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狸寝入り  作者: 中森 狸
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出会い系カオス

便利な世の中になりましたね。

安い料金で携帯電話が持てる様になり、ほとんどの方々が携帯電話を利用している。

私が学生時代は、携帯電話など料金が高すぎて、持てなかった物だ。一時期持っていたが、月の使用料が6万を越え、すぐ解約したのを覚えてる。

ちょうど今は普通の『折りたたみ式』が出始めた、そんな時代だった。

その後、庶民にも手が届く物になり、メールもでき、インターネット、カメラやテレビまで。どんどん進化をしている。

だがその反面で、ネット犯罪やら有害サイトなど、様々な問題が発生しているのもまた事実だ。

今、私も身に覚えのない『出会い系サイト』からのメールが、連日送られてきております。


それはいつもと変わらない日の事。何の前触れもなくそのメールはやってきました。

私のメール着信音に設定してある『ヒヨコ』が、いつもと何ら変り無く元気一杯に鳴り響いた。

『ん、メールか。』と何気なく呟き、携帯を開いて見たら、『あなた様に素敵な・過激な出会いをご提供させていただきます。』みたいな内容。

こんなサイトは全く身に覚えがない。ただの架空請求系サイトと判断し、黙殺を試みる。だがそれはほんの序章である事は、その時はまだ知る由もなかった。

それを口切りに、様々な女性からのメールが届く様になった。

昼夜問わず、1日約60件ものお誘いメールが連日送られてきている。

メール拒否設定を施そうと思ったが、しばらく様子を見る事にした。ただどういう手口で来るかが気になっただけ、好奇心が勝った。

寝る際には、メール着信音を消さなきゃならないのが不便だが、まぁ急用なら電話が来るだろう。と思い、相手のお手並み拝見と決め込みました。


まずはオーソドックスに『欲求不満な私の相手になって下さい。』みたいなメールが送られてきた。すぐ後に別の方から『旦那とは冷めきってます。遊びでいいので相手をして下さい。』というメールが届いた。

どこかで聞いた様な台詞だなと思いながら、余裕の笑みを浮かべながらメールを見ていた。

その手のメールがしばらく続いたが、相手業者もなびかないと判断したか、趣向を変えて攻めてきた。

『お礼をするのでして下さい。』やら『お金を払うので抱いて下さい。』やら、我が目を疑ってしまった。

極めつけは女社長と名乗る方から『2500万出すので抱いて下さい。

』というメールが来た。

ただ抱いて欲しいだけなら2500万は出せないだろう。きっととんでもないプレイがお望みなのだと思われる。

きっと私も『2500万は返すから勘弁して下さい。』と言いたくなるようなプレイに違いないだろう。幸か不幸か、その内容は全く想像も付かない。ただきっと私は、親の顔もまともに見れなくなる様なプレイを、強いられると思う。

あと『風俗嬢です。お金はあるので面倒みます。』という、奇妙キテレツなメールもきた。別に私はまだ介護は必要とはしていないのだが・・

介護志望なら出会い系ではなく、老人ホームにでも行って欲しい物だ。職員不足で困ってるらしいし。

ただその際に『元風俗嬢』と言う肩書きはいらないだろう。まぁ一部のおじいさんは、ソコに生きる希望を見いだすかもしれないが。

 

さらに手口を変えてメールは続く。

女帝と名乗る方からは『私の犬になれ、命令だ。』というメールが届いた。

思わずムカついた。そんな私に、さらなる追い討ちが。

別の女性から『小さいからって悩む必要はないですよ』というメールが送られてきた。

私は、生まれて初めて携帯をぶん投げた。

実際に関係があった女性から言われるならわかる。決して喜ばしい言葉ではないけど・・まぁいい。

見ず知らずの人に、そんな事を言われる筋合いなどない。 相手は『千里眼』の持ち主なのか?はたまた妖怪『百目』か?

仮にそうだとしても、その特殊能力を活用して行ってる事は、単なる覗き。日本は平和だな〜っと、こんな事で実感してしまった。

こんな感じのお誘いが延々と続いている。


ふと一つの疑問が沸き起こった。


相手業者は本気でこちら側を、騙す気があるのだろうか??

やってる事は『詐欺師』なのだから、自覚を持ってちゃんとやってほしい物だ。

仮に鮮やかな手口で完膚なきまでに騙されたとしても、私は相手詐欺師を尊敬はしても、恨む事はないだろう。

私は被害者を逆手に取った逆ギレ的な考え方が、無意味だし自己成長にもつながらないから好きではない。

『人殺しが悪い』『泥棒が悪い』こんな事を声を大にして訴えた所で、世の中から犯罪が無くなりはしない。『犯罪者が悪い!』で片付けても、常に犯罪者は一定数は存在するだろう。

犯罪者を否定する行為は無意味だと思う。そんなんで平和になれば誰も苦労はしない。

大切なのは犯罪者に対してどの様に接するか、、自己防衛。『自分の身ぐらいは自分で守る』この認識が大切だと思う。

『被害者が悪い』なんて言ったら最低な言い分かもしれない。でもそのぐらいの気持ちでなければ、明日は我が身になってしまうだろう。

ただ殺されただけでは、新聞の一面を飾る事は出来ない。今の日本はそれほどまでに、犯罪が日常茶飯事な事ですし。


病原菌は別に、伊達や酔狂で人を苦しめてる訳じゃない。普通に生活を営んでるだけ。

人にとって都合の良いものを『善』、悪い物を『悪』で片付けるのも違う気する。

自然動物が強く、たくましく生きていられるのも、そういう悪しき存在が必要不可欠だと思う。

悪い物に対して、免疫力など防衛手段を作り出し、悪い物もそれに負けじと新手の手法を生み出す。

互いが互いに高め合ってるのではないか。

共生は無理な事かもしれないが、共存はしていかなければならない。

だからこそ今回の『架空請求系サイト』も一蹴する事なく、自己成長の糧と受けとめております。


今日も軽快に携帯電話が鳴り響いている。


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