本村さん ~2~
陸上部マネージャーの本村先輩の話です!
私と柊君との出会いは実は高校からではなくて、
中学の時に出会いがあった。
・・・私は覚えていたのだが、柊君は・・・
それは私が中学3年生の時、進路について迷っている時だった。
この時、私は今の高校よりも一つ上の高校を狙っていた。
だけど、実力ではギリギリであり、最終の3者面談で先生から、
「一つしたのレベルの高校を受けた方がよくないか?」
そう言われたのであった。
先生からしてみれば当然のことで、私の現在の実力ではギリギリの成績であり、
1つ下げれば受かる可能性が高いのだから、そう助言をしてくれるのは分かる。
その先生の言葉を聞いたうちのお母さんも先生の意見に同意して、
「一つ下げたら?そんなに根を詰めて勉強しなくても・・・。」
2人が私のことを思って言っていることは分かるのだけど、
その言葉に私は私のすべてを否定されたような気持になっていたのだ・・・
「どうして・・・私は何をやってもダメなのかな・・・。」
面談の後、家に帰って1人ふさぎ込んでいた。
運動神経が悪い私は、運動系の部活は無理であり、
中学では運動部に興味があったものの入ることはなかった。
オリンピックを見て感動したり、正月には箱根駅伝を見て感動して、
いつか私もと思うのだが、その一歩先を踏み出すことは出来なかった。
文化部でも感動は味わえるとは思って、見学・参加はしたものの
私が自分で言うのもなんだけど、のんびりとした性格なため
人とのテンポがズレてしまい、文化部でもやっていけなかった・・・
だけど、そんな時に柊君と出会って私の運命が変わるのであった!!
私の家の近所では冬の時期なると、陸上部の駅伝が行われるエリアがある。
私は駅伝は好きなので、その時も当然観に行った。
確かに根を詰めすぎている気がするし、
少しはリラックスした方がいいだろうし・・・
そんな言い訳を自分にしながら行ったのであった。
近所では有名なエリアのため沿道には多くの観客がいる。
私もその中に加わって、応援しようかと思ったのだが、
せっかくだったら、中継所のところで見ようと思ったのだ。
中継所はタスキを次の走者に渡すところであり、
そこではフラフラになりながらも、必死にタスキを渡す走者や
先輩後輩でタスキリレーがあり、必死で先輩に『お願いします!』と訴えるような後輩がいたり、
等々、本当に観ていてハラハラドキドキするし、グッとくる場面を観ることができる場所だ!
だから、私は迷わず中継所で観ることを選んだのである。
その日も、そんな光景が見られることを期待して
中継所にいっていたのだが、途中で雪が降りだしたのである。
最初はパラパラと降ってきたので、まあ大丈夫だろうと思っていると、
徐々に降ってくる量がドンドン増えて行くのであった。
私が気づいた時にはすでに5メートル先が見えないほどの吹雪となっていた!!
これってヤバい!?
そう感じた時にはすでに手遅れであり、
私は、家のすぐ近くなのに遭難しそうになっていたのである!!
そんな時だった、
「もしかして、応援の方ですか?」
「え?」
「いや、ちょっとスタートが遅延してるみたいですよ。」
「ええ!?」
「とりあえず、あっちに選手用テントがあるから行きませんか?」
「あ?だけど、私・・・。」
「大丈夫ですよ。」
そう言って、私を引っ張ってすぐ近くにあった
選手用テントに連れて行ってくれたのであった。
私が入っていいのか分からなくって、恐る恐る入るのだが、
入ってみると私と同じように沿道から応援しに来たであろう人が結構いたのである。
その光景を見て、私がテント内に入っても問題ないってことにホッとするのである。
「こっちですよ。」
そう言って、その男の子は私を入り口から奥へと進めてくれる。
「お!?柊!!女子をナンパしてきたのか!?」
そんな風にものすごい大声で言う男の子。
その声に反応するように、私達に一斉に視線が向けられてしまい、
私は緊張してしまった。
その視線はすぐに止むことはなく、ジッと私達を見ているのであった・・・。
「違うよ。外が吹雪になって、駅伝が遅延しているのを知らずに
そのまま立っていたから、こっちに連れてきただけだよ。」
その男の子が事情を説明すると、周りの空気がなるほどぉ~と弛緩していくのが分かる。
すぐに私に注がれていた視線がなくなったのだ!
そして、その私の境遇を知ってもらったためか、
「寒かったやろう?これ飲んであったまり。」
そう言って、温かいお茶を出してくれるおばちゃんが現れた。
進められるがまま、私はお茶を受け取り、
「あ、ありがとうございます。」
お礼を言うと、それがきっかけがなのか、周りにいたおばちゃんが、
ホッカイロをくれたりするのであった。
みんなが優しくしてくれるのに
思わず泣きそうになってしまっていたのである・・・。
「こっちに来て温まってください。」
そこでさっきの男の子が私をテント中にあるストーブの前に案内してくれる。
私は勧められるがままストーブの前に移動して、ストーブで温まる。
「ぼちぼち、柊準備していた方がいいんじゃないか?」
「うんあ?もうそんな時間?」
「いつ始まるかは分からないけどな。準備をしていた方がいいだろう。」
「そうだな。」
そう言って、おもむろにその男の子が来ていたジャージを抜き出したのである。
思わず目を見開いたしまったのだが、すぐにユニフォームを着ているのに気づき、
慌てて何事もなかったように振舞う。
「どうする?膝だけ?それとも足首も?」
「ああ、どっちもしよう。ちょっと冷えてきて、痛みが出てきているから。」
そう言って、ストーブの前に引いているマットの上に座り込んでしまう。
そして、横にいた男の子がおもむろにテーピングを取り出して、
何とテーピングを始めたのである。
ここで私は、テーピングを施そうとする足を
見たことでて気づいたのだが、
「ものすごく傷が・・・。」
「え?ああ、お見苦しいところをお見せして。」
苦笑している答える男子。
その傷が気になってしまい、思わず聞いてしまう。
「その傷はどうして?」
「いや~、ハードルの練習をしていると結構よくあることなんですよ。
当たると結構傷を負っちゃうんですよね。」
「そ、そうなんだ・・・。」
よく見ると足中にその傷があるし、中には縫った跡も存在していた。
「・・・大変だね。」
「まあ、ぼちぼちと大変ですね。
だけど、傷を負うことを怖がってたら成長しないですからね。」
「だけど、柊失敗しすぎだろう~。こんなに傷だらけになってよ。」
ぺしぺしと叩きながら、柊と呼ばれた男の子の足にテーピングを施していく男の子。
「・・・失敗?」
「そりゃ~、最初から物事なんてうまくいきませんからね。」
「・・・それなのにやってるの?」
「はい、別に失敗したからってやらない理由にならないでしょう?
何が失敗だったのかを考えて、次にそれを活かしていけばいいだけでしょう。」
「・・・次に活かす・・・。」
「そうですよ。
失敗があるってことは、その分だけ成長する伸びしろがあるってことですからね。」
「だけど・・・柊、そこそこにしてくれよ・・・。
何で、専門の練習が終わった頃には血まみれになってるんだよ?
さすがに地面に血が垂れていた跡があった時には引いてしまったからな。」
「あははは!あったね!そんな時も!!」
大笑いする柊君。
たぶん彼にとってはなんてないことかもしれないけど、
私にとっては金言である。
いきなり人生観が変わるような言葉であった。
失敗するのは当たり前なんだな・・・・
その言葉だけで、自分が失敗してしまうと恐れていたことが
自分の成長を妨げることになているのだ・・・
ああ・・・
失敗していいんだ・・・
私が無理だと勝手に諦めていたことは、
失敗だったんだな・・・
だけど、心配と分かったのなら次につなげればいいんだ!
高校に入ったら部活をしよう!
運動部!
運動音痴だった私だけど、やるんだ!!
あぁ~心が晴れて行くのが分かる。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




