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閑話 その後(晃視点)

晃視点です

『災禍』滅亡からを晃がまとめました

 あれから。

 姫様と守り役様達の『呪い』が解けて『災禍(オズ)』が滅びたあと。


『バーチャルキョート』がめちゃくちゃになって、タカさんが急遽応援に入った。

 でもタカさんだけじゃどうにもならないってなって、トモに「手伝って」ってお願いした。

 トモはぶーぶー文句言ってたけど、おれと竹さんでお願いしまくった。結果トモがデジタルプラネットにカンヅメになった。


 ハルをはじめとする安倍家の皆さんはあっちこっちに連絡入れたりして大忙しだった。

 姫様達も熱だして寝込んだ。当然竹さんも。

 トモは竹さんについていたがったけど当の竹さんが「お願い」ってかなり頼み込んでくれてたから、仕事が終わるまでトモはデジタルプラネットでがんばった。


 どうにかみんな落ち着いたのは七月の終わり。

 八月に入ってすぐヒロがうっかり竹さんのお父さんにトモのことバラしちゃって一騒動起きた。

 それが落ち着いて竹さんが元気になってから、トモと竹さんはお世話になった神様方への御礼行脚をはじめた。

 神様方だけじゃなくて安倍家を通してお世話になったひと達にも御礼に行った。


『異世界の姫』『黒の姫』『北の姫』色んな名前で竹さんのことは伝わっていた。もちろん他の姫のことも。

 でも菊様が「竹以外は表に出ないほうがいい」っておっしゃって、あちこちに御礼に行くのは竹さんと護衛のトモの役割になった。


「『願い』をかけたのは竹だから」と菊様がおっしゃった。だからいろんなことが片付いた報告と御礼は「竹が行きなさい」って菊様がお決めになった。


 それに「竹はもうあちこちで目撃されてるから」「今更見られても問題ないでしょ」って。

 年明けに安倍家に保護されて完全覚醒したあと、竹さんはあちこちの結界の確認に向かった。そのときにいろんなひとやヒトでないモノに見られた。だからあちこちへのご挨拶も御礼も竹さんの役割になった。

 生真面目な竹さんは文句言うことなく素直に了承した。トモがぶーぶー言ってたけど無視されてた。




 それからおれ達はあちこちの仕事に駆り出された。

災禍(オズ)』が話していた京都の退治しきれていなかった『悪しきモノ』の退治だったり、神様方から依頼された余所(よそ)の問題解決だったり。

 姫様達や守り役の皆様もまとめて『安倍の主座様直属』になったから、霊玉守護者(たまもり)のみんなだけじゃなくて姫様達にも守り役の皆様にもしょっちゅう会った。

 仕事だけじゃなくて、一緒に修行したり遊んだりした。


 そうやって過ごしているうちに一年経ち二年経ち、姫様達は順に二十歳になった。

 どなたも二十歳の誕生日を過ぎても元気に生きていた。

『呪い』は解かれたと、完全に証明できた。




 竹さんが二十歳の誕生日を迎えた翌月、ふたりが今生初めて出逢ったのと同じ日にトモと竹さんは結婚式を挙げた。

 籍は竹さんの十八歳の誕生日に入れていたけれど「本当に二十歳過ぎても生きられるか」とこわがっていた竹さんのために区切りとしてトモが結婚式をすることを決めていた。

 ふたりが本当に『しあわせ』そうで、おれまでうれしくて泣いた。泣きすぎてひなに怒られた。


 おれとひなは大学の卒業式のその日に婚姻届を提出、翌日に結婚式を挙げた。

 その翌年には第一子が生まれた。

 おれとひなも、他のみんなのところもどんどん子供を授かったけど、トモと竹さんのところはなかなか子宝に恵まれなかった。

「絶対トモが竹さん独り占めするために避妊してんだよ」なんてみんなで笑ってた。

 でも、三年経っても五年経っても子供ができないことに生真面目な竹さんが思い詰めていったからなるべく話題に出さないように気をつけた。


 おれとひなはなんで竹さんに子供が授からないのかなんとなく心当たりがあったから「気にすることないよ」「『そのとき』が来たら授かるよ」ってずっと言ってたけど、とうとう竹さんは泣き暮らすようになった。ごはんも食べられなくなってトモがひなに「助けて」って連絡してきた。


 連絡を受けてひなは菊様に会いに行った。そうして菊様にも神様方にも許可をもらって、竹さんに会いに行った。


 おれとひなの前に現れた竹さんは、ちょっと前に会ったときと別のひとみたいになってた。

 ご実家の集まりのときにお父さんが余計なことを言っちゃったのを聞いちゃって、それが引き金になってマイナス思考が加速しちゃってボロボロになっちゃったらしい。


 ひなとふたりソファに座った竹さんはボロボロ泣いた。

「私はトモさんにふさわしくない」「私がいたら迷惑になる」「私は欠陥品だから」「やっぱり私は『災厄を招く存在』なんだ」「罪人だから子供が来ないんだ」


 ひなの『光』が竹さんに言葉を吐き出させる。それをひなは全部受け止めた。

 そうして、ひなは言った。


「竹さんとトモさんの子供は、もういます」

「その子は今、現世に来るための修行中なんです」

「あなた達の子供として生まれてくるために、がんばってるんです」

「修行が終わるまで、もうちょっと待っていてあげてください」


 ひなの言葉に、竹さんは泣いた。

 泣いて泣いて、泣き疲れてようやく眠った。

 トモがめちゃめちゃ感謝してくれた。

 目が覚めた竹さんはトモといっぱい話し合ったらしい。トモがお礼の電話をかけてきた。


 ふたりはひなに言われたとおり、まだ見ぬ赤ちゃんに毎日話しかけた。

「がんばれ」「待ってるよ」って。

 そうしているうちに竹さんの身体もココロも落ち着いた。

 その甲斐あってか、竹さんのおなかに新しい生命が宿った。

 連絡をもらってすぐにひなと会いに行った。



 ひなの顔を見るなり竹さんは涙を流してひなに抱きついた。ひなも泣きながら竹さんを抱きしめた。

 トモがめずらしくオタオタしてた。

「まだ六週目で、これからどうなるかわからないらしいが」って心配してるから、竹さんのおなかの子供に声をかけてみることにした。


 ひなとふたり手をつないで、竹さんのおなかに空いた手を当てた。

 ―――思ったとおりの、知った気配がした。

 そっと閉じていた瞼をあけると、ひなと目が合った。

《やっぱりだね》

《よかったわね》


 ふたりで微笑み合った。

 竹さんのおなかの赤ちゃんに声をかけた。

《よかったね》

《がんばったね》

 赤ちゃんはうれしそうに笑った。


《これからがんばって大きくなるんだよ》

《ちゃんと大きくなって、元気に出てくるのよ》

 ひなとふたりで励ます。赤ちゃんがうなずいたのがわかった。


 竹さんもトモも心配してるから「多分大丈夫だよ」って教えた。

以前(まえ)に話した子がちゃんと来てますよ」ってひなが言ったら竹さんもトモも喜んだ。


「名前なんにしよう」ってふたりがオタオタしだした。

「この子は以前どんな名前だったのか、わかるか?」ってトモに聞かれた。

 知ってるけど、そのまんま伝えるのはマズいよねぇ。

「わかるけど……。ちょっと今の時代には合わないっぽい名前なんだよねぇ…」


 ウチの長男も前世の名前がわかってる。

 ウチの長男は『お師さん』の生まれ変わり。

 おれ達の霊玉のもとになった『(まが)』と呼ばれていた存在の育ての親。

 現世でまた彼の父親と成るためにおれとひなのところに来てくれた。

 でも僧名をそのまんま名付けるのはどうかなぁって、一文字だけをとって名付けた。


 ウチのそんな事情をトモも竹さんも知ってる。

 だからおれの説明にも納得してくれた。


「前世の名前は気にしなくていいと思うよ?」

「トモと竹さんの好きな名前にしたら?」

 そう正直に伝えたらトモも竹さんも「うーん」って悩みだした。


 そんなふたりにひながちょっと考えて、言った。

「『アン』はどうですか?」


「『あ』は『はじまり』の文字」

「『ん』は『おわり』の文字」

「あらゆる物事には『はじまり』と『おわり』がある」

「この子を授かったということは、竹さんにかけられてた『呪い』が完全に『おわり』だということの証。

 新しい『しあわせ』がこれから『はじまる』という証」

「この子は『おわり』と『はじまり』の象徴」

「『はじまり』の文字と『おわり』の文字を組み合わせて『アン』はどうですか?」


「トモさんと竹さんも二音の漢字一文字の名前でしょ?

『杏』て漢字にしたら竹さんと同じ植物の名前。

『おそろい』っぽいんじゃないです?」


『おそろい』にふたりはすごく喜んだ。

「もうそれしかない!」って決めてしまった。


「腹の子は男か女かわかるか?」

「女の子みたい」

「なら『アン』でもおかしくないか」

 ホッとするトモに竹さんも安心した。ふたり見つめ合って微笑み合ってる。


《多分女の子に『した』のよね……》

 そっと思念で伝えてくるひな。

 うん。多分そうだね。元々は性別なかったみたいだったもんね。男の子だったら自分の子でもトモが嫉妬するだろうってわかってたんだろうね。


「『アン』」

「あなたの『名』は『アン』」

 やさしくなでられて、おなかのなかの『その子』が喜んだのがわかった。



 アンちゃんはおなかに宿ったときから高霊力保持者だった。それがどんどん成長するもんだから母体の竹さんも体調を崩した。

 大騒ぎの妊娠期をどうにか乗り越え、アンちゃんは生まれ出た。

 出産時はおれ達も守り役様達も全員駆り出された。無事に生まれ出てくれてホントによかった。


 弱りきった竹さんにトモがくっついてないといけなかったからアンちゃんは黒陽様が中心になって守りお世話した。


 黒陽様にも守り役様達もアンちゃんが『誰』なのか、わかった。転生までの期間と竹さんのおなかのなかでだいぶ気配が薄れたけど、やっぱりあの気配は強烈だから、わかるひとにはわかるみたい。


「前世のことは気にするな」

「竹に宿った新しい生命。本人に前世の記憶もない。

 ならばまっすぐに育てることがアンタ達の使命」

 菊様にそう諭されて守り役様達は納得した。


 ちなみに竹さんも梅さんも蘭さんもアンちゃんが『誰』だったか気付いていない。なんでだろうね?

「そのまま黙っとけ」って菊様がみんなに厳命された。



 おれとひなも子供達を連れて何度もアンちゃんのところに顔を出す。

 黒陽様に抱かれて大人しくしているアンちゃんはホニャホニャとしてかわいらしい。


 眉以外全部トモに似てるように見える。今のところ属性特化はない。全属性の高霊力保持者。赤ちゃんだから時々暴走するのを竹さんと黒陽様で抑えている。

 それもあって竹さんは産後があまりよくない。トモがべったりくっついてお世話している。


 それでもふたりは『親の顔』になってた。

 アンちゃんにやさしい眼差しを向ける。


「生まれてきてくれてありがとう」

 そう言ってそっとなでている。




 かつて『災禍(さいか)』と呼ばれていた存在は、ずっとずっと求めていたぬくもりに、しあわせそうに微笑んだ。

「え? 滅びたんじゃなかったの?」と思ってくださった方

よく気付いてくださいました!

だいぶ先の番外編で説明します

気長にお付き合いくださいませ


次回で本編完結です

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