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ある男との出会い

 ことの始まりは去年の4月。始業式が終わり帰ろうとするとある


男に呼ばれた。行ってみると



「あなたのことを一生大切にします!僕と付き合ってください。」



と、右手を差し出し地面を見るように言ってきたのだ。名前も言わ


ずいきなりこんなことを言われたら誰もがびっくりするだろう。だ


が私は違った。何が違うかって?そんなのは一つに決まっている。


名前も聞かずに告白の返事を



「いいよ!」



と、右手を掴んで言ってしまったのだ。今思うととても信じられな


いことだがこれは事実であり現実なのだ。これがもし小説の世界だ


と赤面する可愛らしい女の子の姿が描かれ人差し指同士もくっつけ




「あのぉ、いきなりでびっくりしましたぁ。お名前教えてくださ


い。それとお友達から始めませんかぁ?」と、言うであろう。


でも、そんなことはなかったのだ。先に言っておく。私はこの男は


好きではない。好きでもない男に好かれようと努力する必要もな


い。だから、私は今まで通りに自由に生きる。そして同時に一生大


切にすると言い放ったこの男を「幻滅させてやる!」と決めた日で


もあった。

 


 「おはよう」



 家のドアを開けたら男が立っていた。いつの間にか私たちは一緒


に登校することになっていた。私はこの男に意地悪をしてやろうと


わざと遅れて準備をした。時間にすると5分ぐらいであっただろう


か。だが、この男は何食わぬ顔顔で



「さぁ、行こうか。」



と一言。


この冴えない男の名前は君尾愛須である。そしてその彼女、私の名


は気楽鈴葉だ。告白の申し出を付けてから1ヶ月が過ぎようとして


いる頃であった。

 

 今は学校に向かう途中にある架道橋の下を過ぎようとしていた時


ふとしたことに気がついた。彼がとてもふらふらしながら歩いてい


たのだ。だから、なんという意味もなく聞いてみた。



「昨日夜更かしでもしてたの?」



「ちょっと用事があったからね」



そんなたわいもない話をしていたら ゴォォォォォ と、デカい音


を立てたトラックがやってきた。架道橋の下に入りトラックが横を


通り過ぎようとしたとき コツッ ふとしたら私は道路に飛び出し


ていた。石につまずき転んでしまったのだ。



「鈴葉〜掴め!」



そう言って私は彼の手を掴み彼は私を引っ張り歩道に2人で倒れて


いた。私は半泣きで彼に言った。



「本当に助けてくれてありがとう。」



そしたら彼は、そっと私の手を握り



「そんなこと言うな。俺は身を挺してでもお前を守る。それとこれ。」



そう言って彼は手紙を手渡してきた。開けて読んでみる。内容は



「高校2年生の始業式が始まりいきなり紙を呼び出し告白をした。君は嬉しい返事をくれ、今もこうやって楽しく付き合ってくれている。こんなに冴えない僕であるがこれからも見守っていて欲しい。本当にありがとう。」



このような手紙が書かれたものが入っていた。もう涙腺が崩壊して


涙が止まらなくなっていた。泣き止んだ時にはもうサハラ砂漠くら


いに枯れているだろう。もう脱力しただただ下を見て泣くしかでき


なかった。そこに彼はそっと抱きしめて私を包んでくれた。


そして彼が夜更かしをしていた理由は、これなのだと心の中で思っ


た。



      そして、まだ私はこの男を好きではない。






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