本村さん ~5~
陸上部マネージャーの本村先輩の最終話です!
その日は新入生歓迎会で、顧問は抜きで、陸上部みんなで夜食べに行っていた。
当然二次会にも参加して、大満足で二次会のカラオケを堪能した。
二次会も終わって私は、そろそろ解散になるだろうと思っていたのだが、
「じゃあ、三次会に行こうか!!」
・・・え!?
その声に思わず驚いてしまう。
いつもは二次会で終わって、解散となっていたのに、
今日に限ってはみんな三次会に行こうとするのであった!
さすがに私は、そろそろ帰らないと親も心配するから
断ろうと思ったのだが・・・
・・・ここで帰るとも言いづらい雰囲気になっており、
でどうしようかと思っていた・・・
「本村先輩、そろそろ帰らないと最終無くなってしまいますよ。」
急に柊君が私に声をかけてきたのであった。
「え?帰るの2人とも?」
「はい!僕はまだまだ健全な高校生何で!」
「なによ~!私達が健全じゃないみたいじゃない!!」
「あぁ~、バレました?僕の本心。」
そんなことをみんなと言いながら、柊君は、
「うぉ~!?マジで最終がなくなります!
じゃあ、皆さん!お疲れさまでした!!
本村先輩!ダッシュです!」
そう言って、私の手を取って走り出すのであった。
しばらく走ると柊君は手を離してくれて、
「ここまでくれば、あの人たちも諦めるでしょう!」
「え?」
肩で息をしている私とけろっとしている柊君。
さすがは陸上部員だけあって、少し走ったぐらいでは息も切らすことはないんだな・・・
「あ、ありがとう。だけど、どうして?」
バス停に向かって歩いている途中で、やっと息が整ったので柊君に尋ねることができた。
「だって、あれだけソワソワして、時間を観てたら、
帰りたいんだろうな~って思って。余計なことしました?」
「いや、帰りたかったの・・・。」
柊君はあんなに人がいる中で、私のことを見ていてくれたんだと思うと嬉しくなってしまう。
そのまま2人で歩いてバス停に向かうのだが、
夜の街で、しかも時間帯的には最終のバスが近いせいか、
バス停に向かう途中には人が溢れており、
少し歩くだけで柊君とはぐれてしまう状況になっていた。
はぐれるとすぐに柊君が私の傍に来て、見つけてくれた。
ただ、それでもすぐにはぐれてしまう状況であったためか、
「本村先輩、俺と手をつなぐのは嫌でしょうけど、服の裾を掴んでください。
これから、もっと多い人混みの中を通らなきゃいけないんで。」
そういって、私に裾を掴ませるのであった。
この時、私は「うん」とだけ返事をするのが精いっぱいであり、
自分の顔が熱くなるのを感じており、柊君とは顔を合わせずに
下尾を向いたまま柊君の裾を掴んで離さなかった。
その後やっとの思いでバス停について、停車していたバスに乗り込み、
運よく空いていた2人席に2人並んで座った。
いつもは同じバスに乗ったとしても
少し距離が離れているのに、今日は真横に柊君がいるのである。
ついに私はお礼が言える!っというか、お礼を言わなくちゃっと思って、
意を決して柊君に話しかけようとすると・・・
「本村先輩、本当に陸上部のマネージャーになったんですね。」
「・・・え?」
「あれ?覚えてないですか?
俺が2年の冬の駅伝で会ったことを?
・・・あの時は、本村先輩は中3でしたよね?」
「・・・。」
思わず込み上げてくる感情を抑えるために言葉が発せなかったのだが、
「・・・あれ?覚えてないですか?」
ううん!覚えてる!覚えてるよ!!っと心の中で叫ぶのだが、
今、喋ると思わず涙が出そうになってしまい、喋ることができないのだ!!
ああ・・・覚えていてくれたんだ・・・柊君・・・・
「・・・あれ?俺だけですか?・・・何か恥ずかしいな・・・。」
そう言って、苦笑してしまう柊君。
私は約柊君にいわないと!!
「・・・お、覚えてる・・・。」
「え!?そうですか!?良かった~、俺だけだったら恥ずかしいですからね~。」
私が覚えていたことに安堵する柊君。
私はてっきり柊君は忘れているものだと思っていた・・・
なのに、しっかり覚えていてくれたんだ・・・
嬉しくてまた感情が爆発しそうになってしまう・・・
「・・・で、どうですか?マネージャーをやってみて?」
「・・・楽しいよ。」
「そうですか~、良かったです!!
マネージャーって本当に大変じゃないですか!
だから、進めた手前、辛い思いをさせていたらどうしようって思ってたんです。」
その言葉に私は大きく反応してしまい。
「全然!進めてくれてよかったっと思ってるよ!!
ありがとう柊君!本当にありがとう!!」
私はついにお礼を言えるのだった。
そこからは堰を切ったように柊君とあの時のことから、
高校に入って驚いたことなんかを話していく。
その時間は本当に楽しい時間であり、あっという間に過ぎて行くのであった。
まだまだ話したいのだが、柊君の降りるバス停まであとわずかである。
「そろそろ・・・降りる場所だね。」
「え?ああ・・・今日は本村先輩を家までお送りしますよ。」
「え?」
「だって、さすがにこんな時間に女子を1人歩かせるわけにはいかないでしょう。」
「だ、だけど・・・。」
柊君は山の上に家があり、私は山の下にある。
たしかに柊君の家と私の家の距離は直線距離にすれば近いのだが、
その起伏を考えると結構なきょりになるのだ。
だから、遠慮しなくてはいけないのだけど・・・
「い、いいの?」
「ええ。」
私は柊君の申し出をうけるのであった。
すぐにバスは私の最寄りのバス停に着き、柊君と共に下車して
一緒に並んで歩く。
高校の部活のことも箱根駅伝のことも話す。
周りの友達には通じない話でも柊君には通じており、
「青学いいですよね!!今年もきっと青学が・・・。」
「そんなことないよ!東海大だって今年はやってくれるよ!!」
2人で熱く話ができるのであった。
まだまだ話したりなかったけど、すでに家は目の前まで来ていた。
「そう言えば、本村先輩の連絡先聞いてもいいですか?」
その言葉に私は二つ返事で連絡先を交換するのであった。
それからは、電話をしたり、メッセージを送って、
色んな意見を交換する仲になっており、
何でも2人の間で話せるようになっていた。
そして、私の中にあった一つの悩みを告白するまでに至っていた。
「本村先輩って、男性恐怖症なんですか?」
「そ、そうなんだ・・・。」
「・・・なら何で俺とは普通に話してるんですかね?」
「・・・そ、それは・・・。」
「・・・あ!?もしかして・・・。」
「え?」
「俺って・・・オネエだと思われてます?」
「いやいや、思ってないからね!!!」
私がずっと悩んでいた男性恐怖症について話をカミングアウトした時も
しっかりとそのことを受け止めてくれて、今まで以上に色んな話をしてくれた。
柊君に話て、私の気持ちを軽くしてくれるようになったのだ。
もうこの頃になると私は柊君を好きになっていたのだが、
その思いを柊君に伝えることはなかった。
ただ最後に・・・
高校生活の最後の思い出に卒業式の日に、私は勇気を振り絞って、
「写真・・・2人で撮らない?」
「俺でいいんですか!?」
二つ返事で私の申し出を受け入れてくれて、写真を撮り、
最後に柊君から制服のボタンを貰った。
今でも写真とボタンは部屋に飾ってある。
今は大学を卒業して、地元に戻ってきて一時期OLをやったのだが、
結局男性恐怖症のため仕事が長続きはしなかった。
その後は専門学校に入り、栄養士になった。
私は人の役に立つ仕事がしたい。
決して私が表に立つことはないかもしれないけど
サポート側の仕事を私はしたいとおもったからだ。
自分のやりたいことでも辛いことはある。
辛いことがあったたびに、卒業式に貰ったボタンと写真で励まされていた。
そして、柊君からもらった思い出を思い出しながら、
大変な日々だけど、何とか頑張っていられる。
本当に宝物になっている。
そして、これからの私にとっても宝物だろう。
私にとって本当の一生の宝だ!!
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




