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ヒロ 37 竹さん蘇生のその後で

お久しぶりです。

どうにか投稿できました!


みっつ前の『第百七十一話 蘇生』の続きからおはなしをはじめます。

ヒロ視点です。

 桜吹雪が舞う中、トモが竹さんを抱いている。

 泣きながら「好き」と「ありがとう」を繰り返しキスをしまくっている。


 抱かれている竹さんも見たことないしあわせそうな顔で「好き」と「ありがとう」を繰り返す。


 ああ。よかったね。生き返って。また逢えて。よかったね。よかったね。思わずホロリともらい泣きしちゃう。


 そうしているうちに竹さんが笑顔のままゆっくりと瞼を閉じた。

 甘えるようにトモに頭を擦り寄せ、身体を預ける。

 そんな竹さんをトモはしあわせそうに抱き締めた。

 しばらくそうしていたけれど、そのままふうっと倒れ込んだ!


「! トモ!?」


 竹さんを抱いたままドサリと倒れるトモに、すぐさま梅様と蒼真様が診察をされる。手首を取ったり呼吸を確認したり。


「ふたりとも大丈夫。気を失っただけだわ」

 梅様の言葉にホッと力が抜ける。


「身体機能も、『(うつわ)』も霊力も問題なし。

 しばらく休めば動けるようになるでしょ」


 そう言って梅様はどこかから大きな布を取り出した。バサリとふたりを隠すようにかける。

 あ。昔竹さんが作ったシーツですか。それは回復するでしょうね。

 地べたに横になってるのはどうにもできないかな? お布団の上でで寝させてあげたいけど、動かせそうにない。ゴメンねふたりとも。


 ふう、と息をついた梅様だったけど、そのままふらりとバランスを崩した!

 ぼくらが反応するより早く蘭様が隣に駆け寄り梅様を支えた。


「おつかれさん。梅」

 ねぎらいの言葉に「フン」と邪険に応えながらもうれしそうな梅様。


「竹はもう大丈夫なのか?」

「おそらくね」

 やりとりするおふたりに、寝そべった蒼真様が口を挟む。


「いくら『賢者の薬(エリクサー)』に『効果がある』っていっても、あんな急激に回復再生させた身体や『(うつわ)』に負担がまったくないわけじゃないから。

 再生させた細胞や霊力が馴染むためにも、竹様はしばらく休まなきゃ」


 なるほど。と納得するぼくらに構わず蒼真様は続ける。


「それにトモのヤツも限界ギリギリだったから。

 高間原(たかまがはら)でトモは黒枝さんの守護のかかった鎧着けて竹様の布かぶってたけど、黒陽さんの結界があってもぼくもかなりキツかったもんね。よくトモ生きてたよね」


 なんか相当危険なことをしてきたらしい。黒陽様が苦笑を浮かべておられる。


「おまけにあの霊力譲渡。黒陽さんが竹様の作ってた霊力石から霊力補充し続けながら回復薬胃に直接流し込んで、ぼくと姫が回復かけまくったからどうにか保ったけど、そうじゃなかったらトモも霊力カラッポになって死んでたよね。無茶するよね。まあそのおかげで竹様蘇生できたんだけど」


 竹さんをビルから救い出したあと。そして『賢者の薬(エリクサー)』をかけたあと。

 トモは文字通り目の色を変えて竹さんに自分の霊力を注いでいた。

 そのおかげで竹さんは助かったみたいだけど、相当危険な行為だったみたいだ。


「『賢者の薬(エリクサー)』を竹に飲ませるときにトモも口に含んだ。

 だからトモにも『賢者の薬(エリクサー)』の効果はあるはずよ」

 梅様がそう説明してくださる。

「だからトモも大丈夫」と。


「今気を失ったのは、疲れと安堵でしょうね。

『竹はもう大丈夫』とトモにもわかったんでしょう。それで気が抜けたのね」


 納得。


「まあふたりでくっついて寝とけば回復するでしょ。『半身』だから」なんて蒼真様が雑に言い、大きなため息を吐いた。


「それよりぼくももう限界。ちょっと休ませて」


 とぐろを巻いて寝る姿勢になるちいさな龍に「ちょっと待ってください。布団用意します」とアイテムボックスから子供用布団を出す。双子のお昼寝用にいつも入れてるものだ。

 

「ダンボールでベッド作りますね。地べたに直接布団はイヤだから」

 言いながら取り出したダンボールをパパッと組み立てて簡易ベッドを作る。ナツがすぐに来て手伝ってくれる。


 そんなぼくに蘭様が声をかけてこられた。

「大人用の布団もあるか?」

「あります。布団も寝袋も、ダンボールベッドもあります」


 本拠地(ベース)設営するのに色々検討したときに災害時に使用するダンボールベッドも提案に挙がった。

 どんなものか実際試してみようと取り寄せて使ってみた。

 どうしても場所(スペース)を取るから今回は採用しなかったけど。


 そんな検討したものは「使うこともあるかもしれないから」とぼくのアイテムボックスに入れていた。


「じゃあ悪いんだけど、梅にもベッド出してやってくれるか」

「蘭!」

 蘭様の言葉にぼくが返事をするよりも早く当の梅様が叫んだ。


「余計なこと言わないでいいわよ!」

「今のうちに休んだほうがいいって」

「休むわよ! 言われなくても!」

「ベッドで横になったほうが休まるだろ?」

「あんた現状わかってんの!? のんきにベッドで寝られる状況じゃないでしょうが!!」

「オレ、なんもしてないから護衛するよ。なんか起きたら起こす」

「だーかーらー! そういう問題じゃないって言ってんでしょうが!!」


 ギャンギャン噛みつく梅様にも蘭様は平気な顔。

 そんな中「ヒロ」と菊様から声がかかった。


「そのベッド、ふたつある?」

「はい」

「じゃ、出して」

「はい」


 指示に従い、ダンボールベッドを取り出す。

 ナツも手伝ってくれてあっという間にふたつ組み上がった。

 ふっかふかのお布団をそれぞれに敷く。


「マットレスがなくて申し訳ありません」

「上等よ」

 答えるなり菊様は天冠をはずし領巾(ひれ)と千早をはずし、着物に袴の軽装でお布団に潜り込まれた。

 白露様が子猫サイズになりその枕元にピョンと飛び乗った。


「じゃ。護衛よろしく」

「承知致しました」


 そのまま掛布団を頭までかぶり、菊様は寝る体勢になられた。


 そんな菊様に唖然としておられた梅様に対し、蘭様はニヤリと笑みを向けられた。


「ホラ。梅も遠慮すんなよ」

「………わかったわよ」


 憮然(ぶぜん)としておられた梅様だったけど、ため息をひとつつき顔を上げられたときにはもうさっぱりとした表情だった。


「蒼真。一緒に寝よ」

「うん。いいよー」


「そのほうがスペース効率いいもんね」と蒼真様が梅様の布団に潜り込む。

 おふたりはそろってなにかの薬を一瓶飲まれた。


「時間停止効かないから『気が済むまで寝る』わけにはいかない。

 ――長くても一時間。起きなかったら起こして」

「承知致しました」

「なんかあったら一時間経ってなくても遠慮なく起こしなさい」


 了承するぼくに、ようやく梅様も横になられた。

 頭まで布団に潜り、すぐに寝息が聞こえてきた。



「――助かったよ。ありがとな」


 ニパッと笑う蘭様に「どういたしまして」と笑顔を返す。


「蘭様もお休みになっていいですよ?」

 そういうぼくに「よせよ」と蘭様は顔をしかめられた。


「さっきみたいにタメ口でいいよ。オレもそうするから」

「ですが」


 ためらっていたら緋炎様から声がかかった。

「気にしなくていいわよヒロ。ウチの姫は仰々しくされるほうが落ち着かないから」

「そーそー! 呼び方も、さっきみたいに『田神くん』でいいよ! それか『蘭』で」


『そんな』とためらうぼくに、逆に蘭様がニッと笑って「『ヒロ』って呼んでいいか?」なんて言う。


 ああもう。仕方ないなぁ。

 気持ちのいいひとに降参した。


「……わかった。『ヒロ』でいいよ。

 でも『田神くん』も『蘭』も呼びにくいから『蘭さん』でもいい?」

「『蘭』でいいのに」

「『蘭ちゃん』にするよ?」

「うえぇぇぇ! それは勘弁!

 わかったよ!『蘭さん』でいいよ!」


 お互いに妥協したところで「蘭さんも休んだら?」と提案してみた。


「オレはいいよ。さっきしっかり休んだから。

 梅と菊は竹の蘇生のあれこれで相当霊力も精神力も使ったからな。

 もう倒れる寸前だったくせに、梅のやつは強情だから」


 困ったように笑う蘭さんには親愛の情が浮かんでいた。




 蒼真様用に出した子供用布団をアイテムボックスに納め、広げたダンボールを畳む。ナツがすぐに手伝ってくれてあっという間に終わった。


 さて。


 ぐるりと状況確認。

 竹さんとトモはシーツかぶせられて倒れてる。梅様と蒼真様、菊様と白露様はお昼寝中。黒陽様はシーツのそばでうつらうつらしておられる。そっとしておこう。


 おやすみ中の皆様の護衛は晃とナツと佑輝がいるから十分だよね。

 じゃあぼくがやるべきことは、現状把握かな。


「式神で現状確認します」

 緋炎様に告げると「ええ。お願い」と返ってきた。

 

 この『異界』に来てすぐに飛ばした式神は情報収集のあとそのまま待機状態にしていた。

 目を閉じてその式神達と意識をつなげる。


 どうやら塀の中は落ち着いているみたい。鬼も出現していないし、さっきぼくらが別に避難していたひと達を本拠地(ベース)に連れて行ったからウロウロしてるひともいない。

 塀の外も誰もいない。鬼もなにも出ていない。無人の、静かな街。


 デジタルプラネットはどうかな。

 あれ。ビルの亀裂が修復されていってる。

 といっても四階はそのまま。普通のひとがいるのに勝手に壁が修復していったらびっくりされるからかな?

 五階にあった大きな裂け目はなくなっていた。今は六階の亀裂がだんだんとちいさくなっていっているところだった。


 ぼくらが今いる結界の中は桜吹雪に覆われてて外は見えない。

 緋炎様にぼくが視たものを報告。

「もう修復されてるの」と緋炎様は苦々しげに眉間にシワを寄せられた。


本拠地(ベース)の状況はどうなってるかしら」

「確認しますね」


 式神を操作して本拠地(ベース)の中へ。

 たくさんのひとがいるから狭そうだけど、ひとまず落ち着いてるみたい。

 ぼくら何も言わず飛び出したからどうしてるか心配だったけど、これなら大丈夫そう。

 とはいえ、念のため確認は取ろうかな。


 スマホを取り出し、電話をかける。

 つながるか心配だったけど数度のコールのあとつながった。


『ヒロさん!?』

「はい。ヒロです。そっちはどうなってますか? 坂本さん」

明日も投稿します

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