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報われない恋の行方  作者: 澄了爾
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12話 靄の向こう

 白い光の靄の向こうに、たくましい背中が見える。

 この背中は誰だ?

 その背中はどんどん、光の向こうへ進んでいく。


 『あっ、待ってくれ!』


 思わず手を伸ばす。

 そのとき、伸ばした手に既視感を覚えた。

 この感覚はとても覚えのあるものだ。

 それも、ずっと前から‥‥。


 

 あぁ‥‥、そうだ、この眩い後姿は兄上だ。





ーーーー*ーーーー*ーーーー*ーーーー*



『兄さま!』


『おや?リヒモンドかい?どうしたの?』


『兄さまが訓練をすると聞いてきました!そばで見ていてもいいですか?』


『いいよ、でも危ないからジャックの傍から離れないと約束できるかい?』


『うん!』



 ジャックの傍で兄上が剣の訓練をしているのを眺める。



『うわ~!ジャック!兄さまはすごいね!ねえ、ジャックと兄さまだったらどっちが強いの?ジャックは兄さまの騎士なんだよね?』


『そうですね。今はまだ、殿下が幼いので私の方が力はあります。ですが、そのうち殿下の右に出る者などいなくなるでしょう。しかし、私はこの剣に懸けて殿下をお守りすると誓いました。私の命尽きるその時まで、殿下に剣を抜かせるなんてことは私がさせません。』


『なら、ジャックはおじいちゃんになっても兄さまのそばにいるの?』


『ええ、私は殿下の近衛騎士です。この身が亡ぶまで、殿下のお傍におります。』



そっか、騎士になれば、ずっと兄さまと一緒にいられるんだ!



『何の話をしているんだい?』


『あっ!兄さま!すごくかっこよかったです!』


『ありがとう。退屈じゃなかったかい?』


『ちっとも!兄さま、兄さま。僕、大きくなったら兄さまの騎士になります!』



 兄さまは少し驚いたように言った。



『リヒモンドが僕の騎士に?どうして?』


『だって、兄さまの騎士になったら、ずっと一緒にいられるんでしょ?僕、おじいちゃんになっても兄さまのそばにいるんだ!』


『ははは、そうか、じゃあ、おじいちゃんになっても私の傍にいておくれ。』


 そう言って、兄さまは僕の頭を優しく撫でながら、少し困ったように微笑んだ。




ーーーー*ーーーー*ーーーー*ーーーー*




「殿下、殿下」



ジャックの呼びかけで目を覚ます。



「珍しいですね、殿下がうたた寝をするなんて。」



夢…、ああ、そうだ懐かしい夢だ。



「‥…そうだな。」



「殿下、最近根を詰めすぎではないですか?」



「いや、あの情報が確かならば、我々の計画も急がねばなるまい。こんなところで立ち止まっている暇はない。それより、送っていた密偵はどうなった。」




「先ほど、無事あちらと合流したと連絡が参りました。」



「そうか、第3部隊に連絡しろ。”マッチの火を消し忘れるな”と。出番だ。」




「かしこまりました。」








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