第二百七話 紹介
身支度を整えてふたりでリビングに顔を出す。
カウンターの向こうで佑輝がゆで卵の殻をむいていた。
「トモ」
「おー」
妻にはキチンと「おはようございます」と挨拶をする佑輝に妻も生真面目に頭を下げる。
くるくると動いていたナツも顔だけ向けて「おはよー」と声をかけてきた。
「手伝うか?」
「うん。配膳お願い。あと、取り皿とか持ってって」
カウンターの内側に回ると土鍋や大鍋が整然と並んでいる。まさかと思いナツの許可を得て土鍋を開けると、ツヤツヤの米が湯気を立てていた。
「………さっき俺達が顔を出してからどのくらい経った?」
「ん? んー……十分? 十五分?」
「そのくらいじゃないか? 計ってないけど」
俺の質問に佑輝とナツはのんきに答える。
「それでなんで土鍋飯が炊けるんだよ。それもいくつも」
ツッコむとナツが得意げに笑った。
「使えるだろ?」
「だな。今度教えてくれ」
「いいよー」
そんな話をしていると黒陽と蒼真様が来た。続いて晃とひなさんも。
軽く挨拶を交わしながら互いの状態を確認し合う。晃も黒陽も蒼真様も「しっかりと回復した」という。
確かに絶好調なのが見て取れる。
俺達霊玉守護者は安倍家の仕事着。揃いの黒のシャツとズボン。軽鎧はさすがに今はつけていない。
黒陽と蒼真様は鎧を外していた。立襟の長袖の上着とズボン。ゆったりデザインで楽そうだ。守り役達の鎧はアイテムボックスから一瞬で装着できるからな。うらやましい。
ひなさんはTシャツにジーンズのまま。ウチの妻はゆったりとした白のチュニックに若竹色のガウチョパンツ。妻も一瞬で衣装チェンジできるからこれでいいだろう。
しゃべりながら全員でテーブルセッティングをしていく。ナツは「あとで食べる」と言う。俺達のあとに西の姫と白露様緋炎様、そのあとでハルヒロと保護者達が食べるだろうから「ヒロと食べるよ」と。
「それなら」とお言葉に甘えて遠慮なくいただくことにする。
ちなみに佑輝は俺達と食べることになった。「いいニオイがするから腹減った!」と半泣きになっている。
「あと梅様と南の姫が来たら食事始めていいんだよな?」
「そうだな。もうじき来られるだろうから、ちょっと待っていよう」
俺の確認に黒陽が答える。
全員そろったら黒陽が時間停止の結界を展開すると言う。
と、廊下からひとの来る気配がした。……なんか人数多くないか?
察したとおり、現れたのは梅様と南の姫だけではなかった。白露様と緋炎様、そしてヒロに先導され西の姫がやって来た。
白露様と緋炎様はベトナムの民族衣装のアオザイみたいな服を着ていた。立襟の身体に沿った長袖の上着。膝下よりも長い丈のその上着は腰あたりからスリットが入って動きやすそうだった。その下に白いズボンをはいている。
白露様は白い上着、緋炎様は赤い上着。どちらも細かな刺繍が品良くほどこされており、パッと見ただけでも高級なものだとわかる。
そしてふたりのスタイルの良さがはっきりとわかる。
おふたりとも女性にしては背が高い。ヒロと同じか少し低いくらいだから百七十ちょっとといったところか。
その長身に、ボン・キュッ・ボンを体現した見事なスタイル。さらに手足がスラリと長い。どこのモデルだ。
癖のある銀髪を優雅に結った白露様に対し、緋炎様は長い赤髪をそのまま流している。どちらも迫力ハンパない。月と太陽の女神とか風と火の女神とかのよう。
そんな迫力美女を従えても見劣りしないのが西の姫。
巫女装束しか見たことがなかったが、今日は洋服だった。
フリルのついた女性らしい優雅な白いブラウスに紺色のタイトなロングスカート。シンプルだからこそ品質の良さがわかる服だった。
長い黒髪は結ぶことなくそのまま背に流し、歩くだけでサラサラと揺れていた。
美女を従えてもそれが当然といえる雰囲気を持った美人。さすがは『白の女王』といったところか。
西の姫の後ろに梅様が続く。彼女も巫女装束ではなかった。
襟ぐりの広く開いた白いブラウスに水色のフリルのミニスカート。下に膝上のスパッツをはいている。髪はポニーテールのまま。
最後尾の南の姫は白いTシャツにエンジ色のジャージ。それ学校指定か部活指定のジャージだろ。名字が刺繍されてるぞ。
Tシャツだけになっても胸があるように見えない。どこをどう見ても男にしか見えない。なんでナツはこのひとを見て『女だ』と断言できたんだ?
席足りないぞと思っていたら離れ専属の式神達がせっせと机や椅子を運んでいた。ヒロの指示らしい。
一番下座に座っていたひなさんが姫と守り役が登場するやいなやバッと立ち上がり晃を立たせ、揃って頭を下げた。
「菊様。こちらへ」とヒロが西の姫を上座に誘導している間に晃を新しく設置された席に押しやり、足りないカトラリーを瞬時にセッティングしていった。
黒陽も蒼真様も姫達が来るのは知らなかったらしい。上座に近い席に座っていたがパッと立ち上がり席を開けた。
そんな周囲につられて俺も妻も立ち上がった。
どこに座ればいいかと妻がオロオロしている間に三人の姫が着席する。一番上座、お誕生日席に西の姫が。その両隣、長辺の両端に梅様と南の姫がそれぞれ座った。
普通に考えたら梅様か南の姫の隣にウチの妻になるはずだ。そう考えてチラリと妻に目をやる。姫達を誘導していたヒロも守り役達も妻に目を向けていた。
なのに注目を浴びた妻は「あ」と情けない声をもらし、一歩下がって俺の背に隠れた! その上俺のシャツをぎゅっとつかんだ。すがるように!
「あ、あの。あの、その」
その様子はどう見ても『俺から離れたくない』と示している。クッソかわいい。俺、愛されてる!
そんな妻にヒロは生ぬるい顔をし、白露様緋炎様は微笑ましいものを見るような顔をしておられた。他の姫達は驚愕を貼り付けて固まっている。
「蒼真。梅様の隣に座って。私はここに」
緋炎様がさっさと南の姫の隣に座る。
梅様の隣に蒼真様、その隣に黒陽が座った。
それならと妻をその隣に座らせ、俺は一番下座、短辺に座ることにした。
黒陽と俺にはさまれた妻はホッとしていた。かわいい。
緋炎様の隣には白露様、その隣にはヒロが座った。
離れ専属の式神がセットした机に晃とひなさん、佑輝が座った。ナツもキッチンから出され、そちらに座らされていた。
詰めたら全員座れないか? と考えていたら《余計なことを言うな!》と頭の中にひなさんの声が響いた。驚いてひなさんに目を向けると、鬼のような顔をして俺をにらんでいた。隣の晃が眉を下げて苦笑している。どうやら晃を通して思念を伝えてきたらしい。
はいはい。黙ってますよ。
そう考えたのも伝わったようで、ひなさんは『フン』と偉そうにうなずいた。こわいこわい。
全員がそろったのを確認した時点で黒陽が時間停止の結界を展開していた。だから安心してゆっくりできる。
「みんな、お待たせ」
全員が席についたところで銀髪美女がにっこりと微笑む。
「ごはんの前に悪いんだけど、ちょっと時間をちょうだい」
赤い髪の美女も妖艶に微笑む。
言ってる内容も声もやることも慣れ親しんだ白虎とオカメインコと同じものなのに、迫力すらある超絶美女の姿だと戸惑いしかない。実際佑輝はガッチガチに固まっている。
佑輝以外が「はい」と返事をするのを受けて緋炎様が立ち上がりにっこりと微笑んだ。
「みんな。本当にありがとう。
みんなのおかげでこのとおり私達の『呪い』が解けたわ。ありがとう」
頭を下げる緋炎様にならい他の守り役達も頭を下げる。こちらも黙って頭を下げた。
「まだ『災禍』を滅するっていう大仕事が残ってるわ。もうちょっと協力お願いね」
「はい」と答える俺達に緋炎様はにっこりと微笑んだ。
「『異界』ではバタバタしててザッとしか紹介できなかったから、改めて姫達を紹介するわね。
まずはこちらがウチの姫。
高間原の南、赤香の王の末娘で戦闘集団『赤香』の近衛第五隊『蘭舞』の隊長。蘭様よ」
緋炎様の紹介を受け、南の姫が立ち上がり「よろしくな!」と男らしい挨拶をする。
「今生の名は田神 蘭。今は十五歳。もうすぐ十六歳。高校一年だ。佑輝は知ってるだろうけど、家は吉祥院で剣道の道場開いてる。一番上の兄貴が府警の特錬員で、ここ数年秋の大会で佑輝と対戦してる」
その説明に「ああ」と思わず声がもれた。俺達が毎年応援に行っている佑輝の対戦相手の身内とは。世間は狹いな。
と、南の姫が俺に顔を向けた。
「『蘭』でいいぞ! オレもお前達のこと呼び捨てで呼ぶから!」
「いいか? 竹」と妻に確認を取るあたりはキチンと配慮のできる人物のようだ。言われた妻はキョトンとし、俺をチラリとうかがった。
かわいい様子にヘラリと頬がゆるむ。うなずいてやると安心したようにうなずきを返してくるかわいい妻。
南の姫に顔を向けた妻は生真面目に「構いません」と答えた。が、その直後、どこか不安げに目を伏せた。どうしたのかと様子をうかがっていたら、なにか考えていたらしい愛しいひとはもじもじと落ち着かなくなった。声をかけようとしたそのとき。
うつむいたままの彼女の手が、そおっと、動いた。
机の下の彼女の右手が、こっそりと俺に伸びてきた!
なんだそのかわいい行動! 他の女が俺の名を呼ぶのが嫌なのか!? 心細くなっちゃったのか!? 甘えたくなっちゃったのか!? 俺を取られそうとか思っちゃったのか!? 心配してんのか!? それとも独占欲が出てきたのか!? 俺、愛されてる!!
こっそりと伸びてきた手を握る。ビクリと跳ねた妻だったが、うつむいたまま手を握り返してきた!
クッッッソかわいい。
「オイ」
「スミマセン」
オッサンが鋭い眼光でにらみつけてくる。
条件反射で謝罪したが妻はキョトンとしている。
妻は俺の手を離そうとしない。それならこのままでいいだろう。どうせ見えないだろうし。
しれっとしている間に蘭様の話は続いた。
「今回はホント助かったよ!ありがとな!」
「ぜんぶ片付いたら手合わせしようぜ!」
「ぜひ!」と佑輝が喜んで声を上げた。笑い声が起きたところで蘭様は着席した。
「じゃあ次ね」と緋炎様が紹介を続けた。
「こちらが白露の主。高間原の西、白蓮の女王である菊様よ」
「白菊よ。私も『菊』でいいわ」
座ったまま偉そうに名乗る西の姫。
「今生の名は神代 菊。高校一年生。ごく普通のお嬢様してるわ」
にっこりと微笑んでそんなことを言う。が、俺は内心驚いていた。
『神代』といえば俺でも知ってる名家じゃないか。
元は貴族。政治家こそ排出していないものの長年京都市中心部に居を構え京都の政治経済の中心となっている家。
そういえば西の姫の今生の個人データは確認していなかったな。必要なかったからな。
そんなことを考えているうちに「アンタ達、よくやってくれたわ。もう少し頼むわね」と菊様の挨拶が終わり、梅様の紹介に移った。
「こちらは蒼真の主。高間原の東、青藍の王の娘で上級薬師の梅様よ」
「梅よ。皆、今回は世話になったわね。ありがとう」
立ち上がり、堂々とさっぱりと挨拶をする梅様。
「今生の名とかも言うの? そう? じゃ。
今生の名は神崎 梅。父親が医者で母親が看護師してるの。私も看護師目指して資格の取れる高校に在籍してるわ。高校一年生よ」
「ウチの姫はすごく優秀だよ! 姫が覚醒したからにはいくら怪我しても大丈夫だからね! 遠慮なく修行しな!」
蒼真様の軽口に笑いが起こる。
「竹様はもう知ってるからいいかしら」と省略しようとした緋炎様だったが、梅様と蘭様が「聞きたい!」「ひとりだけ言わないのはズルいだろ!」と言い出したので言うことになった。
「黒陽さんの主で、高間原の北、紫黒の王の娘の竹様よ」
緋炎様の紹介に生真面目な妻はつないでいた手を離し、立ち上がってピッと姿勢を正した。
「高間原の北、紫黒の『黒の一族』がひとり、竹です。今生の名は神宮寺 竹です。おうちは上賀茂で農業を営んでいます。
皆様、このたびは本当にありがとうございました」
ペコリと綺麗なお辞儀をする妻。『やり切った!』と満足げに微笑んでいるが、俺、ちょっと不満だよ?
「竹さん。それじゃ足りないよ」
指摘すると「え?」とキョトンとする妻。
「ちゃんと『俺の妻だ』って言ってもらわないと」
はっきりと教えたら妻は顔を赤くした。「そ、そ」とアワアワしていたが、やがて諦めたらしい。うつむき、ちいさくなってボソボソと言った。
「……………その……………トモさんの、つ、つ、妻、……です……」
真っ赤になる妻。クソかわいい。俺、愛されてる!
「ありがと」
「ちゃんと言ってくれてうれしい」
着席した妻に顔を寄せてこっそりとささやく。と、愛しい妻はうつむいたままうなずいた。クッソかわいい!
「ハイハイハイ。じゃあ次はアンタ達の紹介するわよ」
呆れたような投げやりな緋炎様の声に顔を上げる。
緋炎様は俺達に構うことなく「ヒロはさっき紹介したけど、改めて」と姫達に話しかけていた。
どういうことかと思ったら「さっき下で保護者達とハルとご挨拶したんだよ」とヒロが教えてくれた。ああ、それで梅様達が来るのが遅かったのか。
ヒロは立ち上がり姿勢を正し、にっこりと微笑んだ。
「『水』の霊玉守護者の目黒 弘明です。安倍家所属の陰陽師です。安倍家主座である晴明のはとこにあたります。このたびは『呪い』の解呪、おめでとうございます」
頭を下げるヒロに姫達も守り役達も礼を返す。
「じゃあ次。この子が竹様の『半身』のトモです」
緋炎様の紹介に俺も立ち上がり背筋を伸ばし姫達に顔を向けた。
「『金』の霊玉守護者の西村 智です。
こちらの竹の夫で『半身』です。
今回は妻の蘇生にご助力いただきありがとうございました」
それで済ませようとしたのにヒロが余計なことを付け足した。
「トモは鳴滝の青眼寺の住職だったおじいさんに鍛えられた退魔師です。あとシステムエンジニアのぼくの父親の弟子で、今回のデジタルプラネットの調査攻略ではものすごく活躍してくれました」
守り役達まで「そうなんだよ!」「トモのおかげで助かった」などと口々に褒めてくるものだからなんだか居心地が悪い。それでも愛しい妻がうれしそうに誇らしそうにしているからまあいいかと放置しておくことにした。
「では次。そっちの子が佑輝です」
自分が振られると思っていなかったのか、ぎょっとした佑輝がバッと立ち上がった。直立不動になり九十度の礼をする。
「ええと、『木』の霊玉守護者の春日 佑輝です。剣道部です。家は山科で刀鍛冶をしています」
オタオタと、それでもこれまでの話を思い出しながらどうにか自己紹介をやり遂げた佑輝。ヒロがやはり補足する。
「佑輝も幼い頃から退魔師として活躍しています。お家は刀鍛冶だけでなく剣道の道場も開かれています。退魔も請け負っておられます」
「あの一撃はすごかったもんな! 落ち着いたら手合わせしてくれよ!」
蘭様にそんなふうに言われ、佑輝はようやく自然な笑みを浮かべた。
「じゃあ次。ナツ」
緋炎様に指名されたナツが「はい」と立ち上がった。
「『土』の霊玉守護者の中村 奈津です。
料理人の修行中で、今二年目です」
「なんで霊玉守護者が料理人やってんだよ」
蘭様のツッコミにナツは苦笑を浮かべ「料理が好きだからです」とだけ答えた。
「ナツは今住み込みで修行中なんです。
あと、祇園の神々の『愛し児』なので、月に一度舞を奉納してます」
ヒロの補足に梅様と蘭様が驚いた。
「『愛し児』!?」
「それで神々の協力が得られたのね」
なんのことかわからないが、梅様蘭様は驚いたり納得したりと忙しくしている。菊様とウチの妻は知っていたからか黙っている。
「で、晃です」
緋炎様の雑な紹介に晃は立ち上がり頭を下げた。
「『火』の霊玉守護者の日村 晃です。
吉野で修験者をしています。
桜井市の高校の二年生です」
「私が育てた子なんですよ」
ヒロが口を出すより早く白露様が自慢気に言った。
「白露が!? なんで!?」
驚く梅様に「まあ色々あって」と白露様は笑ってごまかした。
「白露の養い子かぁ。……そりゃフツーの男にはならないよな」
どこか納得したような蘭様に晃は「そんな」と動揺し、白露様は「すごい子でしょ?」と得意げに微笑んだ。
「つまり白露がいなかったら晃がこんなにすごい男に育たなかったかもしれないってことだな」
「それは否定できませんね」
さらりと肯定するひなさんに「ひな!」と晃が声を荒げる。
「てことは、晃のおかげで『呪い』が解けて『災禍』を滅することができそうなのは、もとをただせば白露のおかげってことか?」
蘭様の超絶理論に当の白露様は「アラ。そうかも」なんてノッている。
「白露のおてがらね!」と緋炎様まで調子を合わせて笑っている。
「てことは、白露が晃を育てることを許可した私の手柄ってことね」
偉そうにふんぞり返る西の姫に「なんでだよ!」と蘭様が笑いながらツッコミを入れていた。
苦笑を浮かべながらヒロが口を挟む。
「晃は吉野の修験者であると同時に伊勢の神々の『愛し児』です。『火継の子』と呼ばれています」
「「『火継の子』!?」」
梅様と蘭様がぎょっとした。
「それ、あれでしょ!? 伊勢の神々と直接コンタクト取れる神様直属の人間でしょ!?」
は?
「『愛し児』の中の『愛し児』と言われる、特別に神様に愛されてる人間のことだよな!?
実在したんだな!」
え?
「………そうなの?」
コソリと隣の妻にたずねると「ごめんなさい、私も初耳です……」と驚いていた。
当の晃も驚いていることから知らなかったらしい。隣のヒロも初耳のようだ。
「うわあ! そんな人間が協力してくれたからあんなにうまくコトが進んだんだな! ありがとう晃!」
蘭様が立ち上がり晃の前に行き両手を取ってぶんぶんと振る。「え」「そ」と晃はされるがままだ。
「それで言うなら竹でしょう」
突然菊様に呼ばれた妻が驚いてぴょこんと跳ねる。
『なんのこと!?』と動揺が顔に出ている。
「竹は高間原にいたときから複数の神の『愛し児』なのよ。しかも抜け駆けや独占を防ぐために神々が共有協定を結んでんのよ」
「「「は!?」」」
梅様蘭様だけでなく当の妻も驚いている。あ。本人に話したことなかったんだったな。
「高間原からヒトだけでなく亡くなったヒトの魂も神々もこの『世界』に移動してきたでしょ?
竹はこの『世界』でも、今も、たくさんの神々の『愛し児』なのよ」
「「はあぁぁぁぁ!?」」
「ええええええ!?」
菊様の説明に梅様蘭様もウチの妻も絶叫する。
「なんで竹が驚いてるのよ!?」
「だって、だって、私、初耳です!」
「なんでだよ!?」
わあわあ叫ぶ三人の姫。
なんで今その情報が解禁されたんだろうな? 責務が果たせそうだからか?
よくわからないが、まあ気にすることでもないだろう。放っとこう。
次回は11/21投稿予定です