11話 見極め
両家の顔合わせも終わり、私は王位争いの現状について調べた。
現在第二王子殿下の支持勢力は軍部が主軸となっている。
それはただ単に殿下が武に優れているから、というわけではない。
もともと我が国の軍はクルムバッハ家とボーデン家の辺境伯家、この2家がその強さを誇っていた。
国軍、つまり国が所持する軍は、かつて騎士団に入団できなかった者たちの寄せ集め、出来損ないの慣れ果てだと馬鹿にされていた集団であった。
騎士団は国ではなく王家直属の組織であり、その最高司令官は王または王太子である。
騎士団は厳しい選考試験を勝ち抜いた者たち、すなわち実力によって入団資格を勝ち取ったエリート集団で組織されており、国軍とは比べ物にならないぐらいの強さがあった。
この出来損ないと馬鹿にされ続けていた国軍を叩き上げ、いまでは騎士団ですら敵わない集団を作り上げた人こそ、第二王子、リヒモンド殿下である。
国軍は王家ではなく国に忠誠を誓い、国を守る集団としてその実力を発揮している。
しかし、現在の軍を作り上げ、そのカリスマ性をもって軍を率いているリヒモンド殿下に対してだけは、皆服従している。
国王が第二王子殿下に危機感を抱いているのも、これが原因の一つであった。
そして、それ故にうかつに第三王子を王太子に指名できない。
国軍が第三王子を国主として認めなければ、騎士団と国軍による代理戦争となりかねないからだ。
王太子殿下がご存命のうちは、それでもよかったのだけれどね。
第二王子殿下も王太子殿下を支持する姿勢を示していたし、なによりも、王太子殿下は文句のつけようがないほど国王としてふさわしいお方だったから…。
…でも、どうして第二王子殿下は国軍に入ったのかしら?
第二王子殿下が軍に入ったのは12歳のときだったはず。
それまでは、王太子殿下に何かない限りは、いづれ臣籍に下り騎士団に入団する予定だったと聞き及んでいる。
第二王子殿下ほどの実力があれば、騎士団に入団すれば騎士団長は確実だったはずなのに…‥。
わざわざ国軍を再構築した意図は何なのかしら・・・?
『第二王子殿下は王太子殿下を王座から引きずり下ろすために、国軍に入った。』
『実は王太子殿下は第二王子殿下による暗殺で亡くなった。』
貴族たちの間で囁かれている噂が頭をよぎった。
いいえ、所詮噂は噂よ。
何よりも証拠がないんだもの。
でも、第二王子殿下が情け容赦がないのもまた事実。
私たちは、これからそんな相手と渡り合わなければならないが…、
それよりも、まずは第三王子派について見極めていかないといけないわね。
第三王子派のアーレンベルク家と縁をつないだからと言って、我が家が完全に第三王子を支持するというわけではない。
クルムバッハ家がその剣を振るうのは、ひとえに国の防衛のため。
そして、王家によって国が亡ぼうとするならば、剣をもってそれを諫めるために他ならない。
私はこのまま第三王子を支持してよいのか、または切り捨てるのか、それを見極めなければならないのだ。
できれば、この歯車が良い方向へ運命を動かしてくれるよう月に願った。
投稿頻度を上げるといった傍から投稿が遅くなり申し訳ありません。
思った以上に本業が忙しく…‥。
無理のない範囲で投稿していきます。