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プロローグ

 ベルン公国は小さな国だ。城の周りを囲むように形作られた公都とその他には小さな街がいくつか。あとは点在する村とそれらを隔てる鬱蒼とした森が広がるだけだ。国を統べるのも王ですらなく、大公だ。


 いつくかの力を持つ国が絶妙なバランスで存在するこの地域においてそれでもこの小さな小さな国が独立を続けていられるのは、なんと言っても国全体に流れる魔法の血による所が大きい。

 この辺り一帯の国々には古くから「魔法」というものが伝わっており、その不思議な力を操ることが出来る者もいるのだが、その数は少ない。他の国では王族や高位の貴族を中心としたほんの一部だけが使える魔法がベルン公国では市民にまで浸透しており日常生活で当たり前使われる。


 その不思議な力は他国の興味と畏怖の対象となり、この小さな国が周りに乱立するいくつもの国と渡り合うのに充分な武器となった。このような国だからこの国を統べる大公家の魔力はもちろん国一番を誇る。


 数ある魔法の中でも最も貴重と言われるのが変身魔法だ。他国においてはほんの少しでも使えると大騒ぎになる貴重な力だがベルン公国においては市民でも使えるものはいるくらいのものだ。もちろん大公家の面々も変身魔法に精通していることで知られている。


 大公、つまりこの国の長は気高い龍に変身することが出来、その炎のひと吹きでこの国に侵入しようとした蛮族を追い返したことで知られている。その妃はそれはそれは優美な白鳥に変身することが出来るし、第一公子は大公の血を引いたのか勇猛な狼に、第二公子はとても早く走れる馬に変身出来る。


 そして公子が二人続いたことから、次は出来れば女の子が、と望まれて生まれたのが末の姫君だ。可愛らしい姫君は何に変身できるのか、そんな周囲の期待を背負って、魔法が使えるようになると言われる10の誕生日に初めて変身魔法を使うと周囲は、彼女を見失った。


 それもそのはず、彼女は変身したのは人の手に乗れそうな程小さな鼠だったのだ。

 同じ小さな生き物でも空を飛べたり、早く走れる生き物だったらまだしも、ネズミとは。これならば重い物を運べるだけ市民になれる者が多い、牛やロバの方がマシ、とあからさまに言うものまでいる始末だ。


 さらに、彼女の魔力は他の大公家の面々と比較して、いや、なんならば少し魔力がつよい市民に負ける程弱いことが分かった。魔力の強さが最大の評価となるこの家においてこれは致命的だった。


 幸い彼女の見目は美しい部類に入ったから大公は直ぐに彼女の魔法を伸ばすことは諦め、勢力結婚のコマとするべく、言語等の教育に力を入れることにした。彼女はその期待に答え美しく、賢い姫君に成長したが、魔力が第一のこの国では何も評価されない。


 幼い頃は美しいと評された姿もその誕生日以降は派手だと言われ、磨いた知力も魔法で簡単に出来ることに時間を掛けてどうするのか、と呆れらるだけ。さらにたまに魔力を使っても周りからは失笑を買うだけだった。ここまで話すと彼女はさぞ悲惨な境遇にあったのだと思うが、彼女は美しく賢く、そして強い姫君だった。


 彼女は自分で自分をより磨き、日々を楽しみ、そして放って置かれがちなのを逆手にとり、好奇心のままに行動した。そうして18になるとそれは素敵な姫君に成長したのだった。


 そんな、彼女に久しぶりに大公から謁見室に上がるよう指示があった。

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