9話 顔合わせ
随分と間が空いてしまいました。申し訳ありません。
新年度になり、少しバタバタしておりますが投稿頻度を上げられるように調整してまいります。
これからもお付き合いいただけたら幸いです。
扉を開けると、お父様と侯爵様そしてルドウィック様がすでに座っていた。
「アデリナ、ご挨拶なさい。こちらアーレンベルク侯爵家当主ライモンド殿と、ご子息のルドウィック殿だ。」
「これはこれは、噂にはお聞きしていましたが可愛らしいお嬢様ですね。息子にはもったいないぐらいだ。」
人当たりの良い笑顔を向けられたが、目には見極めるような鋭い光が宿っている。さすが、法務大臣を務めるだけあって、油断ならない。
「恐れ入ります。クルムバッハ家が次女、アデリナ・フォン・クルムバッハでございます。お目にかかれて光栄です。」
「アデリナ嬢、こちらこそお会いできて光栄です。アデリナ嬢のように美しい方を婚約者にできた私は、幸せ者ですね。」
そう言って、ルドヴィック様は私の指先に口付けを落とした。
なるほど、皆が月下の貴公子と騒ぐ理由がよくわかる。
美しいその金髪はまるで月の光のように落ち着いた輝きを放ち、その瞳は夜空を写し取ったように深い色彩で彩られている。彼が纏う優しげな雰囲気は、まるで夜のそよ風のようだ。
だが、彼にとってもこの婚約は不本意なものなのだろう。
侯爵様のような鋭さはないが、こちらの出方を伺っているのが分かる。
「まあ、お上手ですこと。こちらこそ、月下の貴公子と名高いルドウィック様と婚約を結ぶことができて、光栄ですわ。これからどうぞ、よろしくお願いいたします。」