきっちりと決めた着物、間違いない、どこかの大歓楽街のトップを張っていると言われても私は信じるだろう。


「あんたがりつかやな。あたしは霧島かんろ、霧島家の当主や」


 何の縁もゆかりもない上位貴族の一つ、霧島家の当主が来た。それだけでも驚くことだが、かんろは私を品定めするようにじろじろと見回し、ふんと鼻を鳴らした。南の赤竜州の方言丸出しのおばちゃんのくせに、と私も思わなくはない。


 私は一応、年上の来訪者に頭を下げる。


「よ、よろしくお願いします」


 それが癇に障ったらしく、かんろはいきなり怒る。


「挨拶がなってへん!」

「ひゃい!?」

「しらつゆは何を教えとんねん! 背筋を伸ばし、目上にはしっかり頭を下げ!」


 恐ろしい形相で、叩きつけるような声を張り上げるかんろに、私は萎縮してしまう。こういうおばちゃんは付き合いが面倒なのだ、何を言っても口答えするなと怒るタイプだ。


 かんろはつかつかと台所に入り、目ざとく電磁調理器コンロの上の鍋を見つけ、蓋を開ける。もはや自宅のような振る舞いだ。そして、鍋の中身、カレーを指差した。


「これは何?」

「昨日の夕ご飯の残りです」

「カレーか?」

「しらつゆが作ってくれて」


 昨日の結婚式のあと、私が部屋に戻ってきたら作りたてのカレーが置かれていた。しらつゆが一度戻ってきてカレーを作り、それからまた仕事に戻ったようで、食べておきなさいと書き置きもあった。しらつゆお手製コクのある甘口カレーは、存外寒かった御空の間から帰ってきた私の体に染み入るほど美味しかった。


 それを今日も朝食べて、昼ご飯にもしようとしていたのだが、かんろは私を睨みつけてきた。


「何で冷凍してへんの」

「えっ、だって温め直して食べれば」

「鍋に残しっぱなしで一晩、この夏に食中毒になったらどないすんの。え?」


 お叱りに、ぐうの音も出ない。確かに夏場の一日置いたカレーは食中毒になりかねない、だが一日くらいならいいのではないだろうか。


 だが、かんろの強権的な指導は、それだけに止まらない。


「あとあんたはもう生もの食べたらあかんで。当たって死んだら大ごとや」

「ええー! お刺身!」

「あかん。火ぃ通し。それから好物は?」

「唐揚げです」

「それ極秘事項になるさかい、外で言うたらあかんで。あと好物を出されてもがっつかへんこと。今の時代、毒見役はおかれへんのや」


 どうやら、それは本当のことらしく、毒殺のおそれがあるVIPは徹底的にその危険を排除するそうだ。食中毒はもってのほか、生ものは寄生虫感染もありえるし、好物を知られれば優先して食べると思われて毒を仕込まれる可能性がある、とのことだった。


 毒殺を警戒するような身分になってしまった、と私は後悔したし、一生刺身を食べられない身分など捨ててしまいたかった。


 かんろは食堂に場所を移し、私へお説教、かと思いきや、現状の説明を始めた。


「ええか? 宮城(みやしろ)の香宮殿、つまりここのフロアとあんたの生活を支える施設全般は、今、誰もおらへん。榛名の阿呆が官女をほとんど全員解雇してしもうたんや」


 榛名の阿呆、と言われても、上位貴族の榛名家の人間とは私は会ったことがない。名字しか知らない家だ。しらつゆから一通りのことは教わったが、榛名家は秘密が多い家らしく、あまり詳しいことは聞けなかった。


 片や、かんろの霧島家は、上位貴族のうちもっとも開放的で、裕福な家だ。いくつも領地に港や工業地帯を有し、世界的な大複合企業メガ・コングロマリットグループさえ持っている。しらつゆの金剛家も十分裕福だが、霧島家は桁違いだそうだ。


 もう一つ、上位貴族には比叡家というものがあるが、こちらは黄竜本州の古都に座し、人間が霊峰に住まう竜に奉仕するための組織、全国の竜神社を統括している。その歴史は上位貴族の中ではもっとも古く、きわめて排他的、保守的な家だそうだ。


 それはさておき、官女の解雇は私と丹青を、前の竜王と妃と比べようとするだろうから、このまま雇っていては支障が出ると判断されてのことだったと聞いている。それは恨む人間もいるだろうが、どうしようもないだろう。


「解雇の話は聞きました。でも、そうしないといけない理由が」

「理由はどうでもええ。問題は、あんたの身の回りの世話をする人間と、香宮殿の中を知っとる人間がまとめておらへんなったことよ。あんたには妃として身を保つ義務がある、それがでけへん事態に陥っとる、あかんやろ」


 またしても、かんろの正論に私はぐうの音も出ない。確かにその状態はまずい、と私でも分かる。この宮城(みやしろ)の広さは異常だ、何せ竜基準で作られた巨大建築物であり、またその古さと増改築を繰り返してきたことから全容を把握している人間はもう存在しない。一区画だけならそれぞれ管理者が差配できるが、その一区画、つまり香宮殿は丸ごと人員が解雇された。今は、誰も香宮殿の中がどうなっているかを把握していない、ということだ。


 それゆえに、香宮殿に入れるのは家主の私と上位貴族、その手伝いの人員だけ、重要な食事の世話などは暗殺の危険性から世話係となる上位貴族、つまりしらつゆやかんろが手ずから作ることになっている。それがどれほど大変で、しかしやらねばならないことなのか、それはしらつゆを見ていれば何となく分かった。ただ、さすがに年上の上位貴族を顎で使うわけにもいかず、自分から積極的に何かをするわけにもいかない、という状況は、なかなか動きづらくてイライラする。


 そのイライラは、どうしようもない。かんろは私へ厳命する。


「あんたにはしばらくここから出ぇへんよう、仕事はなしや。とにかく、あんたの世話係の体制が整うまで、じっとしとき。ええな?」

「はーい」


 従わない理由もなく、私は承諾した。しかし、まだかんろの気は収まらず、愚痴が続く。


「まったく、榛名の阿呆だけやったらまだしも、しらつゆまで乗せられてしもうてからに。おかげでうちがあんたの世話係や、今日だけやけど」


 私は、嫌なら来なくていいよ、と言いたかったが、我慢した。今後を考えると、上位貴族と仲違いしないほうが面倒くさくなくていい。それに、そんな問題を起こすと、丹青を煩わせることにもなりかねない。


 不満な私は愛想笑いも見せずに、睨みつけてくるかんろから目を逸らす。このおばちゃん、圧が強い。


「ああ、それと言うとかなあかんことがあった。あんた」


 かんろはピシッと、私へ忠告する。


「官吏に気ぃつけ。あいつらは隙見せたらすぐに手玉に取ろうとしてくんねん。何せ何十年と宮城(みやしろ)に巣食うてきた化け物揃いや。あんたみたいな小娘、上手う乗せる程度わけないで。はあ、官女よりあっちのほう解雇したらよかったのにな」


 このとき、かんろの言葉を、私はまだよく理解していなかった。


 官吏といえば今まで会ったのは月神くらいで、そのくくりの人々のことはしらつゆからもまだすべては聞いていない。しかし、十十廻国(とおとみのくに)の中でも、最高峰の頭脳を持つ優秀な人材だらけの宮城(みやしろ)の官吏、その一般的な認識は間違っていなさそうだ。


 かんろだけでも御しがたいおばちゃんなのに、まだ他にも面倒くさい人々がいると聞いて、私は本当に仁淀へ帰りたくてたまらなかった。

ちょっと申し訳ないんですが体調不良のため一旦中断させていただきます。

再開は未定です。見てくださっていた方々には申し訳ありません。

早めに続きを出せるようがんばります。

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