表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/573

久木陽奈の暗躍 53 作戦会議 1

いつもより短めです

「いつ行けるんですか?」

明後日(あさって)。七月六日」


 それならバージョンアップの七月十七日まで十日の余裕がある。

 明後日の会社訪問で保志氏が『宿主』と確定できたら、その近くに『災禍(さいか)』は『いる』と考えられる。


 最有力候補はあの社長室兼自宅。

 強力な結界に護られたフロアのどこか。

 もちろん見当違いという可能性もあるけれど、六階に行くことができればそれもはっきりする。


 まずは保志 叶多氏に会うこと。

 会って、彼が『災禍(さいか)』の『宿主』かどうかの判断をすること。


 うまくいけば『災禍(さいか)』の居場所も特定できるかもしれない。

 そうすればそこを目がけて攻めればいい。


 南の姫を覚醒させ、竹さんとともに攻め入ってもらい、斬ってもらう。

 そうすれば、十七日までに『災禍(さいか)』を滅することができれば、晃が戦いに(おもむ)くことはなくなる。『死ぬかも』なんて心配、しなくてよくなる!



「私、行きます」

 すぐに名乗り出た。


「私にもリクエストが来てるんですよね。

 私が行きます。

 それで、今度こそ社長のところに行きます!」


「ひなが行くならおれも行く」

 すぐさま続く晃に目を向けると、私の最愛はにっこりと微笑んだ。

 

「隠形取って行けばいいでしょ?」

前回(まえ)もそうしたんだし》

 思念でも伝えてくる。

 それもそうだと納得して、うなずいた。

 そんな私に晃はうれしそうに微笑んだ。


 その笑顔に励まされ、キッとタカさんに顔を向けた。


「また前川くんに頼んで、私と晃で行きます。

 今度こそ、社長のところに行きます!

 そのための『強運』を、私達は持っています!」


 息巻く私にすぐさま緋炎様が「私達も行くわ」と申し出てくださる。


「私と晃だけで大丈夫です」

「ふたりだけじゃあ『災禍(さいか)』はわからないでしょう」

 そう言う緋炎様ににっこりと笑顔を見せる。


「私も晃も『災禍(さいか)』はわかります」

「「「え?」」」

「以前竹さんの記憶に当てられたときに『視』ました」


「そうなの!?」

「さすがは精神系の能力者…」

 口々に驚かれる。

 それでも守り役様達は同行を申し出てくださった。「何が起こるかわからないから」と。

 それもそうかと考えていたら、それまでずっと黙っていたタカさんが口を開いた。


「――いや。まずはオレが行く」


「いえ! 私が――」と続けようとしたけれど目で留められた。

 しぶしぶ口を閉じると、タカさんは淡々と説明をはじめた。


「なにが起こるかわからない。どんな事態になるかわからない。

 万一に備えて、ひなちゃんは温存しておきたい」


 今回の訪問で社長に会えるかどうかわからない。むしろ会えない可能性のほうが高い。

 もし会えたとしても『災禍(さいか)』の居場所を特定することはできないかもしれない。すんなり帰れるかどうかもわからない。

 神様達に『願い』をかけた当事者である私が生きて残っていれば、次策を立てることも、その策に『運気上昇』を期待することもできるだろうとタカさんは言う。


「バージョンアップが近いということは、『災禍(さいか)』もなにか行動を起こそうとしていることも考えられる。

 慎重に慎重を期して動いたほうがいい」


 その意見に皆様がうなずかれた。私も納得。


「まずはオレが行く。

 ダメだったらちーちゃん。

 それでもダメだったらひなちゃん。

 何度でも挑戦できるようにしておいたほうがいい」


 それは確かにそのとおりだ。

 それほど『社長に会う』というのは困難なミッションなのだ。

 神様達から最大限の『運気上昇』を付与してもらったと聞いているが、それで届くかどうかはやってみないとわからない。


 そこでふと気が付いた。

 最大限の『運気上昇』を付与してもらったのは私だけじゃない。

 ―――そうだ。


 チラリと隣の最愛を見つめる。

 すぐに私の視線に気付いたわんこはにこりと微笑む。


 私の最愛。誰よりも信頼できる、私の唯一。

 神様に愛された、特殊能力持ち。


 ――カチリ。

 パズルのピースが埋まる。

 策が整う。


「――じゃあ、晃を連れて行ってください。

 隠形でなく、普通に」

 私の意見に「晃を?」とタカさんも主座様も意表を突かれたようにまばたきをされた。


「晃も『災禍(さいか)』がわかります。それに」

 ぐるりと皆様を見回して説明をする。


「晃なら対象に触れることができれば――それこそ握手でもすれば、『浸入(ダイブ)』で探ることができます」


 私の意見に皆様が息を飲んだ。

 わざとニヤリと笑みを浮かべて告げる。


「未だに判明していない、社長がどこで『災禍(さいか)』に出逢ったかも探れます」


「――確かに」

 タカさんも主座様もそれが最善だと判断されたようだ。

 皆様それぞれにうなずき、晃に視線が集まる。


「やってくれる? 晃」

「ひなが望むなら」


 私の確認に、愛しいわんこはうなずいた。

 晃が行くなら間違いない。私もうなずきを返した。


「じゃあ、まずは明後日、オレと晃で行こう」

「待ってタカ。私も行くわ」

「私も! 前みたいに隠形とれば大丈夫でしょ?」

「じゃあぼくも」

 守り役様とタカさんが相談するのを聞いていたそのとき、ふと思いついた。


「トモさんも連れて行きましょう」


「トモ?」と皆様がきょとんとされる。

 浮かんだ策を皆様に説明する。


「トモさんも『バーチャルキョート』のシステム作りに関わっていたんですよね。

 今回タカさんが訪問するのはシステムエンジニアとして、千明様の希望を叶えることができるか検討するということではどうですか?

『勉強させるために育ててるエンジニアふたり連れて来た』と言えば、晃が普通に行ってもおかしくないと思うんですけど、どうでしょう?」


 今回はあくまでも千明様の希望を叶えることができるかどうかの話し合い。

 責任者のタカさんに若者ふたりが同行。

 システム担当者と話をし、その勢いで社長に意見を求める。

 

 皆様それぞれに頭にイメージを思い浮かべられたようだ。

「それはいいかも」と納得された。


「もちろん私達も行くわよ!」

 緋炎様がパッと羽を広げて宣言された。


「前みたいに隠形取ってくっついて行くわ!

 社長は確認取れてないけど、社員に高霊力保持者がいないことは確認されているし。

 タカ達にくっついて行けば『承認』も大丈夫だと思うわ!」


 確かに。


「じゃあ明後日はタカさんと晃とトモさんが正面から訪問、それに守り役の皆様が隠形でついていく、という形でいきましょう」

 私の確認に皆様うなずかれる。


「明後日社長に会えなかったら、タカさん、次の約束を取り付けてください。

 その場合、次は千明様、お願いします」

 私の依頼に「まかせて!」と千明様は胸を張られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ