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第三十六話 日曜日ータカさんの話 4

「お前は、それだけの『チカラ』があるか?」



 タカさんの声は静かだった。

 責めることも、蔑むことも、押し付けることもない。

 ただただ俺の実力と覚悟を、俺自身に計らせようとしていた。


 チカラ。

 アキさんのようなチカラ。


 降りかかる火の粉を自らはねのけられるような。

 逃げようとする相手をつかまえて包み込むような。


 そんなチカラが、俺にはあるか?


 俺は退魔師としてはそれなりの実力だと自負している。

 安倍家の主座様直属と認められる程度には実力はある。

 ただ、彼女に降りかかる火の粉のレベルがわからない。

 仮にあの『(まが)』レベルが襲ってきたとしたら、俺ひとりではとても太刀打ちできない。


 答えることもできず黙ってしまった俺に、タカさんは困ったように微笑んだ。


「口先だけなら誰でもなんとでも言えるよ。

 だけど、それを裏付けるだけの実力がないと、彼女はお前を受け入れられない。

 オミがアキちゃんを受け入れたのは、アキちゃんが強かったからだ。

 アキちゃんは『一族の悪意からもオミ自身からもオミを守る』と誓った。

 それができるだけの『チカラ』があった。

 だからオミはアキちゃんを受け入れた」


 その『強さ』で、アキさんはオミさんを守った。強くした。しあわせにした。


「お前は、どうだ?」


「お前は、『竹ちゃんを守る』側か?

 それとも『竹ちゃんに守られる』側か?」


「共に歩むことができるだけの『強さ』が、お前にはあるか?」


 何も言えない俺にタカさんは一瞬痛そうな顔をした。

 けれど、すぐに真剣な顔になり、さらに言った。


「――竹ちゃんの背負っているものは、オミの背負っていたものよりもずっとずっと重い」


「お前は、それを共に背負う覚悟はあるか?」


「もうすぐ死んでしまう彼女と、生きる覚悟は、あるか?」



 何も答えられない。

 何ひとつ答えられない。


 指摘されてわかった。

 俺にはなにもない。

 チカラも、強さも、覚悟も。


 真っ直ぐに見据えてくるタカさんの目。

 その、強さ。

 それを受け止めるだけの強さも、はね返す強さも、俺には、ない。


 ぐらり。

 揺らぐ。


 俺は、どうすればいい?

 俺は、彼女のそばにいてはいけない?

 俺は、彼女といられない?


「タカ」


 ぐらぐらしていたそのとき。

 黒陽の声がした。

 

「もういい」


 言葉の意味がわからなくてのろりと顔を向けると、そこには穏やかに微笑む亀がいた。


「――ありがとう。姫のことをそこまで考えてくれて」


 タカさんに向けるやさしい眼差しに、何故か俺がぐっと詰まった。


「だが、もう十分だ。

 これは我らの責務だ。我らの罪だ。

 お前も、トモも、巻き込むのは、違う」


 静かに言葉を落として目を伏せた黒陽は、ごまかすようにパッと顔を上げた。


「お前達のそばは居心地がよくて、ついうっかり忘れていた」

 軽い調子でそんなことを言う。


 そして黒陽は何も言えず固まってしまった俺に顔を向けた。


「トモ」

 やさしい声だった。


「今タカが言ったことは気にするな。

 歳をとると若造のやることに口を出したくなるものなんだ」


「私もよく余計なことを言って息子達に煙たがられた」なんて冗談めかして言う。


「姫のことをお前が背負う必要はない。

 姫のことは守り役の私が負う。

 姫の責務も、私の責務も、我らのものであって、お前が負うべきものではない」


 淡々と、ただ淡々と黒陽は言う。


「たとえ『半身』でも。『半身』だからこそ。

 お前に負わせるわけにはいかない」


「―――」

 口を開いたけれど、なにも出てこなかった。

 そんな俺に黒陽はなんてことないように話を続ける。


「姫は生きてあと数年だ。

 その間に、時々でいいから会ってやってもらえると助かる。

 姫はお前の前ではのびのびしている。

 食事もよく食べるし、何よりよく眠る」


 それは、俺はこれからも彼女に会えるということか?

 会えるけれど、それ以上深入りするなということか?


「――お前には酷なことを言っていると理解している」


 フッと口の端を上げて黒陽は言った。


「それでも、これは我らの責務なんだ。

 お前が負うべきものではない。

 だから、お前は何も気にせず、今までどおり暮らせ」


 これで話は終わり。

 そんな態度だった。

 タカさんも黒陽の話をじっと黙って聞いていた。


 今までどおり。

 彼女に会う前のように。

 飯食って家事して学校行って、修行してパソコンいじって寝て。

 そんなふうに、平穏無事に、暮らす。


 彼女のいないところで。


 時々彼女に会う。今日のように。昨日のように。

 それはそれでしあわせだろう。

 それはそれで楽しいだろう。


 でも。

 それでいいのか?


 ひとりで責務に立ち向かう彼女に背を向けて、俺はそんなふうに暮らすことができるのか?


「――嫌だ」


 ポロリと、言葉がもれた。


「そんなこと、できない」


 できない。そんなことできない。

 彼女をひとりにするなんて。

 彼女がひとりで苦しむなんて。

 それを見ないフリするなんて、できない!


「出会ったんだ。

 彼女を知ったんだ。

 今更出会わなかったことになんか、できない」


 必死に言い募る。

 黒陽は困ったように顔をゆがめた。

 タカさんはニヤリとちいさく笑った。


「チカラが足りないならチカラをつける。

 覚悟がいるなら覚悟する。

 だから、そばにいさせてくれ!

 俺にも負わせてくれ!

 彼女を、ひとりで苦しめたくないんだ!」


 必死に黒陽に詰め寄った。

 じっとその目に訴えた。

 なのに黒陽はひとつため息をついたあと、フッと笑って目を細めた。


「――その気持ちだけで十分だ」

「黒陽!」


「トモ」

 タカさんの強い呼びかけにのろりと顔を向ける。

 いつもは見せない真面目な顔が、そこにあった。


「彼女を『好き』なのは、お前の自由だよ。

 いくらでも惚れたらいいし、ポンコツになればいい。

『好き』って言って『そばにいたい』って言えばいい。言うだけは自由だ。――でも」


 タカさんはどこまでも静かに言葉をつむぐ。


「本当に彼女のそばにいたいなら、チカラと覚悟が必要だ」


「でないとあの子は、お前まで背負ってしまう」


 じっと俺を見つめるその目はどこまでも静かだった。

 責めるでも憐れむでもない。

 ただ事実を告げているだけ。

 それがわかるから、何も言えなかった。



 言葉に窮する俺にタカさんはため息をついた。

 気持ちを切り替えるように「ふう」と息をつき、だらりと姿勢を崩した。

 机に両腕を乗せて組み、ポツリと机に向けてこぼした。


「あの子、オレ達にも甘えないんだよ」


 どこかさみしそうに、そう言った。


「あの子は誰にも甘えない。

 自分が苦しすぎて甘えられない。

 甘えたら巻き込むと思っている。

 甘えたら重荷を背負わせることになると思っている」


 そのとおりだと俺も思うから何も言えなかった。

 黒陽も黙ってただうなだれている。


「あの子は苦しんでる。

 苦しすぎて、苦しいことに気付いていない。

 ただ生きるだけで精一杯だから。

 ――その気持ちも、オレは、わかるんだ」


 最後の言葉は消えるようにちいさかった。

 いつも陽気なこのひとの過去を知らないことに今更気が付いた。

 このひとにどんな過去があったのだろう。

 どうして竹さんの苦しみを理解できるのだろう。


 何か言いたかったけれど何といったらいいのかわからなくて、ただじっとうなだれるタカさんを見つめた。


 タカさんはぐっと顔を上げた。

 そのまま両手を後ろについて、天を仰ぐような姿勢になった。


「オレは、ちーちゃんに救われた。

 ちーちゃんは、オレがずっと隠しておくつもりだったものをこじ開けて、受け止めて、受け入れてくれた。

 受け入れて、愛情を注いでくれた」


 そこまで言って、目を閉じた。


「あのひとは、オレの女神なんだ」


 ポツリ。

 こぼれた言葉は祈りのようだった。

 感謝とか愛情とか、そんなあたたかくて強い気持ちがこもっていた。


 タカさんは千明さんのことを『女神』『女神』と呼んでいる。

 それは知っていた。

「べた惚れだよなあ」「バカップルだよなあ」なんてみんなで笑っていた。

 でも。


 ただ好きだから『女神』じゃない?

 べた惚れしてるから『女神』と呼んでいるんじゃない?


 救われたから。

 自分を救ってくれた女性。だから、『女神』?



 ゆっくりと瞼を上げたタカさんは、天井を見上げたまま語った。


「オミはアキちゃんに救われた。

 誰からも蔑まれて無価値だとバカにされ続けたオミを、アキちゃんはその強さで守った。

 守って、包んで、愛情を注いだ」


 オミさんに守られているような小柄な女性が実はオミさんを守っていた。

『強さはひとつじゃない』いつか聞いたハルの言葉が蘇った。


「お前は、できるか?」


 身体を起こしたタカさんはまっすぐに俺を見つめた。


「オレよりも、オミよりも重いものを背負っているあの子を、救うことができるか?

 それだけの覚悟とチカラが、お前にはあるか?」


「―――」

 何ひとつ答えられない俺に、タカさんはちいさく息をついた。


「霊玉の話も聞いたよ」

 サラリと告げられてグッと詰まる。

 タカさんは机に組んだ腕を乗せた。


「霊玉を渡したら竹ちゃんはどっかに行くと、お前はそれを心配してるんだろ?」


 ハルが話したのだろうとわかったので、のろりとうなずく。


「どっかに行ったらマズいのか?」


 ズバッと言われ、二の句が告げなかった。


「今までもそうだったんだろ? なんで今回に限ってどっかに行ったらマズいってなるんだ?」


「―――」

 それは、だって。

 どこかに行ったら彼女はひとりで無理をする。疲弊して死んでしまう。

 そう思うのに、喉元まで出かかっているのに、言葉にならなかった。


「どっかに行くのがマズいなら、ついていけばいい」


 サラリと簡単そうにタカさんは言う。

 ついていく。

 そんなこと、考えたこともなかった。

 そんなこと、できるのか!?


「ついていけるだけのチカラがないってお前がわかってるから、行かせまいとしているんじゃないか?」

「―――」


 指摘されて、理解した。

 そのとおりだ。

 俺は、彼女についていけるだけのチカラがない。

 それを俺自身が理解しているから考えたこともなかったんだ。

 だから、せめて行かせまいとあがいて、霊玉を渡さなかった?

 

 何も言えずうつむく俺に、タカさんはため息を落とした。



「……竹ちゃんは、大変な子だと、オレも思うよ」


「タカ」黒陽がちいさく呼びかけたけれど、タカさんは気付かないフリで続けた。


「責務があって、罪を背負ってる。

 長く生きられないから間違いなくお前は遺される。

 ハルよりも実力があるってことは、お前ではとても太刀打ちできない」


「タカ」黒陽が強めに制止した。それでもタカさんは止まらない。


「やさしくて思いやりがある子だから、他の人間に自分の苦しみを明かすことはしない。

 共に歩むことなんて許すわけがない。

 頑固な子だからなかなか思い込んでることを変えられない。

『自分は災厄を招く娘だ』と信じて疑わない」


 黒陽は黙ってうつむいた。

 黒陽もそう思っているのだろう。


「そんな子と共に在ろうと願うなら、お前が『強く』ないと、無理だ」


 のろりと顔を上げる。

 俺はさぞ情けない顔をしているのだろう。

 タカさんは一瞬眉を寄せた。

 でもすぐにキッと表情を引き締めて俺に告げた。


「『ただの友人』として付き合うだけなら、そんな『強さ』必要ない。

『ただの支援者』ならば必要以上に深入りする必要なんてない。

 でも、お前は『違う』んだろう?」


 強い眼差し。

 俺が『そう』だと確信している目。


「『ひとりの男』として『半身』と過ごしたいんだろう?」


 『ひとりの男』として。


 そう。

『ただの友人』じゃない。『支援者』でもない。

 俺は、『ひとりの男』として彼女のそばにいたい。

 彼女を『しあわせ』にしたい。

 彼女の苦しみから救いたい。

 彼女に笑っていてほしい。


 だから、のろりとうなずいた。

 タカさんも黒陽も黙っていた。


 沈黙が流れる中、タカさんが口を開いた。


「オレもオミも、妻の『強さ』に救われた。

 お前はどうだ?

 ちーちゃんのように。アキちゃんのように。

 お前には、あの子を救えるだけの『強さ』があるか?」


「―――」

 何も言えない俺にタカさんはさらにたたみかける。


「戦闘力とかじゃないぞ?

 まあそれも必要だろうが。

 ココロの『強さ』の話だよ」


 わかってる。理解している。

 揺らぐ俺にタカさんはちょっと口の端を上げた。


「霊玉にしがみついてるようじゃ、とても彼女を救えるだけの『強さ』は持てないんじゃないのか?」


 俺ををからかうように、発破をかけるように、そんなことを言った。



 しがみついてる。

 そう言われても否定できない。

 彼女についていけるだけのチカラがないから、せめて行かせまいとあがいて、霊玉を渡さなかった。

 彼女を救えるだけの『強さ』がないから霊玉にしがみついてる。


 否定できない。

 できない?

 本当に?


 そうなのか?

 本当にそうなのか?


 確かに俺にはチカラが足りない。

 彼女を守れない。

 だから、霊玉を渡さない?


 いや。

 違う。


「……違う」


 そう。違う。

 俺はそばにいられなくてもいい。

 そばにいたいけど、ついていきたいけど、それができなくても我慢できる。


 彼女が無茶しないなら。

 彼女が『しあわせ』ならば。



「霊玉なんかどうでもいい。しがみついてるわけじゃない。

 俺が霊玉を渡すと、彼女はひとりになる。

 ひとりで無茶をする。

 そうして、疲弊して、死ぬ。

 そう思って、それが嫌で、そんなことさせたくなくて、だから、渡さないんだ」


 まっすぐタカさんの目を見て、言った。

 情けないことにボソボソと細い声になったけど。

 そんな俺に黒陽がため息をついた。


「これなんだ」


 やれやれと言いたげな様子に思わずジロリとにらみつけてしまう。

 俺ににらまれても黒陽はどこ吹く風でタカさんに話しかける。


「とにかく『姫が無茶しないなら渡してもいい』と、その一点張りなんだ。

 どれだけ『私がいる』と言っても『他の姫も守り役もいる』と言っても納得しない」


 わざとおどけたように言う黒陽にタカさんはちいさく笑った。

 ムッとした俺を見てやっぱりちいさく笑って、タカさんはひとつため息をついた。

 


「――それはまあそうだろうよ」

 さっきの俺の言葉に対する返答だとわかった。


「彼女には責務がある。

 真面目な彼女は真面目に責務に向かう。

 ときには無茶もするだろう。

 やさしいからひとりで抱えて疲弊するだろう」


 タカさんにもそんな彼女が容易に想像できるらしい。


「だろ? だから……」

 だから霊玉を渡さないんだ。

 そう続けようとしたら、タカさんに先に言われた。


「だけど、それ、ずっと前からだろ?」


 あっさりとしたその言葉に、何も言えなかった。

 チラリと視線を向けられて黒陽がうなずく。


「竹ちゃんは『そういう子』だ。

 そうやってずっと戦って生きてきた子だ。

 それを『嫌だ』というのはお前の価値観だ」


「……………」


「お前には、彼女のやり方を否定する権利も、彼女を止める権利もないよ」



 確かにそうだ。

 俺は弱っちい。

 実力がないから彼女を否定することも止めることもできない。

 彼女を苦しみから救うことも、支えることすらできない。


 じゃあ、どうする?

 俺は、どうしたらいい?


 黒陽の言ったとおり、時々会うだけで満足する?

『半身』と知られないようにして、たまに会う親しい友人くらいの立場で、昨日今日みたいに楽しい時間を過ごす?


 それはそれで楽しいだろう。うれしいだろう。

 彼女にとってだっていいことのはずだ。

 一緒に飯食って、話をして、笑って。

 彼女も楽しそうだった。

 きっと息抜きくらいにはなれる。



 ―――それでいいのか?



 本当に、それでいいのか?



 俺の知らないところで彼女が苦しんでいるのを、俺は許せるのか?


 俺の知らないところで彼女が死んでも、俺は俺を許せるのか?



 ゾワリ。

 身体の中をナニカが(うごめ)く。


 タカさんの言葉を反芻(はんすう)する。

 黒陽の、ハルの話を反芻する。

 俺は足りないものだらけだ。

 チカラも、強さも、実力も、覚悟もない。

 彼女を前にするとポンコツになって使い物にもならない。


 だから、彼女といられない。


 諦める?

 彼女を、『やめる』?


 俺がそばにいることは彼女の負担になる。

 やさしい彼女は俺を守ろうとする。俺まで背負ってしまう。

 俺が彼女を守りたいのに。

 俺が彼女を背負いたいのに。



 ―――そうだ。



 ゾワリ。ザワリ。

 風が吹く。


 そうだ。俺は、彼女を守りたい。

 彼女のそばにいたい。



 彼女の、そばにいたい!



 ゴッ!

 俺の中に風が立ち上がった!

 激しい突風は足元から天に向かって吹き上がる!

 俺の魂を鼓舞する!



 足りないなら足りるようにするまで! 

『呪い』がある? それがどうした。

 責務がある? だからなんだ。

 そばにいたい。甘やかしたい。しあわせにしたい。助けたい。

 彼女を諦めることなど、できない!


 できない!!



 うつむいて目を閉じる。

 すうぅぅぅ、息を吸う。

 一度止めて、はあぁぁぁぁ、と吐き出す。

 精神を落ち着けるための儀式。

 冷静になるためのおまじない。

 そうして、ゆっくりと顔を上げ、瞼を開けた。


 タカさんの目をじっと見つめる。

 黒陽の目をじっと見つめる。

 ふたりとも俺のまなざしを正面から受け止めてくれた。


「――『今』足りないから、どうした」


 グッと拳を握る。


「『今』弱いから、なんだ」


 ふたりに向けて言葉を吐き出す。


「俺がこれから強くなればいいだけの話だろ」


 ふたりとも何も言わない。

 ただじっと俺を見つめている。


「俺が彼女にふさわしくなればいいだけの話だろ!?」


 ダン!

 机に拳を打ちつける!


「責務も『呪い』も覚悟も、知ったことか!

 俺が彼女のそばにいたいんだ!

 彼女がどれだけ嫌がっても、そばにいたいんだ!」


 ()える俺をふたりとも黙って見つめていた。

 止められないことに励まされるように、さらに()える。


「俺が弱っちいからそばにいられないなら、強くなる!

 今すぐにどうこうできないということは理解している。

 でも、必ず!

 必ず、彼女のそばにいられるだけの『強さ』を手に入れる!

 何年かかっても。どれだけ大変でも!

 もし彼女が死んでしまったら、次に生まれ変わるまで待つ!

 それまでに彼女を支えられるくらい強くなる!

 何があっても! どれほど無謀でも!

 絶対に強くなって、彼女を追いかける!」


「彼女を諦めるなんて、できない!」

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