33. 作戦と実行
青は白衣を脱ぐと、自身のロッカーにあるハンガーにかけた。
荷物を手に持つと、隣で着替えていた友人が、寂しそうに話しかけてきた。
「帰るの? 飲みにいこーよー」
「また今度」
「いつもそうじゃーん。たまにはかまって」
とてつもなく目をキラキラさせてコチラを見てきたが、青はプイと視線を逸らす。
「なんか、その過剰な態度が気持ち悪いし、帰る」
「え」
バタンと扉が閉められて、そこで会話は終わってしまった。
病院の廊下を闊歩し階段を下りながら、先ほどまでのやり取りから一変するため、青は気持ちを切り替えた。
人工知能は便利だ。
碧の記憶にあるキナリの画像を人工知能に認識させても意味はないだろう。
けれど、キナリの近くにいた人物は人工知能で特定できる。その後、キナリの動きと近しい人物、行動パターンを碧の記憶から、具現化して人工知能を用いて行動パターン、癖を分析させる。
そうやって事前情報を手に入れれば正気だって見出せるし、音声系AIを使って、キナリの母の声色と近しいものも作り上げられる。
それを効果的に使えばきっと、勝機が見えてくるはず。
青は足早にキャンパスを後にしながら、自分に言い聞かせる。
自分の役割はそう言うものだ。
大丈夫。頭脳戦は望むところじゃないか。そこでこそ、俺がいちばん光るところだ。
AIにキナリの周りの人を認識させることに時間がかかるだろうが、日本は大都市であればあるほど、防犯カメラ、ドライブレコーダーも多い。
死角となるところなどほとんどないのだが、キナリはおそらく知らないだろう。
キナリが魂を移し入れる際、田舎すぎると誰がいなくなった、とすぐ足がつく。
だから、都会の方が田舎よりは好都合なはずだ。
カメラも多いし、潜伏先は地道にやれば見つけることができる。
できるはずだ。
青が自宅に帰り、AIのことを調べ直し、このプランで行こうと練り上げたものはまさに完璧だった。
あとは碧の式であるシロの中にあるキナリの記憶を具現化すれば良い。
碧の家で計画を耳にした鴇は、やはり青には敵わない。そう思って少しだけ卑屈になっていく自分が嫌になる。
人には成長がさまざまなんだから、俺には俺の良さがある。俺は腐っても、しょぼくれても山口家の当主なんだから。
そうやって自信を奮い立たせ、碧を見た。
必ず守るから。




