え、じゃあ私、ここですごい運使っちゃったんですか?
「そういえば聞いてませんでしたけど、今日は何を狩るんです?」
「ヤホホホ!その質問は装備を付け替えるために街に出る前に聞かれるべき質問だったんだがねぇ……言ってなかったワタシも悪いけれども」
「でもうちのメンバーで毎回装備付け替えてるの、モミジくらいですよ?」
「ヤホホホ、カノンちゃん、ワタシも指輪とかは毎回付け替えてるよ?キングだってリボンの色で…」
「え、そうだったんですか?」
「…うん。気づいてなかったんだね」
──閑話休題
「今日は森の中にいるピヨちゃんを借りに行くのさ」
「あぁ、あのからあげ○ンみたいな「それ以上はいけない」
「なんにせよ、ピヨちゃんを狩るんですね!でもどうしてですか?前は……なんでしたっけ?」
「前は確かスケルトン狩りだったね。キングメタルスケルトンから落ちる闇夜の結晶がいい値段するからね〜」
「今回は違うのにするんですか?」
「いつまでも同じヤツだと飽きてしまうからね!ヤホホホ!…っと、ウワサをしていたらお出ましだ」
目前の獲物を見据え、息を潜める。
ピヨちゃんを今回選んだのは理由がある。そもそもタンクとヒーラーのパーティー構成では、“いくら亜種とはいえ”火力に限界がある。
一応浄化も使えるカノンなら対スケルトンはそんなに難しくなかった。ヒーラーのレベリングの定番スポットのひとつでもあるから、ちょうど手頃だったというのもある。
今回ここを選んだのは、カノンのレベルを鑑みて、もうワンランク上に行けるだろう、ということで“火力のいらない変わった狩場”を選択しただけだ。あと、ここは楽しいからというのもある。
「そういえば、前回のスケルトン狩りは作業ゲーと化してましたね…だから忘れてたんだ……」
「今回は退屈しないだろうさ。なんたって珍しく“攻撃力のいらない”敵なんだから」
「攻撃力の…いらない?」
…うん、本当は知ってて欲しいんだけどね。一応このゲームの一般常識の1つなんだけど。
──────────────────────
──ピヨちゃんは倒したり捕まえたりすることが出来ない、非殺傷モブだ。
いわゆる村人などと同じ友好モブに入る。
しかし極度に臆病で滅多に見つけることが出来ない、“幻の生き物”なのだ。
どの森にも生息しているが、目撃出来る確率は異常に低い。実際今回も、見つけられたらいいな、程度にしか思っていなかった。
「か、か、か…!」
カノンが息を飲んでいる。無理もない、この光景に耐えるのは常人では不可能だ。
「かわいいぃぃぃぃ!!」
──恐ろしく可愛いヒヨコ型の魔物の群れが、そこにいたのだ。
ゆっくりと目線を下げて近づいた私達は、現在ピヨちゃん達の群れの真ん中にいる。
「でも、コレがお金に結びつくんですか?そもそもコレ、狩りじゃないような…」
美少女が小さなヒヨコの魔物を撫でるという、絵にもなりそうな光景を繰り広げつつ、カノンは首を傾げる。
「ヤホホホ、そのまま撫で続けていなさい」
「?」
疑問に思いながらも、撫で続けるカノン。
すると気持ちよさそうにしていたピヨちゃんが、次第に…うつらうつらと舟を漕ぎ始める。
恐らくよほど心地良いのだろう──私の手の中にいる子は未だに(`・ω・´)シャキーンとしているが。
──数分後
そこには慈愛の眼差しを送る美しき少女と、その手で眠る愛らしい魔物の図があった。
この絵だけでもスクショすれば目標額に届くんじゃあるまいか……?いや、身内贔屓が過ぎるか。
もちろんもう私のフォルダ内にはこの天使的光景が保存されているが。仕事が早い事には定評がある。
「──あっ!何か出ました!」
「なんて書いてある?」
「精霊結晶…って…」
「ヤホホホ!いい引きだね、カノン!」
そう、ピヨちゃんを眠りにつかせると、報酬として精霊結晶等が貰えるのだ。──精霊から。
この子達が非殺傷モブなのも、精霊の加護があるから、らしい。そんな子達を見守る精霊から、報酬が貰えるわけだ。
ちなみにカノンが引いた精霊結晶は上から二番目に高レア。ライフエリクサーと同等の100万ゴルドで取り引きされている。一番上の“幸運”の玉手箱はそもそも市場に出てこない。
「こんなに美味しくて幸せな気持ちになれるなら、ずっとここにいたいですねぇ〜…」
「カノン、勘違いしているようだね。キミは運が良かったんだよ?」
「?」
「精霊結晶のドロップ率は0,01%。一万回に一回程度って言われている」
「!!!?」
ちなみに玉手箱は出た人がいなさすぎて測りようがないらしい
「え、じゃあ私、ここですごい運使っちゃったんですか?」
「一部では運営が確率操作してるとかいう説もあるし、日頃の行い次第、なんて話もあるけどね?実際に確立が公表されているわけじゃないからサ。ヤホホホ!」
「へ〜…ありがとうね、ピヨちゃん!」
そう言って手元のピヨちゃんをさらに撫でる。ええ子や…(感動)
「あ、それなら」
「ん?」
「ジャックさんなら、玉手箱が引けますね!だって日頃の行い完璧ですもん!」
「ヤホホホ!嬉しいことを言ってくれるねぇ。でも…」
──手元のピヨちゃんがようやく眠りについたことを確認しつつ。
「そう上手くはいかないみたいだ」
入手ログの“クズ魔石”という文字を見て、困ったようにため息を吐く、ジャックであった──
途中から迷走しだしてもう半分雑談回みたいになってしまった…