竹中さん ~16~
竹中さんの最終話です!
次の日は柊に見送られながら私は新幹線口まで来た。
父は今日はまだ仕事、母はすでに出発していた。
「もうここで、お土産買うこともなくなるんだねー。」
いつものお土産屋さんで、いつものように大量に買っている。
このお土産屋さん、私が度々大量に買うせいか、
ここから宅配分で送れるようになっていた。
「竹中様、いつもご自宅でよろしいのでしょうか?」
「お願いします。」
しかも記入も向こうがやってくれると言うサービス付きだ。
「さてと、これでお土産は終了。あとは・・・2時間ほどあるし、ご飯を食べに行く?」
「いいよ。何か食べたいものはある?」
柊にはよく連れてきてもらっていて、大盛りの食堂や地元の豚骨ラーメン屋さん・・・
そう言えばラーメン屋さんには思い出がある。
私が連れていってもらったラーメン屋さんの1つがメニューが、
“ラーメン”
“ご飯”
以上!!!
メニューはこの2つしか存在しないのだ!!
・・・せめて大盛もメニューに加えてあげて・・・
まあ、それも驚きなのだが、それ以上に驚いたことは・・・
「・・・何?この白濁したスープは?」
当時はまだこちらに来て日が浅かったのもあるが、
普通に中華屋さんやラーメン店に行ったら、大体醤油ラーメンが出てきていた。
それがこっちでは白濁してるんですけど・・・
「何ってラーメンだけど?」
「いやいや!ラーメンって言ったら大体透き通った茶色とかだからね!
他には透き通った状態とかだから!!」
「?何言ってんの?どこに行ってもラーメン頼んだら・・・
白濁の豚骨ラーメンが出てくるにきまってんじゃん!」
・・・ああ、これが噂の豚骨ラーメンか・・・
そしてすべてを納得する。
さすがはこちらの県だ!
元祖なのだから、当然ラーメンも豚骨ラーメンになるのだろう!
そして、その世界しかしらない柊は当然、ラーメン=豚骨ラーメンという図式なんだ。
だったらしっかりと教えてあげないと・・・
「大阪でラーメン頼んだら・・・
中華そばがでてくるからな!!」
「・・・はぁ?え?豚骨ラーメンじゃないの?
っていうか、
中華そばってなに?」
・・・おおっと、こいつはすべてのラーメンは豚骨としか理解していないようだった・・・
ちょっと疑問に思うことがあって柊に尋ねる。
「柊は家でラーメンって食べないの?」
「食べるよ。」
「カップヌードルとか食べないの?」
「ああ、うちは・・・
“うまかっちゃん”だけだから。」
ああ、豚骨ラーメンのインスタントラーメンか!!!
それなら仕方がない。
ラーメン=豚骨ラーメンも納得だ。
「これから、柊が他の県に行った時にラーメンを食べてみたら、
きっと世界が広がるから食べてみなよ。」
「・・・そんなに???」
「まあ、騙されたと思ってね。」
この時は、九州の人はこんな風に育っているんだな~と驚かされたな~・・・。
「おーい!竹中!」
「・・・あ!?ごめん、ちょっと昔を思い出してた。」
「まあ、いいけど、それでご飯だけど食べたいものはないんだな?」
「そうね・・・。大体ここの数週間で食べたと思うし・・・。」
「なら、サンドイッチにでもしようか。」
「?何で?」
「だって・・・
俺と竹中が初めて一緒に行ったところだから。」
・・・ああ・・・こいつは・・・
絶対に天然で言っているんだろうけど・・・さぁ・・・
体温が熱くなると共に涙腺が思わず緩んでしまいそうになった。
ゆっくりと歩きだした柊についていく。
今、喋りだしたら泣きそうで怖い・・・。
数分歩いたところにあるサンドイッチ屋さんに行き、
いつものように注文する。
柊はハンバーグを、私はエビとアボカドを・・・
最初に来た時と全く一緒の注文で、そして・・・
「ここにしようか。」
そう言って勧められたのは本当に一番最初にこの店に来て、座った席だった。
「・・・一番最初の席・・・。」
私がボソリと言った言葉に、
「ねえ、偶然にも空いてるとはね.。」
柊の言う通りで他の席は埋まっていて、たまたまここの席だけが空いていたのだ。
「・・・何か色んな事を思い出すね。」
「そうだね・・・。」
本当に色んなことを思い出していた。
きっと同じようなことは2度と味わうことはないだろうな・・・
「わざわざ新幹線のホームまで見送らなくてもいいのに。」
思わず苦笑してしまうが、
まあ、そこは柊の優しさなんだろうな・・・
「今までお世話になったね・・・」
「こちらこそお世話になりました。」
「しっかし、これだけ一緒にいたのに関西弁には結局ならなかったね?」
「そう?何かイントネーションがおかしくなった気がするんだけど。」
「それは気のせいよ!こっちの方言のままだから!」
「さいですか。」
「私は柊に出会えてよかったと思ってるよ。」
「俺も竹中に出会えてよかったよ。」
「・・・どこら辺が?」
「・・・結構掘ってくるな・・・。」
「当然!最後だし!」
「まあね・・・。色んな迷惑をかけても結局助けてくれるくらいには、優しかったな~。」
「・・・へー・・・。」
それは柊だから、私は助けたんだよ・・・。
「友達のためにわざわざセッティングしてくっつけようとしたじゃん。
失敗はしたけど・・・やっぱり竹中は面倒みがいいよね。」
「・・・あったね・・・。」
あれはどっちもが柊との友達だったからって言うのがきっかけだった・・・。
「そう言えば、俺のために女子に釘を刺してくれることもたびたびあったみたいだね。」
「・・・気づいてたの?」
「ああ・・・。ありがとう、わざわざ嫌われ役をやってくれてさ。」
「・・・別に・・・。」
だめだ・・・
泣いたら駄目なのに・・・
「・・・はい。」
そういって、また柊は優しくしてくれる。
差し出されたハンカチを受け取って涙をぬぐう。
「柊はさ・・・。」
「うん?」
「私があなたのことを好きなことに気づいてた?」
「・・・え?」
「やっぱり・・・その唐変木なところはしっかり直した方がいいわよ。」
ああ、今、私絶対に変な顔をしている。
涙で化粧がはがれているのに笑顔で柊を見ているのだから。
「まあ、谷口ちゃんをしっかり捕まえとけば問題ないだろうけどね!!」
「それは・・・頑張ります。」
「うん!それじゃあ、大阪にもし来る時には連絡してよ。」
「分かった。」
「・・・何か来なさそうだね・・・。」
「そんなことはないよ。もしかしたら大学でそっちに行くかもしれないしさ。」
「まあ、期待せずに待っておくよ。」
そうして、ホームに入ってきた新幹線に視線を向けると、
それにつられて柊も新幹線に視線を向けた。
その瞬間・・・
「へ、へ、へ。そんなに油断してると襲われてもしらないよ。」
「・・・気をつけるよ。」
「ホント、油断しないようにね。」
2人で笑いながら見つめあうと、
「じゃあ、これでホントにサヨナラだから。」
「うん、じゃあね。」
私は新幹線に乗り込んで、席に座り柊を見ていると柊も私に気づいたようで
こっちに向かって手を振ってきた。
静かにゆっくりと進む新幹線の中から私はずっと柊に向かって手を振り続けたのであった。
さようなら・・・
私の初恋の人・・・
「感動的な別れ方をしたのにね・・・。」
「そう言われてもね・・・。」
私の言葉に苦笑している柊が目の前にいた。
3年後、何と柊は関西にある阪大学に合格していた。
まあ、私は都大学に合格していたので、大学は別なのだが、
私の家がある場所の近くに、柊が通う大学があるのだ。
「まあ、最低でも4年間はこっちにいるんで、宜しくね。」
「私に狩られてもしかたがないからね。」
そういって私の微笑みに顔を引きつらせる柊。
もう私は自分の気持ちを隠す必要もないのだから、
例えどんな壁が立ちはだかろうと絶対に手に入れてみせるから!!!
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




