保志叶多 6 償い
泣いて泣いて泣いた。
泣いている間ずっとタカが抱き締めてくれていた。ずっと《大丈夫》《がんばったな》と言ってくれていた。時折頭や背中を撫でてくれた。
いい大人がこんなに泣くなんて。年甲斐もない。
いい大人がこんなふうに甘えるなんて。恥ずかしい。
自分でもそう思う。それでも、頭のどこかでこうも思う。
ようやく泣けた。
ようやく吐き出せた。
こいつの『記憶』を『視た』から『こいつは信頼できる人間だ』と心の底から信じられた。
こいつはおれを騙さない。おれから搾取していくものじゃない。
同じように大切なものを奪われた。同じように『世界』を滅ぼそうとした。
おれを『同士』だと、『友達』だと思ってくれている。
おれの『記憶』を『視た』こいつには隠し事も見栄も意味がないと思えて。理解してもらえたことがうれしくて。『同士』だと、『友達』だと思ってくれていることがうれしくて。
自然に、思えた。
こいつはおれの『同士』だ。
こいつはおれの『友達』だ。
『同士』で『友達』のこいつの前でなら、泣いてもいい。甘えてもいい。吐き出してもいい。
こいつなら嫌な顔をすることはない。おれをバカにすることはない。弱みにつけ込むこともしない。
そう、信じられた。
泣いて泣いて泣きすぎてぼーっとしていた。
考えないといけないことも対応しないといけないことあるとわかってはいるけれど、泣きすぎて頭が動かなくてタカの肩にもたれたままぼーっとしていた。
おれが泣き止んだと気が付いたらしいタカが背中をポンポンと叩いて、そっと身体を離した。
《落ち着いた?》
無言でうなずくおれに《そっか》とだけ言ったタカは笑った。
でもすぐに表情を引き締め、まっすぐにおれを見つめ、言った。
《過去は変えられない》
《喪った生命も戻らない》
《犯した罪は消えない》
厳しい言葉にぐっと息が詰まる。
《でも、未来は選べる》
強いまなざしはおれを逃さない。おれを許さない。『己の犯した「罪」を見ろ』『目を逸らすな』と命じてくる。『ちゃんと考えろ』『逃げるな』と迫ってくる。
《これ以上生命を奪うな》
《これ以上『罪』を重ねるな》
その厳しさの中、感じるものがあった。
親愛。友愛。やさしさ。
泣いているときに注がれた言葉が、気持ちが、タカのまなざしから注がれる。
『ひとりじゃない』と。『自分もいる』と。『大丈夫だ』と。
《『願い』を破棄しろ》
《『願い』はもう、お前に必要なものじゃない》
タカがおれの両肩をつかんでいる。
強く支えてくれる。
まっすぐに見つめてくれている。
『ひとりじゃない』と。『大丈夫だ』と。
「……………だって」
それでも不安がポロリと、こぼれた。
「だって、そしたら、おれ……………」
たくさんのひとの生命を奪ってきたのに。
それはなんのためかっていえば、おれの『願い』を叶えるためで。なのにおれが『願い』を破棄したら、これまで生命を奪ってきたひとに申し訳ないじゃないか。
「それに、」
それに、おれが『願い』を破棄したら善人が困る。悪人をのさばらせることになる。また誰かが喰い物にされる。おれの家族のように。
言いたい言葉は浮かぶのに口から出ていかない。ただタカを見つめ返すしかできない。
きっとおれは情けない顔をしていることだろう。すがるような目を向けていることだろう。
そんな自分を自分でも情けなく思うのに、タカはやさしく微笑んだ。
《大丈夫だ》
大丈夫? なにが? 本当に?
《お前がこれまで奪ってきた生命も。
お前がこれまで培ってきたことも。
絶対に無駄にはならない》
「……………」
本当に?
なんでそんなこと言えるんだ?
これまで誰も助けてくれなかった。
熱が出て苦しいときも。じいちゃんの会社が大変なときも。家族がいなくなっていったときも。ひとりになったときも。
誰も助けてくれなかった。
だから『おれがやらなきゃ』って思った。
おれがやらないと。おれががんばらいと。ひとりでやらないと。助けてくれるひとなんていないんだから。
『願い』を叶えるという『アレ』に『願い』をかけた。
じいちゃんの敵討ちを。善人の『しあわせ』を。
そのためにたくさんの生命を奪った。
そんなつもりじゃなかったけど、必要なことだと思ってたけど、結果的におれは―――たくさんのひとを、殺した。
なのにおれが『願い』を破棄したら、奪った生命に申し訳ないじゃないか。
おれがはじめたことなんだから、最後までやり通すべきじゃないか。
あと少し。ホンの少しで『願い』が叶うんだ。これまで三十年やってきたことが完成するんだ。
善人のために。これまで奪ってきた生命のために。おれがやらないといけないじゃないか。
そう思うのに言葉にならない。
ただタカを見つめていた。
そんな情けないおれにタカは目を細めた。
にっこりと、やさしく、でもどこか困ったように微笑んだ。
そのままぎゅうっと抱き締められた。
膝立ちになったタカの胸に頭を押し付けられ、子供のように抱き締められた。
《お前が背負うことじゃない》
《もう自分を開放してやれ》
タカの言葉の意味がわからない。
わからないけれど、強く抱き締められているだけでまた泣きたくなった。
支えてくれて、あたためてくれて、まるでおれが大事な人間のように思えた。
おれは『罪』を犯したのに。たくさんの人を殺したのに。
ようやく理解したこの『罪』を、どうしたらいいのかわからないのに。
《これから償っていけ》
まるでおれの思考を読んだかのように、タカが言った。
つぐなう………。
「……………どうやって……………?」
ポロリとこぼれた問いかけに、タカはおれを離した。
そのことをちょっと寂しく感じたけど、タカはおれの隣に座り直し、肩を抱き寄せた。
驚いたけれどイヤではなくて、そのままタカにもたれかかった。
タカはぐらつくことも嫌がることもなく、おれを支えてくれた。
《そうだなぁ》
つぶやいて《んー》となにかを考えるタカ。手慰みなのか、おれの肩を撫でてくれる。それがまるで子供に戻ったようで、段々と素直になっていくのが自分でもわかった。
《やり方は色々あるよ》
そう言ったタカがおれに顔を向けた。
《例えばオレのやってることなんだけど》
うなずくおれにタカが続ける。
《震災孤児向けの奨学金に協力してる。定期的に金振り込んで》
そんなのがあるのか。
驚くおれにニヒヒッと笑い、さらにタカが続ける。
《耐震工事請け負ってる会社や防災関連の会社に投資したり。防災関係のセミナーやイベント開催するよう色んなとこに声掛けしたり》
「………すごいな」
ポロリとこぼれた本音にタカはニヒヒッと笑った。
《『償い方』って、ひとつじゃないと思うんだ》
それはそうだと理解できたのでうなずいた。
そんなおれにタカは肩に置いた手にグッと力を込めた。
《今のお前だからできることがある》
《今のお前だからこそやれることがある》
まっすぐなそのまなざしに、なにも言葉が出なかった。
ただじっと見つめ返すおれに対し、タカはそっと視線をはずした。
《オレの友達で『ジェイ』ってヤツがいたんだよ》
さっきタカの記憶で『視た』。カナダで出会った友人のひとり。一緒にパソコンいじりに興じ、サナと他数名とホワイトハッカーの会社を立ち上げた人間。
《京都出身で、カナダの大学出たあと京都に戻って一人暮らししてた》
―――京都で、一人暮らし。
まさか。
まさか。
おれが『贄』にした?
ジェイを?
その可能性に怖気が走る。
タカの記憶を『視る』ことで追体験したおれにとってもジェイは今では親しみを感じる人間のひとりだ。
そのジェイを、おれが『贄』にした?
―――殺した?
わななく身体をタカがグッと抱いてくれる。
タカもきっとその可能性に気付いている。
いや。おそらくは確信している。
おれがジェイを殺したと。
なのにタカはおれを責めることも嫌悪を表すこともなく、同じ調子で話し続けた。
《あの頃って、エンジニアもプログラマーもどんどん使い潰されてただろ?
ジェイがいなくなって、サナが――記憶『視た』ろ?『ホワイトナイツ』の代表してるサナ。あいつが、めっちゃ後悔したんだ。「なにかできることがあったんじゃないか」って》
そのあたりの『記憶』は『視て』いない。
おれが『視た』タカの記憶は大学二年生くらいまで。
おれが一人暮らしのエンジニアを『贄』にしだしたのはもっとあと。
確かにそのころはデジタル業界が急成長して、エンジニアもプログラマーも次々と過労死していた。自ら生命を手放すものも多かった。
そういえばそのころだった気がする。三上が「メシを食え」「寝ろ」とうるさかった。前からうるさかったがひどくなった。ビルを建てるときに「食堂と仮眠室を作る」と三上が言った。「そんなのいらない」といくら言っても三上は聞かなかった。ゴリ押しして、ビルができたあとは社内にいる人間全員食堂で昼メシを食うことを勝手に決めた。
《それでサナが『ホワイトナイツ』の働き方を見直して、過剰に働くことを禁止した。ちゃんと寝てちゃんとメシを食うことを義務づけた。勉強会も頻繁にするようにした。いろんな情報共有もするようにした。
サナは一緒に働く仲間を守ろうと、色々取り組んでるんだ》
そうか。三上はおれ達を守ろうとしていたのか。
そんなことが必要だなんて、考えたこともなかった。
なにも言えず黙っていたら、タカがおれの顔を覗き込んできた。
《カナタ、協力してよ》
「は?」
協力? なにを?
《カナタだってエンジニアで、社員抱えてる社長じゃないか》
ニヒヒッと笑い、タカが続ける。
《なにより、世界的に知名度の高い『バーチャルキョート』の開発者だろ》
《そんなカナタの言葉なら、『世界』を動かせる》
《カナタが発信したりインタビュー受けたりして、デジタル業界で働く人間の意識改革してよ》
《そんで、待遇改善して。ちゃんと人間らしい生活が送れるように。労働に対して正当な報酬を得られるように》
《同じエンジニア達が生きやすい『世界』にすることが、お前が『贄』にしたエンジニア達への『償い』になるんじゃないか?》
―――そう、なの、か――?
ポカンとするしかできないおれに、タカはやさしく微笑んだ。
《今のカナタなら『世界』を動かせる》
《今のカナタなら『世界』を変えられる》
『世界』を変える。
そのためにおれはこれまで懸命に取り組んできた。
おれの家族を奪った連中に報復するために。おれの家族を助けてくれなかった京都の人間を抹消するために。おれの家族のような善人がしいたげられることのないように。
そのためにおれがやろうとしてきたこと。
『京都の人間の抹消』
悪人がいなくなれば善人が苦しむことはないと思った。そのためにゲームを作った。『贄』を集めた。異界を作った。鬼を呼び寄せた。
おれが『世界』を変えてやる。
そう思ってずっとやってきた。
悪人しかいないこの『世界』を。善人が搾取されしいたげられるこの『世界』を。おれが変えるとがんばってきた。
でも、それは、三上や野村やその家族の生命も奪うことにつながる。
ジェイや、他のたくさんのエンジニアや、無関係の人間を『贄』にした。必要なことだと思っていたけれど、おれがやってきたことは、おれから家族を奪ったあいつらと同じこと。
おれは『罪』を犯した。
『償い』をしなければならない。
そんなおれが「『世界』を変えられる」とタカは言う。「カナタだからできる」と。
おれが『世界』を変える。
これまで何度も口にしてきた言葉なのに中身が全然違う。
誰かの役に立つために。誰かを助けるために。
そのために『世界』を変える。
そう考えただけで胸のどこかにポッと火が灯った。
あたたかな火がじわりじわりと全身に染み渡っていく。
それでも不安も頭をもたげる。
おれは『罪』を犯したのに。そのおれがそんなことをしても赦されるのだろうか。そんなの『偽善』じゃないか? 赦されるためにやるなんて、間違ってるんじゃないのか?
《『偽善』でもなんでもいいよ》
またおれの考えを読んだようにタカが言う。
《やらないよりはやったほうが万倍いい》
《『偽善』でもなんでも、それで誰かが救われるならいいじゃないか》
それもそうだとスコンと納得した。
「……おれに、できるかな……」
漏れた弱気に《できるよ》とタカは自信満々に断言する。
《お前にはこれまで培ってきたものがある。『バーチャルキョート』という実績がある。金もある。
お前だから、これまでがんばってきた今のカナタだから、できる》
タカの言葉に、強いまなざしに、自信満々な表情に、鼓舞される。『大丈夫だ』と背中を押される。暗闇に浮かぶ灯台のように、光を指し示される。
《オレも協力する》
組んでいた肩を離したタカかおれに向きなおり、右手を差し出してきた。
《一緒に『世界』を変えよう》
一緒に。
『世界』を変える。
自信に満ちたタカに、なにも言葉が出なかった。
ただ差し出された手を見つめ、タカの顔を見つめた。
そんなおれにタカは困ったように微笑み、差し出した手を下げた。
《例えばひとり親家庭や身寄りのない子供の進学支援。例えば才能はあるのに金銭的な問題で進学できない子供の支援。デジタルプラネットで奨学金制度を設けてもいい。支援が必要な企業に対して『バーチャルキョート』の出店を優先的に行うとか、その企業のPRを『バーチャルキョート』でするとか》
つらつらとタカはいくつもの『償う方法』を提案してくれる。そのどれもが納得のものばかり。『あのときにそんなのがあればおれは救われたのに』と思うようなものばかり。
《それから》《他にも》次々に出される提案にコクコクとうなずく。
おれが真剣だとわかったのだろう。タカはうれしそうに笑った。
《もちろんどれも審査が必要だ。そのためのルール作りもしないといけない。
それでも、『バーチャルキョート』の開発者でデジタルプラネットの社長のカナタなら、できることはたくさんある》
確かに今出された提案はどれも実現できそうだ。うなずくおれに、タカもうなずいた。
《昔お前がしてほしかったことを、片っ端からしていこう。
昔のお前を救うために。
未来の誰かを救うために》
『救う』。
昔のおれを。
未来の誰かを。
おれが。
今のおれが。
『救う』。
胸に灯った火がボウッと燃え上がった!
その熱に、ふと思い出した。
誰かが言っていた。『救う』と。
『おれを救いに来た』と。『まだ間に合う』と。
―――ああ。お前か。日村。
この火は、お前の火か。
何故か、スコンと腑に落ちた。
どういう理屈なのか、どうやっているのか、全くわからないが、この胸に灯る火があの日村のものだということはわかる。
おれを救おうとエネルギーを注いでくれているのがわかる。
タカの言葉に。日村の火に。
あたためられる。赦される。
これまで頑なに抱いてきた『願い』を燃やそうとする。
そんなおれの内心が読めたわけでもないだろうに、タカがタイミング良く言った。
《『願い』を破棄しろ》
厳しい表情で、強いまなざしで告げるタカ。
その厳しさに二の句が継げないでいたら、タカは途端に表情をゆるめた。
《もう降参しろ》
ニヒヒッと。
軽ーく笑う男。
ああ。おれもこんなふうに軽やかになれたら。
ふと、そう思った。
「………できるかな」
《できるさ》
「………手伝って、くれる、か?」
《もちろん》
軽ーくそう言い、タカは再び右手を差し出した。
《『世界』を変えよう。一緒に》
―――ああ。もう。
お前がそこまで言ってくれるなら。
お前が赦してくれるなら。
「―――お前には降参だよ」
勝手に口から出た言葉に、タカは楽しそうに笑った。
その笑顔に、つられて笑みが浮かぶ
笑うなんてどのくらいぶりだろうか。
おれ、笑えたんだな。
笑えたことが自分でもおかしくて。うれしくて。
おれも右手を差し出した。
握ったおれの手をタカはグッと握った。
《やろうぜ》
「ああ」
おれが『世界』を変えてやる。
信頼できる『同士』の笑顔に、これまでとは違う気持ちで誓いを立てた。
タカの手をグッと握った。
うれしそうなタカの笑顔に笑みを返した。
と、ぐらりと視界が揺れた。
突然の目眩にぎゅっと目を閉じた。
ようやく落ち着いて瞼を開く。
と、おれの手を握っている手が違うことに気がついた。
腕をたどって視線を上げる。
「―――日村―――」
タカがいたはずの位置にいたのはまだ若い黒髪の男。
日村だった。
どういうことかと周囲をうかがう。おれは床に押し倒されている。背中に誰かが乗っている。誰か。―――そうだ。南の姫だ。倒されて、南の姫に拘束されて――。
「カナタさん」
状況を思い出していたら、やさしい声に止められた。
どうにか顔を上げると、穏やかな表情の日村がおれを見つめていた。
その目に火が灯っていた。
『人間の目に火が灯る』なんておかしい。そう思うのに、不思議と納得していた。
タカと話している間ずっと、この火がおれに注がれていた。そうしておれの胸に灯った。
『たまもり』
『魂守り』
日村が言った。『自分は「魂守り」だ』と。『おれの「魂」を守りに来た』と。
あの赤い髪の男の記憶を『視た』今ならわかる。これまでのおれは彼と同じだった。同じように『世界』を憎み、壊そうとしていた。あのままだったらおれも間違いなく自分の憎しみの炎に灼かれ、にごって『禍』と成ったんだろう。
そのおれを、おれの『魂』を救ってくれたのはタカ。そのタカを連れて来たのは、目の前の若い男。
『同士』に会わせてくれた。火を注いでくれた。
ああ。認めるよ日村。
お前はおれを救ってくれた。
お前のおかげで、おれは、おれの『魂』は、救われた。
久しぶりに息をしている気がする。
おれがこんなに穏やかな気持ちになれるなんて思ってもみなかった。こんなふうに『世界』がきらめいて見えるなんて思わなかった。
おれは、間違ってた。
おれは『罪』を犯した。
ありがとう。気付かせてくれて。
ありがとう。止めてくれて。
ありがとう。助けてくれて。
間違っていたおれに『自分も同じだ』と言ってくれる『同士』に会わせてくれて。
『罪』を犯したおれを軽蔑することも嫌悪することもなく『一緒に償おう』と言ってくれる『友達』に会わせてくれて。
ありがとう。
ありがとう日村。
なにも言葉にならず、ただ日村をじっと見つめた。
日村は穏やかに微笑んだ。
握った手からキレイなナニカが注がれているようだった。
「カナタさん」
座ったまま、日村がやさしく呼びかけてきた。
「あなたの『願い』を破棄してくれますか?」
押し付けるでも。責めるでもない。
どこまでもおれを尊重してくれる日村に、反発もなにも浮かばなかった。
「……………する」
ただ素直に、答えられた。
そんなおれに日村は嬉しそうに笑った。
「『降参』してくれますか?」
どこまでもおれを大切にしてくれる。おれの『魂』を救おうとしてくれる。
ああ。もう。
タカといい、こいつといい。
こんなの、降参するしかないだろ。
握った手にグッと力を込め、言った。
「降参だ」
満面の笑みを浮かべた日村につられておれも笑みが浮かんだ。
次回は9/26投稿予定です