柳川くんと月原くん ~5~
柳川くんと月原くんの話です。
~柳川君~
合宿の最終日は花火で締めくくるのだが、
花火の時になって、やっと浅海さんと話す機会が出来た。
話した内容が今回の合宿についての話で終始したため、
僕との距離を縮めるアプローチを、ついつい僕の方から差し伸べた。
「そういえば、浅海さんって彼氏はいるの?」
「え!?い、いないよ!!」
慌てて、否定する浅海さん。
そんな否定しなくても大丈夫だよ。
僕のことが・・・好きなんだよね?
だから、変な誤解とかしてないよ。
「そうなんだ。可愛いのにね。」
そう告げると、
「わ、私って可愛いかな?」
「うん、ハッキリ言ってここに居る中だと断トツだし、
君の学校でも1番なんじゃないかな。」
「それは言い過ぎだよ~・・・
ねえ、やぱり一つ年上とかって気にするかな?」
唐突に話が切り替わったことに驚いたのだが、
彼女の質問には真摯に答えたい気持ちである。
ただ、少し言い間違えているのはわかったのだが・・・。
彼女が言いたかったのは一つ“年下”を気にするかってことだろう。
そうすると・・・
浅海さんの学校のハードルメンバーの2年生の顔を思い出していく。
あの子か・・・それともあの子かな・・・
僕に積極的に話しかけてきていた子達を思い出してみるのだが、
う~ん・・・浅海さんには勝てないな・・・
だけど、だからと言って、女の子の勇気のある告白を
無下に断るわけような男では僕はない。
だから、伝えて欲しい、
「一つぐらいの差なんて、男が気にするわけないじゃないか。」
自分の気持ちを抑えて後輩思いの彼女には真摯に答えてあげる。
ただ、それに付け加える言葉があった。
「本当に大切なのは自分の気持ちを隠さずに、相手に伝えることだよ。」
「・・・そうだよね。うん!そうだね!」
ぱあっと明るい笑顔を僕に向けてくれて、
すぐにそばから離れていってしまった。
だけど、彼女の蓋を取り除けることが出来たようで満足だ。
2年生に譲る必要はないんだよ、浅海さん。
その後、浅海さんからはもちろんのこと、
2年生の子からも告白はされなかった。
ここで失敗したことが分かった。
たぶん浅海さんは自分も思いを僕に伝えると言ってしまったのだろう。
それで後輩ともめてしまって、結局告白できずにいたのだ。
女の子の気持ちはやっぱり難しいな・・・
結局は中学生生活で彼女が僕に出来ることはなかった。
ママも不思議に思っていた。
高校は近隣高校を受けることにしており、
男子校はさすがに僕の魅力だと間違いが起こってしまう可能性が
あるからとママと選択肢にいれないことを決めて、
一番僕が余裕を持って入れる学校を選んだ。
すると先生も僕のために協力的になってくれて、
学校推薦を取ってくれたのである。
そして無事に合格した。
ママと一緒に喜んで、パパが僕が欲しいものをすべて買ってくれた。
それと高校生にもなったのでと香水をつけるように言われた。
だから、僕は僕に似合うバラの匂いの香水を買ってもらった。
う~ん、僕に良く似合っている。
「高校生にもなると間違いなく、モテてしまうだろうけど、
誠実に女の子には対応するんだぞ。」
「付き合う前には、ちゃんと私達に紹介するのよ。」
そんな忠告までしてくれたのだ。
~月原君~
合宿の最終日の夜には先生がいる中とはいえ、花火で締めくくる。
これは女子の中では、この花火の時に告白すれば
カップルになれると縁起のいいイベントなんだ。
だから・・・
浅海さんを追うのはやめてあげてくれ!!
決意を固めたようなのに、ずっと後ろを追いかけていたら
告白できないだろう!!!
わざわざ、ハードルまで選んで距離を詰めたんだぞ!!
いや、お前との距離を詰めるためにハードルを選んだわけじゃないって!!
・・・
・・・
お願いだから・・・
俺にクレームを入れるのはやめてくれ浅海さん・・・
そして・・・
こうなると分かっていましたよね?
だから僕は、柳川が食事を終えて寝ていたので
おこさないようにしていたのに、わざわざ起こしたのは先生ですよね?
いや、僕の傍に置いておかないと!とかいらないですから!
僕じゃ、彼の制御をすることはできてないんで!!
だから、今、こうして浅海さんからクレームを受けているんですよ?
そして、この際だからハッキリ言わせてください・・・
僕は柳川の付き人じゃない!!!
わざわざ柳川の補佐でグループに入れた意図は分かっていますけど、
柊の方がしっかり指導しているじゃないですか?
正直言っていいですか?
僕だって柊の話を聞きたいし、指導してもらいたい!
あいつは細かくチェックして、理論的に詰めていくじゃないですか!
だから、今回も初心者がいたのにある程度飛べるようになってるじゃないですか!!
僕だって、最後の3年生なんですよ?
勝ちたいんですって!!!
いや、僕にも推薦くれるって言われても・・・
・・・
仕方がないですね・・・
ただ、絶対ですからね?
約束しましたからね?
もう一度スマホに録音しますので言ってください。
え?高校の先生を紹介してくれる?
あ、あそこにいたんですね!!
スマホの件はもういいです。
紹介をよろしくお願いします・・・。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。