6話 ルドヴィックside 2
ボスッ
自室のソファーに座り先ほどの話を思い返した。
クルムバッハ家の次女、アデリナ嬢か…。
兄のアダルウィン卿は私の2つ下だったから、学園で何度が会ったことはあるが個人的な付き合いはない。
確か、辺境伯の息子にしては落ち着いて物事を冷静に判断するタイプだったはずだ。
長女のペルレ嬢はパーティーでは何度か見かけたことはあるが、明るく社交的なタイプだったな。
それに、ペルレ嬢は絶世の美姫と呼ばれた祖母をもつだけあって、華やかな美女でよく目立っていた。
次男のカーティス卿はクラウス殿下と年が同じで、自由奔放でよく学園から抜け出すつかみどころのない人間だと聞いているが…、末娘のアデリナ嬢は社交場でも見かけたことはないし、学園には行かず領地で兄の手伝いをしていると聞く。
アデリナ嬢がどんな女性かはわからないが、政略とは言え、いきなり王位争いに巻き込まれて災難だな。
クルムバッハ家からすれば、我が家と縁を結んで得られるものなど微々たるものだ。
それに…、アデリナ嬢がどんな方でも私が愛しているのはあの人だけだ。
もう少し粘れると思ったが王命とあらば致し方無い。
はぁーとソファーにもたれかかりベルを鳴らす。
チリンチリン
「お呼びですか?」
呼ばれることをわかっていたかのように燕尾服に身を包んだハンスが部屋へ入ってきた。
ハンスはもともと我が家の暗部(とはいっても暗殺などはしないが)を請け負っている一族の息子で、今は私の専属執事兼、影として働いている。
「ハンス、アデリナ嬢の情報を集めてくれ。できるだけでいい。私はクラウス殿下と今後について話してくる。」
「かしこまりました。これから王宮に行かれるのですか?」
「ああ、もともと会う約束をしていたからな。」
「承知いたしました。それではお帰りになるまでに情報を集めてまいります。」
「よろしく頼む。」
ハンスに言付け馬車に乗り込み王宮へ向かった。
馬車に揺られながら窓の外を見ると光芒が差している。
天子の梯子とはよく言ったものだ。
此度の婚約は我ら第三王子派からすれば、希望そのもの。
愛を捧げることはできないが、せめて大切にしようと心の中でまだ会ったことのない婚約者にそっと誓った。
だんだん登場人物も増えてきたので近いうちに人物紹介を載せます。